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神様は幕を卸した

流血シーンが多々あります。ちょっと、と言う人は回れ右してください

どシリアスですが頑張っていきたいと思いますっ!

粉雪を少々、

星屑は人匙、

空の青はひとつまみ、

お月様の光は袋いっぱい

ひとつにまぜて、グニグニとこねて

まあるく、まあるく、形作る。


そして中に“隠し味”を。


そして完成したのが、

――――世界を壊すイキモノでした。



 * * *



 血の匂いがする。

 あぁ、なんて___


最初に見た景色は自分に群がる、人を喰おうとする“いきもの”だった。

その次に見たのは血の海だった。

赤と言うには黒く、黒と言うには黄土色に近いそれが

服に髪に手に、こびりついていた。



 * * *



ぐしゃり、と音を立てて崩れるそれは見るも無惨なカタチで慣れた今でも少しだけ躊躇う。けれど__


「…12時17分現在、釧路緋色の名において貴方がたヴィルを粛清します。」


カツン、と手に持つ刀を地に付けた瞬間、襲いかかってくるソレを刀でなぎ払う。一振り、また一振りするたびに浴びる返り血。血と呼ぶには似合わないその色に蘇ってくる残像を頭の隅に追いやりながら振り抜く。


最後のソレが倒れた時、遠くから名前を呼ばれてあぁ終わったと実感する。


「緋色っ!こっちも終わった。処理しろ」

「うん」


支給されている、否持たされている爆薬に火をつけ転がっているソレ等に投げて走り出す。



「徹、戻ろうっ」

「あぁ、急ぐぞ」


荒れ果てた街をふたり、全速力で駆け抜ける。後ろで爆発の音がする。これが当たり前の日常。変わってしまった世界。捨て去られた世界。

もう、あの日から元に戻ることが出来ない世界__


暫く走ってシェルターの入り口に素早く入って外に匂いを消す液体をまく。そうすることでソレから居場所を隠している。扉に指紋と声紋でロックを解除する。横で徹がめんどくさそうな顔をしながらしている。


「しょうがないよ、守るためだもん。」

「それはわかってるけどな。てか隊長から無線はいってたぞ。お前無線切るなよ。それこそ、お前を守るためだろ」

「あー、それいい加減報告しないとね。」


苦笑いで返すと、呆れたため息をつきながらくしゃりと私の頭を撫でる。


「しゃーねーな。電波通信の障害によりって言っておいてやるよ。」

「……ごめん。」


謝ると軽く頭をはたかれて立ち止まる。数歩先に歩いた彼が振り返って視線が合う。


「何してんだよ。行くぞ」

「うんっ」


徹の元まで小走りで駆けよって並んで歩く。頭一個分高い位置にある彼の顔をちらりと見る。自分よりも5つ歳の離れたつよいひと。


「こけるぞ」

「へ?………っわ!」


シェルターの冷たく長い廊下にどてんと間抜けな音が響いた。




ヴィル、と呼んでいるそれが初めて世界に出現したのは月のかけらが降る光のない夜だった。ひっそりとそれはひとびとの前に姿を現した。第一のヴィルは女性だった。彼女は一週間行方不明で恋人が必死に探していたのだ。そして彼女は彼の前に姿を現した。心配する彼に彼女は――


“お、…いし…そ、う”


彼の首筋を噛み千切ったのだ。そして月明かりも星の光もない夜彼女は最愛を骨すら残さず腹の中におさめた。口にはべっとりと彼の血が付いていて細すぎる彼女の体には不釣り合いな腹の膨らみ。

その場面にたまたま通りかかったひとびとは彼女とその周りの血溜まりを見てパタリと倒れた。倒れた人たちに駆け寄ったひとが彼等に触れた次の瞬間に起き上がりそのひとを喰った――

その場所に彼女はいなかった。

そうして、ヴィルが誕生した。

何で感染したのかもわからない。ただひとつわかったのは感染したらもう元には戻らない。

はじまりとなった彼女はイヴと名付けられた。今でも行方がわかっていない。死んだのかそうでないのか。

ただ、わかることは人喰ヴィルが蔓延る地上で人類は生きていけない。

ある人は言った“神様は世界の幕を卸そうとしている”と。



変わってしまった世界。どうしようもないこの世界で水に溺れた幼子が足掻くように私たちは生きている。


__世界の終わりに望むのはただひとり。




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