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Soul World  作者: Hamlet
第2章―決闘の世界―
41/58

前提

ネズの声が途絶えてからリアルで三日ほど経った。

あれから彼の名を呼んでも来ることは一度も無かった。心の中で彼の名前を唱えても同じことだった。



今はとりあえず弟をこの世界に来させるために、こつこつソウルポイントを溜める作業に入っている。しかし、そうそう溜まるものではないのでかなり苦労を有する行為だ。スキルレベルもエルザさんの言った通りに上昇していき、現在レベル40にして400超えとなっている。

無論ナイフと体術の話だ。・・・・・だが、何かがおかしい気がする。


レイカと練習試合をしたとき、あのときスキルレベルは3ケタのラインに達していなかったはずだ。


倒す敵によって上がり具合が変わるという仕様なのかもしれないが、そうならばゼレクトロス戦やイグリーオ戦を通してかなりの量の経験値が舞い込んでいるはず、でもそれの後にレイカと練習試合をやっているからそれは関係ない可能性が高い。


ならば手強い敵と戦って負けた場合に上昇するのか?

そうだ、こないだバハムートというすこぶる強いチート級Mobと戦った、あるいはいじめられたといってもいい戦いだった。しかしこれといった変化はスキルレベルに見られなかった。


さらにはエルザの話もおかしい。

エルザはレベルが30ならば300は普通だよと述べた。つまり10レベルで100、レベル5なら50は達していてもおかしくないはずだ。確かに現在はそれの法則に従ってレベルが上昇している。しかし俺が完全な初心者だったころは、レベル10の状態でようやくスキルレベルが追い付いてきた感じだった。

初心者時代は敵が弱いから上がり具合が悪いというありふれた可能性も存在するが、いくらなんでもこの差はちょっとやり過ぎだと思う。




ということで、この実験を行おうと今バリバリ初心者のヒデアキさんと一緒にダンジョンに潜っている。彼は日曜日に初めてやってきた身だ。現在三日が過ぎて、脱初心者ラインの目の前に足を踏み入れるところだろう。

そして、これも謎なことにあれからニュービーがレイカの家に来ることはなかった。本当にこの世界は謎ばっかである。運営者の存在といい・・・・・・・・・・

「おーい、ユウスケ。なに考えてるんだい?」


「おぁっ?」

突然隣を歩いている長身の男に声をかけられたので、普段は出さない声を上げてしまった。無論ムキムキのおっさんが現れたという展開ではなく、今回の実験対象のヒデアキだ。

「あー、すまん。ちょっと考え事してた。ハハハ」


「なんだい?カワイイ女の子の妄想とかでも」


「それはあんたの方だろ・・・・・」


「なっ・・・!?俺はそんな性格じゃっないよ!」

この正社員ことはやしひであきの一人称は『俺』である。面接とかで言ったら即アウトな言動なはずだが、彼はこの世界においてその一人称を多様している。果たして現実ではどうなのだろうか。一体どんな仕事をやっているのか・・・・・気になってうずうずする。


「なぁ、ヒデアキ・・・・・おわっ!」

と、ここでいつもの展開で敵がポップした。RPG定番の亜人型雑魚モンスターゴブリンだ。しかしこの世界ではその限りではない。彼らにはワームなどと同じようにランクのようなものが設定されていて、最下位の個体はまぁ雑魚なのだが、上位種とくるとこれがとてつもなく強いらしい。人間性に満ちた行動をとって武器の扱いも、スキルレベル800と同等かそれ以上との話だ。もちろんこんな辺境のダンジョンにそんな怪物が現れる訳がない。


とっさに腰のナイフを抜いて、突進気味の攻撃でゴブリンに接近し速攻で屠った。まずは一体が消滅し、次はその横で武器というにはあまりにも無骨な棍棒をゆっくり振りかぶっている固体を攻撃、4発目の下段攻撃で体が四散した。そしてナイフを逆手に持ち、迫ってきた別の個体の胸部に向けて刃物を突き刺す。

