よりによってフェレイラなの?私の親友は夫の愛人になりました。
「何故、どうして?あああっ。なんでよっ。なんでよりによってフェレイラなのっ」
ジュリアーナは、先月、結婚式を終えたばかりの18歳。
ジュリアーナ・デルト伯爵令嬢は憧れていたアディス・ロイド公爵令息と王立学園で熱愛の末、婚約、結婚へと順調な幸せを掴んでいた。
ロイド公爵家といえば、パルド王国において名門の公爵家である。
ジュリアーナは金髪碧眼の美人、そして夫となったアディス・ロイド公爵令息も金髪碧眼の美男で、彼の美しさに王立学園では憧れる女子生徒が多かった。
ジュリアーナは持ち前の美しさで、アディスの心を掴み、三年間の付き合いの末、結婚することが出来た。
玉の輿。
幸せの絶頂。
結婚式には大勢の人を招待し、ジュリアーナは得意満面の幸せの絶頂にいたのだ。
式を終えた後の新婚生活も、美しいアディスに愛されてとても幸せだった。
でも、その幸せは昨日で崩れ落ちた。
「フェレイラ・ベルデ伯爵令嬢の事を知っているだろう。君と親しかったはずだ」
「ええ、知っておりますわ。でも、身体を壊したとかで、卒業式には出ませんでしたわ」
「フェレイラ、彼女に子が出来た。だから、愛人として離れに迎える」
「フェレイラ?貴方、フェレイラと関係があったの?」
「ああ、あまり冴えない令嬢だが、気まぐれに手をつけたら、子が出来てしまった。仕方ない。だから愛人に迎える事にしたんだ」
フェレイラ?よりによってフェレイラ?
あまりのショックに部屋に戻って、ベッドで泣き崩れた。
フェレイラとの学園生活の思い出がよみがえる。
三年前から、ジュリアーナ・デルト伯爵令嬢は自分に自信があった。
金髪碧眼の華やかな容姿。
だから、この王立学園で、高位貴族の令息と知り合って、結婚したいという願望が強かった。
ジュリアーナと同じ伯爵位の令嬢にフェレイラ・ベルデ伯爵令嬢という女性がいる。
ジュリアーナはフェレイラの事が大嫌いだった。
くすんだ金髪に緑の瞳。
おとなしくているかいないか解らないフェレイラ。
領地が隣同士で、親達が仲が良いので幼い頃からフェレイラの事は知っていた。
気弱で暗くて、どうしようもないフェレイラ。
父、デルト伯爵は、
「ベルデ伯爵に頼まれた。王立学園でしっかりとフェレイラの面倒を見て欲しいと」
母であるデルト伯爵夫人は、
「幼いころから顔見知りでしょう。ジュリアーナ。しっかりフェレイラの面倒を見てあげるのですよ」
嫌ですと言えなかった。
仕方がないので、15歳の時、王立学園の入学式にフェレイラと会って、共に行動をした。
「あちらが入学式の会場。そしてあそこが教室。貴方、解っている?」
フェレイラはモジモジしながら、
「わ、解っているわ。有難う。ジュリアーナがしっかりしてくれるから助かるわ」
あああ、イライラする。
なんで人任せなのよ。
でも、この子の面倒をみないと両親に怒られる。
ジュリアーナには野望があった。
この王国では政略よりも、王立学園で実際に会って交流して婚約をという風潮があるのだ。
だから、ジュリアーナは高位貴族の令息をゲットしたいと息巻いていた。
わたくしは美しいの。
だから、必ず公爵令息をゲットして、玉の輿に乗って見せるわ。
しかし、フェレイラが傍にいて、その面倒を見てやらなくてはならない。
「あの……次の」
また、教室が解らないのね。仕方が無いわ。
「ほら、私についてらっしゃい。教室はあっちよ」
フェレイラを連れて、次の授業の教室へ向かう。
本当にイライラする。
この子、大丈夫かしら。
廊下をアディス・ロイド公爵令息がさっそうと歩いてきた。
大勢の女生徒達に囲まれている。
金髪碧眼のアディスは凄い美男だ。
学園一の人気者である。
勿論、ジュリアーナもアディスの事を狙っていた。
あの人と結婚出来たら、凄い玉の輿。
ああ、私を認識して貰いたいわ。
どうすればよいのかしら。
フェレイラが驚いた事に、アディスの前に飛び出した。
そして派手にすっころんだ。
アディスが身を屈めて慌てて助け起こす。
「大丈夫か?私の前で転ぶなんて、怪我はしなかったか?」
「ご、ごめんなさい。あの……」
そう言って、フェレイラはこちらを見た。
あの子、私の為に?わざと転んだの?
