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Soul World  作者: Hamlet
序章
7/58

第7話

 聞きなれた音が俺の耳に飛び込んでくる。

 言わずもがなレベルアップの音だ。頭上に大きく『Level Up!!』と出るのはもう慣れてきた。それと同時に湧き出るオレンジカラーのエフェクト。花火っぽい物ではなく、ほんわ~と空気中に広がる気体のようなものだ。

 こればかりはどう表現したらよいかわからない。気体に着色したとでも言えば良いのか?


「ようやくレベル10になったわね……約二日かぁ」

 意外にも時間が節約できた。

「レベル上げって現実のゲームと違ってしんどいなぁ……。あれはスパスパいくのに」


「あれとこれとは全然違うわよ? あんなのゲームって言えないわ!」


「へーぇやったことあるんだなレイカも」


「中学生のときちょっとね~」

 そんな会話をしているうちに、彼女の家についた。現実という名目に置いては俺の家であるのだが、フィールドで何時間も狩り続けていたせいか、とてもなつかしく見える。旅行帰りでありがちな感覚だ。


「じゃあ夕食作ってくるね」

 そういえば朝に例のブルーベリージャムトーストを食べたきりだったなぁ

。っと、いけないことを思い出してしまった。


 あれはひどかったなぁ………。どうしたらあんな不味い料理が出来上がるか、直接本人に聞いてみたい。聞いたら首が吹っ飛びそうだけど。

 30分ほどして、キッチンからこれはこれはおいしい匂いが漂ってきた。

 現実でも嗅いだことのあるスパイシーなこの芳香…………これはっ!




「カレーっ!」

 その感動のあまり口に出してしまった。レイカはその言葉に反応したようで、

「あーらよくわかったわねぇ、私もこれだけは得意なのよ。」

 さらに数十分煮込んで、俺の大好物であるカレーは出来上がった。

 スパイシーな香りを常時放つブラウンルーが、美しい装飾が施された皿に注がれてゆく……。ルーを注ぎ終わったところで、レイカはトースターらしき物が置いてある場所へ行き、朝食べた食パンを2枚取り出した。

 レイカは料理をテーブルの上にすべて並べると俺を呼んだ。


「できたわよー」

 こうなるとレイカが実母みたいに見えてきてしまう。彼女の髪型はどう見てもポニーテールで、髪色はクリムゾン。年齢も20代くらいの大学生みたいでとうてい母に見えないが、どことなく家庭的な雰囲気がする。


「うぉっ! じゃあいただきます!」

 スプーンでルーを思いっきりすくい、パクっと口に入れた。その味は現実でのそれと同じ味わいだ。やや辛みは強いものの、カレー風味が口いっぱいに広がってとてもおいしい!


「うん。これめっちゃうまいぜ! 毎日食えるかも!」


「本当!? スキルの修練値も多いし毎日作ろうかな?」


「ぜひぜひ!」

 まぁ根本的な理由はあの砂糖だらけのブルーベリージャムを二度と食べたくないということだが。それはさておき。

「ところでさ、レイカさんは何歳なの?」


「へ、私? 18歳だけど?」


「むぅ……てっきり20代かと……」


「失礼ね。まだ女子高生よ!」


「え……だったらなんで4時にここにいたの?」


「あぁ、もう推薦で大学決まってるからね。ところであんたは何歳なの?」


「へー……俺は……15歳だ。フツーの中学生」


「まー厨房な顔してるからそんな気したけどねー」

 こんな会話を続けているうちに、皿の中のカレーは瞬く間に空っぽになった。俺は手を合わせてご馳走様と呟いて、こたつ部屋へと向かった。食べたあとに寝るとよく牛になるとか太るとか言われるが、ここは異世界であり、食べたものは体にほとんど影響を与えないため、食べ物はだいたい娯楽に分類される。

 満腹感も空腹感もちゃんとあり、食べないと餓死してしまうということはないが、精神的に死にそうになるかもしれない。



 俺はいつものこたつに入って、ぬくぬくとその温もりに埋もれながら眠りに落ちた。

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