血と同じ扱いのはずの火花がそこから散り、ゴブリンの歯が一瞬食いしばる。それと同時に彼の片手に携えられた短剣が鮮血色の光を放ち始めた。これは俺もよく使うブラッディネイルの発動モーションだ。短剣、ナイフどちらでも使用可能なスキルなので、短剣を持ったゴブリンが使用しても違和感は無い。


他のゲームと同じく短剣は軽々と扱えるので、1秒以下の準備を終えた鮮血色に煌めく剣が俺の胸部目掛けて接近してきた。少し早いがこれくらいならできる。相手の武器も重い物じゃないし、こちらのナイフがあれば迎撃可能だ。心でアサシネーションブレイクと唱え、腕が瞬くように動いてナイフが短剣の軌道上に入った。お互いの武器がそこで衝突し、甲高い金属音が響く。ゲツガ曰くこのスキルは両手剣などの長い武器で使うのが良いらしいが、実際のところ近接武器ならば何でも使える。ただし短剣などの短い武器だと練習がいるし、なにより相手が至近距離まで迫って怖い。

力押しされた短剣は空中を舞っていた。その隙に相手の腹部に連撃を打ち込んで、ゴブリンは無数の塵に姿を変えて消滅した。


「お疲れさん~」


「ふぅー。次は一人で戦ってくれよ」


「えー?俺はまだ初心者だよ!先輩の君に教えてもらわないと」


「修行だと思ってやってくれ・・・」

ヒデアキに今回の実験について何も伝えていない。実験の最初にスキルレベルを見せてくれと言って詳しく見せてもらったが、そこに記されていた数値は驚愕と言わんばかりの物だった。

まず目に飛び込んだのは彼の主力である片手剣スキルのレベルだ。数値は124で彼は既に12レベルになっているから世間から見れば至って正常な数値だ。だが、俺にとってこの数値は明らかにおかしいものだった。俺がこのレベルの頃、3ケタなんて到達していなかったのだから。

もちろん現在はノーマルに乗っているわけだが。


それで今回の実験というのが、スキルレベルの上昇具合は人によって違うかというのを調べることである。と言っても俺とヒデアキのレベル差は実に20を超える。そんな差があったらさすがに実験にならないが、比較対象は俺の過去・・・すなわちレベル10あたりだった俺だ。あのころは3ケタに到達していない。



「・・・・・それで、スキルレベルに変化は?」

かれこれ15分くらい狩った。1時間半ぐらいでプレイヤーの方のレベルが1あがるはずなので、これならスキルの値は1上がってるはずだろう。

「えーっと、あぁ1上がってるよ」


「やっぱりか」

予想通りだ。確かにレベルは124から5へと上がっていた。つまり俺が初心者の頃の上昇量は何かがおかしいということになる。それとも仕様というべきものなのか・・・・・。ちなみにスキルレベルの上昇で頭の上にあのマークは出現しない。というかいちいち出現するとうっとうしいだろう。


「まぁーた気難しい顔してるなぁ~!!若者の考えてる事はさっぱりわからんのぅ!」


「あなたもまだ若いでしょう」


「あと一歳で30だよ」

即答だった。



それから敵を薙ぎ払って進み、およそ3時間ほどでダンジョンをクリアした。ボスルームはゴブリン集団でリーダーといった個体がいなかったが、道中より上位の個体が湧いたので少々手こずった。だけど基本的な動きと戦術はあまり変わらないので、ボスとしては比較的楽に倒せた。それにしても集団でボス扱いってミッションみたいだった。

「おつかれさん。この後君はどうするんだい?」


「あぁ、ちょっとこれからあるクエストをやろうかなと思ってね」


「ほう、それは興味が尽きぬところだね!」


「いや、ただのクエストじゃないぞ」


「え?」

俺が今から受注しにいくクエスト、それは一定の期間しか受けることができない特別なクエストなのだから。





ゲームで特殊なマップに入場したりするイベントが実施されたとする。

そこらのゲームではありふれた出来事だ。俺が今までやってきたゲームでも、その手のイベントをたくさん実施してプレイヤーを募っていた。

よくあるパターンでは10月頃や12月頃にある、一定期間特殊マップでイベントを実施!というやつだ。前者ならばハロウィンなのでパーティー会場や墓場型のマップ等、後者ならばモミの木に飾り物があるようなクリスマス然とした専用マップが解放されることだろう。