ジュリアーナはフェレイラの傍に走り寄って、アディスに謝った。
「友達が申し訳ございません」
アディスはジュリアーナを見つめて、
「今年の新入生かい?君の名は。美しい人だ」
「ジュリアーナ・デルトですわ。デルト伯爵家の娘です」
「デルト伯爵令嬢ジュリアーナ。覚えておこう」
そうにこやかに微笑むとアディスはその場を去って行った。
フェレイラが、
「私、頑張ったの。ジュリアーナがアディス様の事を好きだって知っていたから」
「貴方が気を遣う必要はなくてよ。貴方は自分の事を考えなさい」
「わ、私はこの通り、気が弱くて、男の人となんておしゃべりも無理で」
「もうっ。イライラするわ。しっかりしなさい」
本当に見ていてイライラする。
フェレイラと共に放課後、街に買い物に出た。
「フェレイラ。貴方も少しはお肌に気を使いなさい。美しさに磨きをかけなさい。貴方のお父様お母様から貴方の面倒を見ろと頼まれているの。だから私がしっかり面倒を見てあげるわ」
「嬉しい。ジュリアーナと一緒にいられて私、助かるわ」
一緒に街の小物や洋服を見て回った。
王都は開けていて、色々と素敵な物で溢れている。
フェレイラが、
「お揃いの物を買いたいの。ジュリアーナとお揃いの」
「仕方ないわね。お揃いのキーホルダーなんてどう?それともハンカチ?」
「このお花のキーホルダー。一緒に買いましょう」
一緒に花のキーホルダーを買った。
下らない。お揃いのキーホルダーなんて。でも、桃色の花が綺麗なキーホルダー。
仕方ないから、鞄に着けてあげるわ。
廊下での事がきっかけで、翌日、アディスに一対一で会わないかと誘われた。
嬉しかった。
アディスと付き合いたかったから。
街のカフェの個室で、アディスと話をした。
「私は理想の令嬢を探していていまだ婚約者がいないんだ。君はとても美しくて、しっかりしていそうだ。私と付き合ってみないか?私は結婚するなら、最高の女性と結婚したい」
「私が最高の女性?自信がありませんわ」
自分に自信があるジュリアーナ。
だけれども、アディスのお眼鏡に叶うかとなると自信がない。
アディスは微笑んで、
「君程の美しい女性はなかなかいない。私の方こそ、君のお眼鏡に叶いたいと思っているよ」
アディスの笑顔がとても綺麗だとその時感じた。
ああ、この人に気に入られたい。
この人に愛されたい。
そう、思えた。
それから何度かカフェの個室で会って、色々と話しをして。
会えば会う程、好きになっていく。
アディスは話題も豊富で、とても楽しくて。
「ここのアップルケーキは、リバル産のリンゴを使っているんだ。ちょっと酸味があって、サクサクして美味しいだろう」
「詳しいのですね」
「口に入れる物の産地位、知っておかないとね。私はロイド公爵家の息子だから」
美味しい。アップルパイの酸味がとても効いていて。
アディスと共に食べるとさらにアップルパイが美味しく感じた。
彼と会うと時間が過ぎるのが早くて早くて。
もっと一緒にいたいのに。
別れ際、アディスが手を差し出して、席から立たせてくれて。
「また、会いたい。次に会うのがとても楽しみだ。私はもっと君と時間を共にしたい」
「私もですわ」
腰を引き寄せられて唇にキスをされた。
胸がドキドキする。
とても幸せだった。
とある日、学園の教室で、
フェレイラがもじもじしながら、
「アディス様と上手くいっているの?」
と聞いてきたので、
「貴方のお陰で知り合えて上手く行っているわ」
「ああ、良かった。わ、私でも役に立ったのね」
そう言ってフェレイラがカバンに着けた花のキーホルダーをぎゅっと握り締めて、嬉しそうに微笑んで。
大嫌いだったフェレイラ。
でも、こうして喜んでくれるだなんて。ちょっとフェレイラの事が好きになった。
お揃いの花のキーホルダー。その桃色のキーホルダーの花がキラキラと輝いた気がした。
順調に交際を重ね、婚約も結んで、ロイド公爵家に出入りするようになったジュリアーナ。
アディスの両親、ロイド公爵夫妻もジュリアーナの事を気に入ってくれて。
「何か不便があったら言ってくれたまえ」
「そうよ。言って頂戴。わたくしが色々と教えてあげるわ」
とてもいいご夫妻で。
この公爵家に嫁ぐのが今から楽しみで楽しみで仕方がない。
アディスともっともっと一緒にいたい。
その気持ちが強くなって。
それでも、結婚前に淫らな関係になるのは、嫌だった。
アディスが、
「私は我慢できない。ジュリアーナの事がもっと知りたい」
