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Soul World  作者: Hamlet
第2章―決闘の世界―
56/58

あまく見ないで

Aブロックの予選はすべて終わり、後5分後にBブロックが始まるというときになった。


にしてもAブロックの試合は唐突的なものだった。なんだよ突然ワープさせられるって。3年間テニスをやってきた俺だが、試合会場に到着して即試合なんて一度も無かった。神とは気まぐれなものである。


もちろん会場に遅れていれば別だが・・・・・、その際は顧問の先生が出場を許可しないだろう。普通に考えて。


などと雑念を考えていると、落ち込んでいる一人の女の子が目に入った。

長い黒髪は前髪だけ平行線のように整ったカットだ。パッツンという名の髪型のその少女の名は『アズサ』。先ほどの大会で惜しくも敗退してしまった奴だ。

勝気な性格な彼女だったが、さすがにプレイヤースキルで他の出場者に追いつくのは無理だったようで・・・・・。性格では何もできなかったみたいだ。


ちなみにヒデアキも予選落ちだ。


性格も人の魂霊力や魂霊スキルを決める要素の一つかもしれないが、それはそれで大切なのは経験だと思っている。たとえばスズシロさんなら絶対に揺るがない攻撃と防御のアンサンブル、ギルさんはよくわからないけど槍という道を極めた暁、ゲツガだったらどんな攻撃でも完璧に防ぐ高い対応性を手に入れたから――

まぁ、そういうのも関係しているっていうワケらしいんだよな。






時間が迫ってきている・・・・・。

久々に緊張してきた。授業中先生によくあてられてさんざん意見を発している私は、並み大抵のことで緊張することはない。むしろ緊張する方が珍しい。学校の皆だったらそう思うだろう。委員長だってこなしてきたし・・・人前で発表すること自体は全く平気だ。


だけど・・・この感覚、そういう物とは違うまた別の感覚が私の体を包み込むように・・・ゆっくりと襲い掛かってくる・・・・・。感じたことのない・・・。


時間がないという事に対しての緊張?いや全然違うわ。そんなことで緊張する人なんて聞いたことない。時間が迫ることに対して・・・何故か・・・・・。


「どうしたユイ、体がカッチカチだぞ?」

はっと背筋を伸ばす。真横から声をかけてきた良く知る少年はユウスケだ。以前と変わらないサイド中心のボサボサ頭に、灰色を基調としたコートのような服装。背中には大小2つの剣が納められているだろう。


「んー・・・・・なんか緊張しちゃって・・・・・」


「緊張か?あぁ・・・こういう時って緊張するよな」


「うーん・・・でもどうしたらいいか・・・・・」


「簡単なこった!自分に自信を持て!」

自分に自信を持つ・・・・・。そんな簡単なことで良いのだろうか?心が強張るこの状況下、そんなおまじないが通用するのだろうか?

「自身を・・・・・持つの?」


「あぁ、そうだ!そうすれば心にゆとりができてうまく戦える!」


「う、うん!わかった!ありがとう!じゃあ私、もう時間来ちゃったから行ってくるね!」


「おうよ!がんばれ!こっから見てるぜユイッ!幸運を祈る!」

それとほぼ同時にゴウタも声を上げた。どうやら彼も次のBブロックに出場するらしい。

「がんばですー!」「勝ち取ってくるのよ!」


「俺の分も頑張ってくれ!」「私の分もね」

数々の激励を受けた私とゴウタは、白いシフトサークルが頭上に出現した。やがてユウスケやレイカの姿も見えなくなり、視界が完全な純白に包まれた。まるで雪国に舞い降りたような風景――見取れながらも視界は徐々に回復し、目の前には・・・・・これまた美しい風景が飛び込んできた。



雲海が沈み行く太陽に照らされ、日没の空気を漂わせる空間――床はガラスのように透き通った石、たぶんクリスタルか何かでできているのだろう。等間隔に並んでいる同じく透明の棒。

その先には空を自由気ままに飛ぶ鳥、何の鳥かはわからないが今巣に帰ろうと翼を羽ばたかせているのだろう。

こんな光景初めて見た。感動のあまり涙が出そうになるのをこらえながら、今の現状を頭に叩き込む。


頭上にあるのはおそらくカウントダウン表示。私が見た途端それは0になった。

って・・・・・開始の合図じゃないの!?