そして、それらは大抵クエストという形でプレイヤーに伝わってくることになる。その内容は○○を持ってここへ来てくださいや、○○を○個集めたらチケットと交換しますよという形だ。そうすればめでたくイベント専用マップに足を踏み入れる権利が得られる。


それが俗に言う『前提』という類のクエストなのだ。

もちろんイベントに限らず、伝説と言われる武器を手に入れる場合や、特定のボスモンスターに挑む条件と言った場合の物でも前提扱いだ。

その前提という名のクエストの存在はこのゲームに似た世界、ソウルワールドにおいても例外ではない。

それが今、我が目の前に立ちはだかっている壁なのだ。


「うわ・・・・・どれもこれも難しそうな内容ばかりだなぁ・・・・・」


「これがユウスケの受けようとしているクエスト群かな?」


「そうさ・・・・・。これで興味が尽きたか?」


「いやいやいや、まだまださ。逆に興味が湧いてきたよ!」

前提条件のクエストは全部で10個ある。どれもこれも難易度はかなり高く、それなりの技量が必要とされるみたいだ。これくらいの前提をクリアしないとあれには出られないということなのか・・・・・。

「おぉー・・・・・、どれもこれも内容がきつそうな感じがするなぁ」


「そういうもんさ・・・・・」


「ん、この流水の乱舞ってクエストがよさそうだな。敵一体か」


「やめといたほうが良いぞ」

俺が返答したわけではない。あながち対象がどんなモンスターか予想がついていたが、彼にアドバイスできるほど詳しくはない。せめてもの助言として口を開こうとしたが、それよりも先に隣に立っていた男が介入してきた。


「それは猛獣クラスのモンスターを討伐するクエストだ。ビースト型の狂暴な奴を一人で相手をする自信があるんだったらやっても良いと思うがね」

左を向いてその人物の姿を確認しようとした。まず目に飛び込んできたのは漆黒の全身鎧だった。そして右手に握られた同じ漆黒カラーの細長いパルチザン――


「あなたは・・・・・っ・・・!ギル・・・さん!世裁の槍使い!!」


「どうも、久々だね、少年。あれから元気かい?あのお姉ちゃんは」


「もちろんです。でも、周期の人が来てないから親失格だと思いますけど」


「ハハハ、たまにそういうことがあるからね。ところで、君たちも今回のトーナメントには出るのかね?」


「ええ、もちろんですよ。それで・・・今、自分に合うクエストを探してるんです」


「あぁーユウスケ?このお方は誰だい?」

そこに入ってきたのは後ろにいるヒデアキだった。

「あぁ、さっき言った通りマスタークラスの槍使いギルさんだよ」

ギルさんの武将のような勇ましい顔が少しはにかんだ。

「いや、そんなに素晴らしいことではないよ。レベル100に行けば誰でもこの称号は取れる」


「ええっと・・・ギルさん。この中で一番簡単なクエストってのはありますかね?」

俺はヒデアキの言葉を聞いて、とっさに後ろに振り替えって彼の顔を睨んだ。おもわず声を漏らしそうになった。

「簡単な物はここには無いよ。どのクエストも同じくらい難しい。ユウスケ君の言うとおり、自分に合ったクエストをここからピックアップするのだ」

ギルさんの言動を聞いて胸をなでおろした。

「人にはそれぞれ特技という物がある。ユウスケ君もそこのお兄さんもわかってるね?自分の特技に見合ったクエストがこの中に絶対一つは存在するのだ。たとえば眼鏡をかけた君は片手剣使いだから、この暗躍する幻影っていうクエストがお勧めだ。あと蒼空のシャングリラというのも良いかもな」


