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Soul World  作者: Hamlet
序章
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第10話

 ダンジョン独特の異様な空気を出しているベルアノアダンジョン。

 通路の壁は煉瓦造りだが、ところどころ傷がついていて廃墟そのもののようだ。

 前方の広間にMobがポップする。Mobの名は『モンキーゴブリン』。このダンジョンに出現するMobの大半はコイツだ。

 見た目は猿だが、肌の色は灰色でゴブリンというより猿人といった方がしっくりくるかもしれない。おまけにプレイヤーが使うごく普通の武器を使ってくる。広間にポップするMobは早めに片付けないと次々にポップするので、俺とセイヤは最初にポップしたゴブリン四体に向かって突撃していった。


『シューティングスター・ペネトレイト!』

 セイヤが二体を制圧し、俺は残った個体の片方に≪ブラッディネイル≫を放つ。

見事攻撃は首と腹部に命中し、ライフががくっと減る。そこに追加攻撃の≪アサルト≫を見舞ってゴブリンは叫び声をあげて消滅した。

 取り残された個体に≪シークエンススラッシュ≫を使い、七連撃目で胸を切り裂いてゴブリンは地面に倒れた。あれ……地面に倒れた?


「あれ……。なんで死体が消滅しないの?」


「特定の敵は消滅せずに素材の回収ができるんだよ」


「ほうほう……どれどれ……」

 言われた通り、ゴブリンに近づいて回収できそうな物を探す。しばらくあさっていると手に毛の塊が現れた。

アイテム名は…………。

「……≪モンキーゴブリンの毛≫売却値5ソルって……どうなのよ」


「まぁ、期待しないほうがいいな」


「ユウスケ。新たなポップだぞ!」


「おうよ!」

 新たに六体ゴブリンが出現する。皆が不快な笑みを浮かべてこちらを見つめてくる。すべてのゴブリンが戦闘モードに入り、こちらへと襲い掛かってきた!

「うききゃぁぁぁ!」

 猿のような奇声を発しながら、一匹のゴブリンが俺を切り刻もうと剣を振りかざして突進してきた。やはり人間チックな挙動である。しかしお前はどう見ても小物だ。それ以上でもそれ以下でもない。


「させるかよ!」

 カウンターに万能な≪ローキック≫をゴブリンに見舞い、スキルの特殊効果によりゴブリンは体制を崩す――そして。


「お返しだァ!」

 ≪ブラッディネイル≫で急所を思いっきり抉り、火花を散らしながら叫び声をあげるゴブリンは、俺の放ったただの一蹴りでライフを全損させ、空気中に消滅する。血が出ている訳ではないのになぜかぞっとする。


 一体目の断末魔に気を取られているうちに、横から新たなゴブリンが短剣で≪ベーシックスラッシュ≫を放ってきた。


 間一髪で本格的な攻撃スキルの初撃と二撃目をかわしたものの、三撃目が隙だらけの腹部に命中して、火花のようなものが少し飛び散る。痛覚はないのに違和感がある。そんな奇妙なダメージが不快な気分を起こさせた。


 俺は反撃の一矢とも言うべき≪シークエンススラッシュ≫を浴びせて、攻撃を仕掛けたゴブリンを早急に倒す。

 

 ふと周りを見ると、セイヤは既に三体を殲滅して残すは目の前で防御態勢を取っているゴブリンだけだ。

 


 相手の防御の隙をつくには素早く攻撃しなければならない―

 ここはあのスキルを使ういい機会だ。今できる最大の連続攻撃を想像する。敵を神速で切り裂く自分の姿を――


「せやぁぁぁぁぁぁああああっ!」

 想像した通り、今の俺が持っているスキルで最大速度の技――それが俺の手に握られたナイフ、そして手自身から瞬いた。

 短剣、ナイフ共通スキル≪ソニック・スタブ≫、敵を五連撃で切り裂き、相手は大きく後方に仰け反る。

 さらなる追撃、怒涛の勢いでの≪シークエンススラッシュ≫をたっぷり浴びせ、ゴブリンのライフは消し飛んだ。ゴブリンは体を残さず、きらきらと空気中に散って行った。これはオーバーキルという現象なのか?

 間接的にミンチにしてしまったのでは……?


「おつかれさん」


「ふぅー。短剣がカスっちまったぜ」


「それぐらいならまだマシだよ。混戦になってくるとそりゃひどいもんさ」

 うわぁ、想像したくないよ。


 その後も俺たちは≪モンキーゴブリン≫の大軍を退けて、やっとダンジョンの一番奥へやってきた。


「この中がボスルームな……のか?」


「やっぱりどこのダンジョンでもボス扉の前では緊張するなぁ」

 自分の背丈の三倍ほどの大きさのその扉は、ここまで来るときに通った下層への階段よりさらに異様な雰囲気を醸し出している。煉瓦造りではなく他の石材で造られたような扉で、微細な装飾が施されている。中から伝わってくる未知のボスの威圧感、未開の恐怖が俺の心を固く縛る。


「う……うわ……すっげ緊張してきた」


「ふふ。まぁ無理もないよな、僕も昔はそうだったよ」

 鼻で笑いながらセイヤがそう言った。

「まぁ今でもこんな扉の前でちょっと緊張してるんだけどね」


「……よし、心の準備はいいか? 扉開けるよ?」


「……おう」


「よし……無理はするなよ」

 ギギ…………と鈍い音が通路に響く。セイヤが軽く扉を押しただけで扉はどんどん開いていく。ゆっくりと扉は動き続け、ガタン! とやや大きめの音が鳴り、扉は停止する。



…………奥にボスらしき人型の影が見える。さっきのゴブリンより一回り大きい。やはり肌の色は灰色だ。ただ図体が大きくなったあいつらだ。

 しかしボスが単なる強化版だと判断するのは禁物。何かしらの手を使ってくるかもしれない。


「ウキャァアアアオオォォッ!!」

 ゴブリンのリーダーらしきそのMobは奇怪な雄叫びを上げ、こちらに疾走してきた。さらに配下と思わしき通常サイズのゴブリン数体がボスの後に続き、残りは援護の体制に入っている。



「さぁ、行くぞ!」


「おうよ!」

 セイヤがベルトの鞘からレイピアを抜くのと同時に、俺は腰の鞘からナイフを抜いた。


裏設定

 ダンジョンは下に進むか上に進むかのどちらかに分けられる。そして一番奥の部屋にはもちろんボスが待ち構えている。



短剣、ナイフ共通スキル『ソニック・スタブ』

 スキル制寄りの素早い攻撃をするためのスキル。一撃の威力は低いので、基本的に足止めに使われるスキルだ。


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