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Soul World  作者: Hamlet
序章
3/58

第3話

 時刻は4時45分。


 絵があったところにある丸い時計の時刻はジャスト午後6時……。窓から差し込む光は、いつの間にか赤く染まった物に変わっていた。だけど現実の夕日より少し濃い気がする。


 あれから本を読み進めて様々なことがわかった。

 この世界は彼女の言った通り別の世界らしい。だが比較的自由自在に現実と行き来できる世界とのことだ。比較的と行ったのは、こちらから向こうに帰る場合、向こうが深い眠りについていると帰ることができないということである。逆に向こうからの場合、興奮状態だと来れなかったりするのだ。


 つまり、この世界に来る手段は≪眠り(スリーピング)≫である。

 3番目に読んだ本によると、意識が朦朧(もうろう)とする状態の中で現実からこの世界へ接続する方法は、ある言葉を寝る前に唱えることらしい。


 ちなみにこちらからの脱出は簡単で、浅い眠りのとき、すなわち夢を見始める時間帯に『ソウルアウト』と唱えるだけで目の前にウィンドウが出現し、OKボタンを押すか、頭の中で「OK」と考えるだけで、すぐさま元の世界に御帰還というわけだ。


 今述べた考えるだけ、というのがこの世界での最大の力になるらしい。つまり自らの意思である。



 アイテムストレージの装備ポーチを出そうとした場合、手で空中にIの字を書いてそこから装備ポーチを展開するより、頭の中で「装備ポーチ開け!」と考えるだけで開くのだ。


 後の内容は基本的にMMOそのものだった。モンスターと戦ってレベルを上げるやら強いボスモンスターの潜むダンジョンや迷宮にパーティーで潜ったりとMMOそのものである。


 ただし、そのMMO自体は実にクセのあるスキル制の指向だった。


 レベルは10に達すると初めてステータスポイントが貰えるらしく、その量はそれぞれのステータスに3ずつ振られるだけだ。そこから10間隔で3ずつという、レベルは期待してはならぬ! 己の力で切り抜けろと言わんばかりのものだった。……といっても、もともとスキル制の好きな俺には嬉しくもあった事実である。



 こんなスキル制ゲームワールドなんて、プレイヤーが少ないんじゃないのかと思ったらそんなわけではなかった。

 物を生産ができるのもあるし、風景が素晴らしいというのもある。現実で星を見ようと思ったら空気の澄んでいる山まで行って見なければいけないのに、ここでは夜になると、廃工場のようなアンダーワールドのような、雰囲気を匂わせる以外の場所では満点の星空となる。


 昼の空もきれいで、無限の蒼穹がどこまでも続いているようで、それはそれは実に美しいらしい……。と言ってもこれはすべて本に書いてあったことである。


 俺が自ら感覚として感じ取ったものではない。だが、初心者用の説明書に書いてあるということは、かなり期待してもよいということかもしれない。

 でもこれって釣ってるんじゃ……。


 そんなわけで、この≪ソウルワールド≫はかなりの人気があるらしい。だが、どうしてこの世界に俺は来たのだろうか? 別に異世界への転移を志願わけでもないのにどうして俺が……。


 この答えは8番目の本に書いてあった。


 どうやらこの世界に来るきっかけは3つあるらしい。

 まず1つ目、突然この世界にやってくる。これってきっかけなのか? 俺はこれに当てはまるのか……と思ったが、2つ目のほうが当てはまるところが多かった。


 2つ目、キャラクターレベル100を超えた家を持つプレイヤーに初心者プレイヤーの面倒を見させる訓練を行うためにプレイヤーをこの世界につれてくる。


 これは、100レベルを超えたハイレベルプレイヤーさんたちに弱者の面倒を見て、お互い触れ合うという訓練のために、熟練者側に無通告で初心者が送られてくるというものらしい。

 このプレイヤーの来るタイミングは1度来るとそこから現実時間で2週間の間に大量の初心者が流れ込んでくるらしい……。その初心者が流れてくる時期を彼女が言っていた「周期」というものだ。