と思った時には皆が動き出していた。己の選んだ得物の類を握り、それを近くの好敵手とぶつけ合い、そして語り合う。それがソウルワールドバトルトーナメントだ!と情報メールに記されていた。無論こんな暑苦しい戦いをしに来たわけではない。

簡潔に・・・そうあっさりと勝負を決める。でもそれができるかどうか心配・・・・・。



「おらおら!どけ!」


「なんだ!そいつは俺の獲物だ」


「とっとと失せやがれ!」

戦場は激しさを増していく。私もこうしちゃいられない。何か攻撃しないと、


とりあえず近くにいた男に魔法をぶつけてみた。しかし全然効いていない。筋肉が大木のようにみっちりとした男は、私がいないかのように振る舞いながら周りの参加者を屠っている。

「ぎゃああ!!」

ここぞとばかりのレア物の武器を握っていたであろうサボテン頭の蒼い髪色の男が、例の男に倒されて間もなく砕け散った。

その次に犠牲になったのは茶髪の男性。武器は両手剣だ。細い刀身で相手の攻撃を防いだものの武器の重さに負けたらしく、押しつぶされてそのまま肉叩きで叩かれるような勢いで攻撃を受け、四散していった。

なんか残酷なんですけど・・・・・。


「くそ!なんだあのおっさん!超強いぞ!」


「アイツ一人で戦場がひっくり返ってやがる!」


「鬼だ・・・・・」


「ああいうのはな、キラーマシンっていうんだよ」

飛び交う言葉は皆、あの大男を指しているのだろう。そうとしか考えられない。

「消え失せろ・・・勝利するのはこの俺だ!」

大男が大声で自信満々で叫ぶと、両手で握る巨大な鉄製バトルハンマーを地面に叩きつけた。思わずヒビが入っているんじゃない?と思うほどのけたたましい音がこの場全体に響き渡り、全員の参加者に威嚇――

そのあまりにも強大な存在を前にして、多くの者は畏怖に包まれた。私も思わずビックリしたが、でも・・・・・逆にモンスターに似すぎて怖いというか面倒くさいというか・・・・・。




「おぉー?もしかして・・・・・ユイちゃん~!?」

後方から声が聞こえた。聞かなかったことにしよう。だけどその者の声は再び聞こえた。そして私の前にそれは映る。

「やっぱりユイちゃんじゃーーん!まっさかぁこんなところで合うなんて・・・。俺はついてるなぁ!」


「さぁー楽しも・・・・・ブフェッ」

語尾が微かに震えた彼の口調は、そのまま続くことはなかった。なぜなら私がワンドで彼の頬をぶん殴ったからだ。

彼は目を満月のように見開き、長い長髪を整えてから私に声をかけた。

「ひどいなぁ!ボクのことを忘れたの?ライチョウだよ!」


「知らない!」

再び驚愕の顔色。

「ひどいよぉ・・・・・。ユイちゃんってそんな子だったの?」


「あなたはもう失せなさい!」

彼は私のワンドを見るや否や、今後絶対に見られないだろうと思うほどの顔をした。≪トルメンタリー≫でライチョウを凍らせ・・・・・そして≪バーニングブレイズ≫で炭にしてやった・・・・・。

そりゃぁないぜ・・・・・という彼の言葉の余韻が数秒残ったが、それを無視して状況を考察してみる。





気が付けば場には私を除き、二人しかいなかった。

一人はさっきの大男。その巨体もハンマーも目立つ限りだ。そして片方は存在感が少し薄い細身の男性。吸い込まれるようなダークカラーの髪の毛に、全身黒づくめの衣装・・・・・。暗殺者という言葉がとても似合う姿をしている。


「あとはお前と娘だけか」

自身に満ちた口調だった。娘・・・・・とは私のことだろう。このステージにやってきた16人のうち、女性だったのは私一人のみだ。後はハンマーを携えた今の大男やら、黒いコートをたしなむ剣士、絶対に防御力がないTシャツを着た弓使い・・・・・ちなみに後者二人はハンマー男に倒された。


そしてようやく気づいた。彼があんなにも緊張せずに強いのは自身が溢れ出しているからだ。私が経験したあの緊張感は、ピアノの発表会とかでの緊張と一緒なのだろう。

要は自分のパフォーマンスに自身が無いから。それだから体が強張って言うことを聞かない。自身を持てばそれが無くなる・・・!