「へぇー・・・・・じゃあ俺はどれがお勧めなんですか?」


「ふむ・・・君はナイフか両手剣どっちだね?」


「両方共有で、格闘術も混ぜて戦います」

しばらく悩んだ後、固く閉じられた口がゆっくりと開いた。

「残念だが、両手剣が通用するクエストはないんだ。だが、格闘術向けのクエストはちゃんと存在するから安心したまえ。強硬の岩男というクエストがお勧めだ」

名前からしてとても難易度が高そうな気がするが、ここは大人しく受注した方が良いのか・・・・・。


「えっと、具体的にどんな内容なんです?」


「名前の通りだ。岩の怪物を数匹倒すだけだ」

確かに岩のボディを持ったMobには打撃や拳撃がとても有効だ。だが、そういう敵に至って奇想天外な能力を秘めたMobがいるものだ。例えばゴーレムが岩を飛ばすなんて思ってもいなかったし。

「それって・・・・・大体どれくらいのレベルなんですか?」


「大体は50くらいだ。なに、そこまで気にならないよ。動きが鈍いから苦戦は強いられない。後ろに素早く回って拳撃を打ち込めば楽に倒せる」


「じゃあ、暗躍する幻影ってのは?」

そこにヒデアキが質問を投げてきた。

「それは夜の第8の世界に出没する隠蔽特化モンスターを一匹討伐するやつだ」


「こ・・・これってある意味めっちゃ難しくないか!?」


「ならばシャングリラはもっとつらいぞ。落ちたら即死するマップに行くことになる」


「なにソレっ!」


「まー、とりあえず教えてもらったもんを受けるんで。ありがとうございました」


「ふふ、どうも」

ギルさんに軽く会釈した後、彼を見送った。




――とりあえず他の場所から仕入れた情報によるとこうだ。

強硬の岩男は第7の世界の真ん中の大陸の北部に位置する、灰色の岩がごろごろ転がった高原に出現するMobを30体倒すクエストらしい。情報によると、対象モンスターはごつごつの岩のような腕を振り回して攻撃してくる模様で、当たると同レベル帯でも3割近く持っていかれるらしい。背中への打撃及び拳撃が有効で、当てればライフを半分削れると書いてあった。


内容から見れば比較的に楽そうなクエストに見える。蒼空のシャングリラに比べれば・・・・・。

ヒデアキが幻影クエを差し置いて受けることにしたクエスト、蒼空のシャングリラの具体的な内容は第5の世界にある天空城フィールドに生息する魔法生命体Mobを蹴散らすことだ。ただし破壊不可のオブジェクトが魔法攻撃を行ってくるから厄介らしい。さらに通路から落ちると確実に即死だそうだ。


とまあ、そんな高難度クエストを彼は受注してしまったのだが・・・・・。


とりあえずレイカにクエストを開始するから今日は戻れないとメールを送り、それぞれの目的地に向けて出発した。




シフトで水色に染まった視界が徐々に晴れ、見覚えがある草が生い茂った新緑の大地が目の前に広がるフィールドに到着した。辺りには木々が密集した雑木林のような場所が点在し、小川が近くに流れている。比較的喉かな雰囲気の場所にシフトしたようだ。


ここから北に向かって歩けば灰色の殺風景な岩場が見えてくるはずだ。道の途中に大きな森があり、通らなくても目的地に行けるようだが、それだとかなり遠回りになってしまうらしい。


森にはカマキリや巨大アリといった虫型Mobが複数出現し、中でもトンボは一番狂暴と書いてある。エンカウント率はそこそこ低いのでそうそう出くわすことはないだろう。手強いのは前兆3mはある地を這う巨大ヤスデで、俊敏な動きに翻弄されないように、首を狙えば楽だよと黄色い文字で注意書きが書いてある。ヤスデが素早いなんて考えたくもないことだ。


しばらく歩いていると前方に森林が密集してできた自然の柵が見えてきた。これが噂の森林だろう。今まででエンカウントしたのは何気に大きい野兎とスライムのみだ。どちらも雑魚に等しいレベルのMobだったので、ここからは気を引き締めなければならない。