 姉ちゃん大変じゃん。


 これは回避できない試練で、レベル100に達するときに家を購入していないとそこからレベルがあげられないらしい。そのほかにもさまざまな自由が拘束されるので、家を買わざるを得ないのだ。


 そして3つ目、これはプレイヤーの意思によって唯一プレイヤーを増やす方法である。

 あるポイントを消費して、指定した人物をこちらの世界のプレイヤーとする。そのあるポイントこそがこのスキル制ゲームワールドに生き続ける最大の要因といってもいいだろう。


  


 ≪ソウルポイント≫

 このゲームワールドで生活することによって手に入るポイントである。入手する方法はたくさんあって、自分より強い敵を倒したり、プレイ時間に比例してポイントがもらえたり、特定のクエストをクリアしたり、ダンジョンや迷宮をクリアしたり……と様々なことで手に入る。もちろん減ることもあって死んだり、特定のイベントで減ってしまう。



 一見入手手段や損失が普通に見えるが、ポイント自体はとんでもないものである。それはなぜか、なぜならこのポイントをためて使う場所は現実だからである。


 例えば50pt消費することで≪幸運の呼び込み≫を行うことができる。どんなことが起こるかは現実でのお楽しみだが、必ず自分にとって優位なことが起こるとのことだ。前例によると宝くじの1等が当たったりと、とんでもない幸運を呼び寄せることもあるらしい。



 だが…………どんなおいしい話でもウラは存在するのが世の中の常識である。そのウラとやらは、ソウルポイントで実行できるものに比べれば、はるかに重くなる。



 そのウラとは「死」である。


 この世界にいる状態で現実の体が死ぬのは5つある。


 1つ目、ソウルポイント0の状態で減少する出来事が起こる。


 まぁ、これは当然だろう。どんなゲームだって残機ゼロのときミスったら、そりゃゲームオーバーだよな。


 2つ目、ボスモンスター戦などでボスから大ダメージを受けてIAの限度値を超える。


 つまり馬鹿でかいダメージを受けてIA《衝撃吸収率》を超えてしまうっていうわけか。こりゃ要注意だ。


 3つ目、特定の敵に敗北する。

 特定の敵って……その辺の雑魚モンスターの可能性はないと思うが、いつどんなときにそのモンスターと遭遇するかわかんないので、これはこれでかなり怖いものだ。


 そして4つ目、特定の敵が使う≪呪縛(じゅばく)≫スキルを指定時間以内に解除できなかった場合。

 これも3つ目同様敵がどんなのかわかってないだけ怖い、しかもスキルにあたるだけで死の危険が付きまとうなんてとっても怖い話だ。


 最後に5つ目、最高管理者による両世界からの永久追放の制裁が下される。

 まあ……これは犯罪防止みたいなものだろう。








 時刻はこっちの世界のあの丸い時計が10時47分、現実のほうは4時55分に突入する前だ。

 もう分かっていると思うが、この世界では1時間=1日として流れている。あのとき彼女が2日後といったのも理解ができる。……しかしこんな時間になっても彼女はまだ帰ってきていない。






 そろそろ分厚い知識本を読むのにも飽きてきたので、俺はこたつに潜り込んで目をゆっくり瞑った。現実のそれと変わらず、こたつは温かい。現実と錯覚するほど温かさが伝わってくる。

 (まぶた)が重くなってくる……現実の時間だと実際にそろそろ寝る時間だし、今日はこの辺にしておくかな。




 そうしてソウルワールドで初めての眠りについた。





 今回は設定の解説だけです。


裏設定

 興奮状態だと来れないと書いてあります。

 もしソウルワールドに行くのがワクワクしてそれが原因で来れないというのが考えられますが、この場合はリンクを促進させるという効果があったりします。

 スポーツ等の場合、明日の大会のことを考えてドキドキして眠れないということが考えられますが、これは布団に入っているうちに考えが発展していった挙句、脳が活性化してしまうということだと思います。

 しかし、ソウルリンクはそういう考えを脳が張り巡らせる前に意識を朦朧とさせて、ソウルワールドに連れて行くのです。従ってこの時の興奮は別の意味での興奮となるでしょう……。

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