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Soul World  作者: Hamlet
序章
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第9話

「それ!」

 レイピア使いの青年が掛け声を発するとともに、彼の使ったレイピア専用スキル≪リニアード・スイフト≫が、彼の目の前にいた数匹のワームをすべて蹴散らす。

 彼の名はセイヤ。さっき出会ったばかりの細剣使いだ。ワーム数体に襲われていた俺を、救ってくれた恩人である。

 そして見てわかる通りとても強い人だ。レイピアが活水のように閃き、フィールドを颯爽と駆けて敵を討っていく姿はかっこよすぎる。


 それ以外の言葉が見つからない。まさにカッコイイとはこのことだ。


「セイヤさん強いなぁ。俺も今週中までにこのフィールドで、敵を薙ぎ倒しながら疾走できるレベルまで上げたいなぁ~」


「そんなことないって。レベル補正かかってるだけだから強敵相手だとやられちゃうし。あと僕はセイヤでいいよ」

目の前にお馴染みのワームがポップした。体色は茶色。


「とりゃあああ!」

 ワームに向かって≪ベーシックスラッシュ≫を使う。当然ワームのライフは空になって氷が砕けるように体がバラバラになり、塵となって空気中に昇華していく。考えればワームも楽に倒せるようになってきた。自身の成長を実感する。


――が、聞きなれた消滅音とは別の音がした。それは真横辺りから発せられた。果てしない嫌な予感が……俺が直観で感じ取る前に発生していた。



 今さっきまで手に握っていたものの感触が消えた。



「ええぇぇぇえぇぇ…………!!」

 ナイフを始めると決めたときにレイカから貰った≪ショートナイフ≫が、パリーンと音を立てて俺の手から消滅していた。とても静かに、安楽死するかのように……。武器が消滅するなんて思いもよらない展開だった。耐久が存在していたことをすっかり忘れていた。



「うああああ……な……ナイフがぁ……」

 俺は自分でも情けないと思う声を出して地面に膝と掌をついた。無理もない。武器という武器があのちゃっちいプロテクターだけになってしまったのだから。それと別の種類の武器。ナイフじゃないと装備する気になれない。


「修理してなかったのか。そうだ、これあげるよ」


「へ?」

 彼はショートナイフよりやや大振りのナイフを俺に渡してきた。やや黒みがかかった刀身だ。鉄をこすりつけたような色に近い。


「え? これ俺にくれるの!?」


「別に使わないし、売るのもなんかかわいそうだからあげるよ」


「あんがと!」

 武器名≪ラバーナイフ≫、スキルレベル要求値8、耐久値120、その他色々…………。俺はさっそく装備してみる。装着感はばっちりで、ショートナイフと同じぐらいの重さでありながら威力は高そうだ。

「それっ!」

 ショートナイフと変わらぬ素早さでナイフを振り回し、次々にワームを塵に変えていく。これくらいだったら今後も変わらぬ狩りが出来そうだ。よかったよかった。

「使いやすい武器だなこれ!」

 改めて感謝だ。こんなに親切だとは。


 お前イケメンかよ~!

 

「よかった。気に入ってくれて。」

 しばらく歩いていると、柱のようなオブジェクトが数本建つ場所が見えてきた。あそこは現実ではホテルがある場所だが、それとはかけ離れていて廃墟のような雰囲気だ。まさかこっちの世界では宿屋かなんかだったけど、何らかの理由で潰れてしまったのか?

「ん……? 柱がいっぱいある場所はなんだ?」


「あぁ、ダンジョンだよ。名前はたしか……。ベルアノアダンジョンだったはず」


「ちょうどワーム狩りにも飽きてきたし、ユウスケ。あのダンジョン挑戦しないか?」


「え?あ……、ダンジョンとか初めてだが?」


「大丈夫だよ。レベル10相当のダンジョンだしユウスケの腕前なら楽に突破できるよ」


「ならやってみましょうかね~」

 ということで、俺はベルアノアダンジョンという名のダンジョンへ、初挑戦することになった。説明書に書いてあったことによると、ダンジョンに出るMobはその周辺のフィールドより強く、迷宮の場合は桁違いの強さのMobが出現することもあるらしい――

 ありがちな話だ。

 でもなんでダンジョンと迷宮に強さの差があるのだろう? 両方同じようなモノなのに。


「おーい。準備OKかい?」


「ぁ……。おうよ!」

 セイヤが四角柱の簡素な祭壇を触ると、俺に訪ねてきた。

「難易度は一番簡単なのでいいか?」


「あぁ、それでお願い」

 そう言うと、再び祭壇に手を触れ、その瞬間祭壇から黄緑色の光が湧き出た。その瞬間、辺りはだんだんと暗くなり、入り口の扉はゆっくりと塞がった。セイヤが下の階へ続く扉を押すと、妙な音を立てながら扉は開き、セイヤはその先へと進む。俺も離れないように付いていく。


 どこまでも暗い階段が続いている、ところどころに松明が掲げてあるが、その間隔が不規則なため暗くなる場所がある。いかにもダンジョンという雰囲気の空間だ。これがこの世界か。



(だんだんRPGの雰囲気がしてきたぞぉ!!)

 俺はそんなことにうきうきしながら、セイヤの後に続いてどこまで続くか分からない階段を降りていく――





裏設定

レイピア専用スキル『リニアード・スイフト』

 『シューティングスター・ぺネトレイト』の下位互換といった感じのスキル。あちらは精神的に疲れやすいスキルだが、こちらは近距離からの攻撃であるものの、突進攻撃を容易に行えるスキルである。さらにモンスターを巻き込む範囲も広い。

 ベテランにとっては単純なスキルなのでそう連打することはないが、初心者にとってはこれがかなり重要なキースキルになってくる。



武器『ラバーナイフ』分類:ナイフ

 ラバーナイフの『ラバー』はゴムのラバー。やや黒い刀身が特徴。



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