さらに雑木林に近づいていくと、何の種類かはわからない木々が目の前に見えてきた。目の前に立っている隣同士の木は片方が横に広がるように枝を伸ばしていて、松の木の葉が太くなった印象の樹木だ。片方は丸っこい普通のフォルムのスタンダードな広葉樹である。


丸っこい樹木に近づいて上を見上げてみると、葉の隙間からうっすらと太陽の光が洩れて地面に降り注いでいる。森で見る神秘的な光景の一種だ。現実の森林は落ち着くと言われているが、ここの森はなぜか落ち着かない。それもそのはず狂暴なモンスターがうろうろする密林のような場所なのだから・・・。


視線を下ろすと地面に何かが転がっていた。拾い上げてみるとそれは一度は見たことがある物体だった。ドングリだ。正真正銘のドングリだ。ドジョウさんの友達と言われるあれだ。残念ながらこの近くに池のような場所は存在しない。

・・・・・が、アイテム名は設定されていなかった。何度ジロジロ見ても情報が出現しない。なのでもう一つ地面に転がっているドングリを拾い上げて同じことをしてみたが何も起こらない。仕方ないので黒ずんだそのドングリを放り投げた後、別のドングリを拾い上げた。



すると空中にいつもの正方形のウィンドウが出現した。やや透明感のある白色のウィンドウにはアイテム名≪ドングリ≫、生食不可能と記されていた。

シイの木の実は食べることができると聞いたことがあるが、ドングリは無理なようだ。その前にまず食べようと思うことがないはずなんだが・・・・・。とりあえずポーチに格納して別のドングリを探した。

合計3個のドングリを拾い上げて俺はようやく悟った。このドングリ拾いに何の意味があるのだと。

そして、このドングリにはよくわからない点がある。まず生食不可能とか言いながら、消費ポーチに入っているのだ。これは食べれるという証ではないのか?それともゆでたり炒ったりして調理しないと食べられないのか?


とりあえずてっとり早く聞こうと思って彼を呼び出した。


「ハリー、これって生でも食えるか?」

呼び出したのは我がパートナー、影狼ことハリーだ。シャープなボディで赤く瞬く獣らしい眼といった悪魔的風貌だが、根はとってもいい奴でかなりいい加減な奴でもある。


「それハ、確かドングリダナ。生食できルゾ」


「え?」

ハリーの発言には驚いた。システムメッセージ的なものに不可とバリバリ書いてあるのに、ハリーはそれを食べられると述べた。もしかしたら彼がそう聞いただけで実際は食せないという可能性も有りうるが、ここはひとつハリーさんに食べていただこうか。

「じゃあー食ってみ」

ドングリ一つを実体化してハリーに投げた。彼は容易くキャッチして口に放り込んだ。

「ウン、ナッツ、ミタイでとてもおいしイ」

コリッと彼の口から聞こえて、そうつぶやきながら顎をゆっくり動かしていた。どうやら食べられないものではないようなので、俺は残った二つ目のドングリを口へと放り込んだ。


まず表面の固い殻を奥歯で砕く、すると中からピーナッツのような味わいの果肉が下を刺激した。ほどよい苦みでそして・・・・・・・・・・、


「まっず!」

口の中で砕けた殻の残骸もろとも地面向かって吐き出した。まだ口の中にごろごろとしたドングリの表皮が残っている。嫌になってしまうよ。

「あぁ、思い出しタ。それ、ペット用の餌ダ」


・・・・・・・・・・もっと早く言え。




とりあえず気を取り直して、ハリーを呼び出したまま森の中へと入って行った。この森ならハリーでも苦戦せず戦うことができるだろう。というか今までの冒険は、俺にとってもハリーにとっても無謀過ぎたのだろう。どうせならレイカに付き添うのはやめたほうががいいかもしれない・・・・・。


俺達は吸い込まれるように森の中へと入って行った。

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