これって受験の面接とかでも通用するかも・・・!?

そんな事を考えている中、二人の言葉は続いていた。

「フッ・・・、でかい粗大ゴミが残ったことだ」

ハンマー男の方は血走った眼差しを向け、細身の男を威嚇する。

「黙れ小僧!貴様に何ができる!」


「んゴフッ!!」

次の瞬間目の前を盛大な火花が空間を彩った。ひとたび火花が薄くなればまた次の火花が、それが絶えればまた別の火花が散りばめられる。まるで火力の薄い設置型花火だ・・・・・。

気が付けば大男の存在そのものが消えていた。残るは私と黒づくめの男・・・・・。


そういえば私、ライチョウしか倒してなかった。私が生き残ったのはよくよく考えると他人のおかげ・・・・・。よかったのか悪かったのか・・・さっぱりだ。

コツコツと音を立てながら近づいてくる全身黒一色で統一した男。私の3m程先で彼は停止する。

すると――

「女を殺すのは気が引ける。降参してくれないか?」


「こ・・・降参!?」


「リザインや降参を大声で叫べば勝手に体がシフトする。戦うのは御免だ。とっとと帰ってくれ」

だんだん・・・・・・・・・・、

「帰ったら前シフトした場所に行くはずだ。さぁ降参しろ」

だんだん・・・・・・・・・・、

「何だ?早く降参しろ。それとも俺に殺されたいのか?」

だんだん・・・・・心の・・・・・、

「おい。死にたくなかったらとっとと帰れ」

だんだん・・・心の奥のナニカが・・・糸みたいなものが・・・・・!

「おい!死にたいのか?なぁ!」

心の奥の糸が・・・感情が・・・感情の糸が・・・・・!!


「こいつ!知らねぇぞ!!」

ちぎれるっ!


「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!」


「ぬぁっ!?」

飛来した三本の投擲武器を避けた後、今までの中で最速と言わんばかりに思考の歯車が回転する。まるで歯車がこの時に限って増殖したみたいだ。10秒程で終わった詠唱は彼の表情を一瞬にして相対的なものに変えた。

「インフィニティ・・・・・デストロイヤー!!」


「うぁぁぁぁぁぁーーーーっ!」

轟音と同時に発射された巨大な火炎弾は、彼の体を一瞬にして巻き込み、そして爆音とともに四散させた。ちょっと残酷だったけどあまりにむかつく野郎だったから気にしない。

しかし彼の体力は1割をきっていながらも残っていた。そこに私の意見を告げる。


「あんた・・・私が女だからって舐めてたの?」


「は・・・はい」

さっきの力強い罵声はもうなかった。涙を滝のように流しながら彼は項垂れている。力無さげに私から遠ざかろうとするが、その移動速度はカメより遅い――


「相手が・・・」


「相手が女だからって・・・・・」


「甘く見ないで!!」

私の怒鳴り声とともに≪バーニングブレイズ≫でトドメを指す。






第1次予選B-2ブロック勝者―『ユイ選手』


「アハハハ・・・すごかったわね・・・。ユイ」


「え・・・・っ!?見てたんですか!?」


「ばっちり」

ユウスケのその言葉を聞いた瞬間、私は顔を真っ赤にしてその場にうずくまった。しまった!そういえば試合の様子を見れたんだった!あぁー!あんなに怒鳴って・・・!私ったら・・・あぁー恥ずかしい!


