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悪意吸引機

作者: 湯気

男は、上司の嫌がらせにイライラしていた。

「出来が悪いからって何であんなことを言われなきゃいけないんだ……」

会社帰りに小言を言いながら歩く。そして、自分の中に悪意が芽生えていることに気付いた。

まずいと思い、男は踵を返しある所に向かうことにした。

しばらく歩き男はある建物に入る。そして、入ってすぐの位置にあったカプセル型の機械の中に入った。


この機械は周りからは『悪意吸引機』と呼ばれていた。それは、その名の通りストレスにより生まれる悪意を吸ってくれるのだ。

こうすることで、悪意により生まれる事件や事故を防ぐことができる。もし、悪意を吸引せず基準値よりも多い悪意を持っていた場合は腕につけた『悪意計』が反応し、ブザーが鳴り続けることとなる。


吸引器が悪意を吸い終わった合図を告げ、カプセルのドアが開く。男は、スッキリとした気分で外に出た。

「よし! 明日からも頑張るか!」

スキップをしながら男は帰路に就いたのだった。


数日後、男は再び『悪意吸引器』を使用するため建物の前に来ていた。

男の腕に取り付けられた『悪意計』は基準値の限界に達しそうであった。

イライラとしながらも男はカプセルのドアを開け中に入る。機械が作動する音が聞こえ段々と気分が良くなっていくのを感じた。

しかし、30秒ほどたった時、何かが小さく破裂する様な音を男は耳にした。やがて、機械は止まってしまいカプセルの中は闇に包まれる。

「な、何が起きたんだ?」

狼狽えながらも男はドアを開こうとする。しかし、ドアは少しも動くことはなかった。機械が止まったためロックが掛ったままなのだ。

「おーい! 誰か開けてくれー!」

男は叫んだが何も反応はない。叫ぶと酸素がなくなることに気付き叫ぶことを止めた。

どうすることもできず途方に暮れていた男の耳に誰かの声が届いた。男は、外から従業員が叫んでいるのだと思ったがそれがカプセル内から聞こえていることに気付く。そして、その声は段々と大きくなっていった。それは、男の上司の嫌味であった。

男が今まで言われてきた嫌味が男のカプセル内に響いているのだ。

さらに、目の前の壁に上司の顔が映し出される。男は、今までの事を思いだし怒りが募り始めた。

一気に悪意が溜まっていき男の腕についていた『悪意計』はブザー音を鳴らす。その音にも男は怒りをおぼえた。

男は、大半が怒りで満たされた頭であることを考える。それは何故こんな事が起きたかであった。

男はある仮説を立てる。

悪意は全て機械の中に溜まっていた。悪意は全て人間の感情である。

もしかすると『悪意吸引器』は人間の感情を吸い取ることで感情を手に入れたのかもしれない。

男は、それを確かめることもできず酸欠により意識を失ったのだった。

お読みいただきありがとうございました。


悪意という感情を吸って機械も感情を持つというのは少し無理があった気もします。


せめて、ある程度知能を持ったロボットにしておいたらよかったです。

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