と、熱烈にそう言って、口づけをしてきたけれども、ジュリアーナは、
「まだ王立学園を卒業していないのです。私は、結婚式が終わるまでそういう関係にはなりたくありませんわ」
ときっぱりはねのけた。
流されたくなる。愛しているから。
でも、ここはしっかりしないといけないわね。
私は王立学園を卒業したいから。
結婚前に子が出来たなんて、はしたない事はしたくないから。
だから、突っぱねた。
アディスは不満そうに、
「ああ、早く君と結婚したい。早く君とひとつになりたいよ」
と、諦めきれないように、熱烈に言って抱き締めてくれた。
嬉しかったけれども、結婚式までの我慢と、自分自身にジュリアーナは言い聞かせた。
無事に王立学園を卒業した。
大勢の貴族達を招待して結婚式を行った。
真っ白なウエディングドレスを着て、アディスと共に皆に手を振る。
誇らしかった。幸せだった。
ロイド公爵家で暮らし始めた。
一月過ぎた頃、アディスとロイド公爵夫妻に呼ばれて、
アディスが、
「フェレイラ・ベルデ伯爵令嬢の事を知っているだろう。君と親しかったはずだ」
「ええ、知っておりますわ。でも、身体を壊したとかで、卒業式には出ませんでしたわ」
そう、フェレイラは半年前から王立学園にこなくなった。心配してベルデ伯爵に問い合わせたけれども、具合が悪くて学園に行けないと詳しい事は教えて貰えなかった。
結婚式にも出席してくれなかったのだ。
あれだけ付き合いが深かったフェレイラ。
いつも傍にいて一緒に勉強して。
入学して二年半。相変わらず、気が弱くて、ジュリアーナに頼っていたけれども。
だから婚約者も見つからなくて。
フェレイラは言っていたのだ。
「私はこの通り、冴えない容姿で気が弱くて、婚約者を見つけるのは無理でしょう。領地で弟に頼み込んで、傍で働かせて貰おうと思って。それが私のふさわしい生き方だわ」
諦めたようにそう言っていた。
ジュリアーナはフェレイラに、
「卒業したら、ご両親に頼みなさい。学園で無理なら、ご両親に縁を探して貰うしかないわ。貴方、とても努力家でいい人なのに、男性達は見る目が無いわね」
そう慰めておいた。
男子生徒は恋愛において、美しさと話をしてみて気が合うかどうかで決める傾向がある。
フェレイラは気が弱くて、異性の前だと特に話をすることすら、出来ないのだ。
心配だったが、どうすることも出来なくて。
アディスは平然とジュリアーナに、
「フェレイラ、彼女に子が出来た。だから、愛人として離れに迎える」
「フェレイラ?貴方、フェレイラと関係があったの?」
「ああ、あまり冴えない令嬢だが、気まぐれに手をつけたら、子が出来てしまった。仕方ない。だから愛人に迎える事にしたんだ」
ロイド公爵夫妻も、
「子が出来たのなら仕方が無い。耐えて欲しい」
「そうね。子が出来たのなら、愛人に迎えるしかないわ」
フェレイラに裏切られた。
フェレイラに……
あまりのショックに部屋に戻ってベッドで泣き崩れる。
二人の友情の証だった桃色の花のキーホルダーを床に投げつけた。
キーホルダーは部屋の隅にはじけ飛んで壁にぶつかって。
フェレイラが愛人?
フェレイラが。
悲しいっ。酷いっ。
貴方が私を裏切るだなんて。
翌日、庭をアディスと共に歩くお腹の大きいフェレイラを見かけた。
ジュリアーナは庭に飛び出て、フェレイラに向かって叫ぶ。
「貴方、酷いじゃないっ。私を裏切っていたのねっ。酷い酷い酷いっ。私がアディス様を愛しているのを知っている癖にっ。子を作っただなんてっ。なんて酷いっ」
掴みかかろうとした。
フェレイラが跪いたのだ。
そして泣きながら。
「ごめんなさい。私っ……」
アディスがフェレイラを庇うように、
「お腹の子に何かあったらどうするんだ?ジュリアーナ。子が生まれたらジュリアーナの子として育てる。フェレイラに危害を加えたら騎士団へ突き出す。いいな?ジュリアーナ」
アディス様を愛しているの。
貴方の子を産むのは私だけのはず。
それなのにフェレイラ???
フェレイラ。フェレイラっ。フェレイラっーーーーーー!
気が狂いそうだった。
あまりの悲しみにジュリアーナは翌日から寝込んだ。
アディスは見舞いにも来てくれない。
窓の外を見れば、アディスが付き添ってフェレイラと共に散歩をしている。
綺麗な庭の花をアディスがフェレイラに差し出して。
あの愛情を受けるのは私だけのはずよ。
何故?どうして?なんで?よりによってフェレイラなの?