「まさか・・・10秒で≪インフィニティデストロイヤー≫を発動させるとは・・・ユイも成長したな」


「ふぇ?」

その声の主は紛れもないユウスケだった。うずくまっている私の頭にポンと頭を乗せて、優しい笑顔を向けてきた。そしておつかれさんと言ってくれた。


「すごい戦いだったですー!」


「ホント!女性の代表者よ!」

アズサの言葉でまた私は撃沈した・・・・・。






鋭い。

槍として正しい道を歩んでいる。使っている武器は槍同士だが、相手はランスだ。漆黒にペイントされたまるで黒龍の爪のような一品。ときどき顔を見せる赤いマグマのような宝石が、本体の黒いランスの表面を仄かに照らす。

思わずカッコイイ武器だと見とれてしまう一品だ。されどいずれは討つ敵手が持つ武器。ここでそれを吹き飛ばしてやらん・・・。


相手がデッドヒートに入ったのか、槍術スキル≪ブレイブぺネトレーション≫を二連続で使用してきた。これは一度の仕様で十連撃を繰り出せる槍の中でも高性能なスキルであり、同時に使用するのが難しい部類のスキルである。プレイヤーの技量を問う、選ばれた者がマスターできるスキル・・・・・。


武器の大きさ的には不利だが、相手が疲れてきているのが幸いして、この槍でも衝撃を受け流すことが出来た。コイツの名前は≪蛇矛(だぼう)≫と言い、その名の通り矛先が蛇のようにクネクネとした武器で、太い柄の部分は竜の肌のようにざらざらとしている。


この武器は一撃一撃には強みがあるのだが、こういう連続的な戦いに対応するのは難しい。この槍を用いた戦法は一撃離脱戦法か、奇襲を行う戦法に限られる。

武器を変えようにも大会のルールによってそれはできない。持ち込んだ武器のみで戦う事が許されるのだ。まぁそれはこの第一次予選だけの話で、二次予選の一対一の正々堂々とした戦いは武器を変えることが許されている。激しい武器同士のぶつかり合いにより、損耗が激しいからだ。


そんなことを言ったら今の状況もそうなのだが、これはこれで第一次予選。些細なことに対し管理者は何もしないのが当たり前だ。



「強いッスね・・・・・!」


「ふっ・・・・・」

声を出した短髪の同年代と思える少年、日頃体を鍛えていそうなその体つきは、強者の印象をまず先に俺に対して与える。だが実際は攻撃スピードもあまり高くなく、槍の突き攻撃の一つ一つが鋭いだけ。攻撃が鋭いのは良いことなのだが、それを上手く利用できなければ意味無しだ。

つまりこいつは、実戦的な作戦すら組み立てない猪突猛進型の性格をしたプレイヤーだ。


狂ったイノシシ意外にもいるとは・・・、それも人間で・・・。あいつは威力だけは馬鹿強く、スピードもそれなりだが作戦がない。ただフィールドを一直線に突っ切って目標に体当たりするだけ。横に歩くだけで避けられる雑魚中の雑魚だ。



早いとこ決着をつけよう。と決意した俺は槍を振り上げる。それは突きの突進と後方に下がるステップ運動により、一瞬力の入りが緩んだランスに的確に命中し、空を舞った。その飛び具合に相手は驚いているが、やり様によっては簡単にできる芸当である。

相手に見とれる隙を与える気はないので、颯爽と首を刺し、一度抜いて心臓を二回ついた。彼は低い声を二度あげたが、なんて言ったか聞き取れずそのまま砕け散って死んでいった。



一応骨がある奴だったが魚類並みだな・・・・・。作戦がワンパターンすぎる。ただ素振りだけを鍛えただけで作戦は練ってない奴。どうしてこんなのが最後まで残ったのか分からん。周りが低能だったのか、それともこいつが逃げまわってたからか?






第1次予選B―3ブロック勝者―『ショウ選手』


第1次予選B―4ブロック勝者―『おがし選手』


第1次予選B―5ブロック勝者―『ベルトレッド選手』


第1次予選B―6ブロック勝者―『洸輝選手』


第1次予選B―7ブロック勝者―『メタキ選手』


第1次予選B―8ブロック勝者―『百人前カルビ選手』


第1次予選B―9ブロック勝者―『婁鬼選手』


第1次予選B―10ブロック勝者―『アメリカ兵選手』


第1次予選B―11ブロック勝者―『エル選手』


第1次予選B―12ブロック勝者―『タグケン選手』


etc・・・・・・・・・・・・・・・

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