食事も喉を通らなくなった。
アディスが様子を見に来て、
「機嫌を直してくれ。君が一番に決まっているだろう。だが、子が出来た以上、母親は大事にしてやらないと。我が公爵家の跡継ぎになるかもしれない」
「跡継ぎ?愛人の子が跡継ぎになるのっ。私の子が跡継ぎに決まっているでしょう」
「君に子が出来なかったら、フェレイラの子が男の子だったら跡継ぎにしようと思っている。フェレイラが産んだ子を教育して欲しい。愛情を持って育ててくれ。私の子だ。私のっ」
何て残酷な事を言うのだろう。
私の子だから育てろと?でも、私、ジュリアーナが産んだ子じゃないわ。あの女が産んだ子よ。
泣きながら一人ベッドで寝ていると、朝方、コンコンと控えめにノックをする音が聞こえてきた。
ドアを開けてフェレイラが部屋に入って来た。
「起きている?ジュリアーナ。わ、私っ」
「起きているわ。なんの用よ」
フェレイラは泣きながら、
「言えなくて。貴方が用があるからって教室に来て欲しいって呼び出されて、アディス様がいて、教室で。抵抗出来なかった。怖くて怖くて……貴方に言えなくて。子が出来たって言えなくて。ずっとずっと貴方に言えなくて。わ、私、貴方を不幸にしたくなかった。貴方がアディス様を愛しているってずっとずっと言っていたから。でも、子が出来てしまって。ごめんなさい。愛人になってしまってごめんなさい」
そう言ってフェレイラは泣き崩れた。
ジュリアーナはベッドから身を起こして、慌ててフェレイラに近づいてその背をそっと撫でて、
「貴方が悪いんじゃない。悪いのはアディス様よ。ねぇ。私ね。貴方と過ごした学園での日々、とても楽しかったの。貴方と買い物したり、色々とお話したり。だから貴方が学園に来なくなって寂しかった。アディス様の愛人になったって聞いた時に、貴方の事が、にくたらしくて、殺したい程に憎くて憎くて。でも、貴方が本意でやったことではないのね。貴方はいつも私の事を応援してくれた。アディス様への愛を応援してくれていたわ」
「わ、私、ジュリアーナには幸せになって欲しかったから。私のたった一人のお友達ですもの」
フェレイラを抱き締めた。
「そうね。お友達ですものね」
アディスの事は愛している。
フェレイラが愛人になった事、いまだにモヤモヤしている。
でも、それでも、フェレイラは大事なお友達。
いつでも私の事を思っていてくれたわ。
フェレイラのお腹を撫でて、
「産まれてきた子は私が育てるわ。しっかりとこの公爵家の子としてふさわしいように」
「ええ、ジュリアーナ。この子を頼みます。お願いだから、この子の将来の為に」
「約束するわ。例え、私に子が出来てもこの子の将来はしっかりと私が面倒を見ます」
床に落ちていた花のキーホルダーを拾ってきて、フェレイラの手に握らせた。
「貴方は大事な友人ですもの。約束したわよ」
フェレイラは涙を流して、頷き、そのキーホルダーをぎゅっと握り締めた。
二月後、子が生まれた。
男の子だった。
フェレイラは子が生まれて動けるようになったらすぐに姿を消してしまった。
― 子供を頼みます ―
それだけの置手紙を残して。
子はジュリアーナが育てる事になった。
あれだけ愛していたアディスに対しては愛を感じなくなった。
アディスと褥を共にしても、心がときめかない。
でも、ロイド公爵家に嫁いで来たから義務として、褥を共にする。
アディスは褥を共にした夜、ぽつりと、
「君はもう私を愛してくれないんだな」
ジュリアーナは身支度を整えながら、
「子を他の女と作ったら如何。私が育てて差し上げますわ」
アディスは苦笑いして、
「学生の頃の遊びだろう。大目に見て欲しい」
「その遊びのせいで、私の親友が傷付いたのです。そして私も」
「カイドは順調に育っているな。感謝している」
カイドはフェレイラが産んだ息子だ。
まだ1歳だが、とても元気ですくすくと育っている。
アディスは他に女を作らなかった。
ジュリアーナだけを愛して、昔のように愛を囁いて、ずっとずっと囁いて。
でも、ジュリアーナの心は傷ついたままで。
ただただ、カイドを公爵家の令息として恥ずかしくないように必死に教育し育てた。
子は結局、カイド以外に出来なくて、カイドが10歳になった時、ベルデ伯爵家に戻って弟の手伝いをしていたフェレイラに会わせた。
フェレイラはカイドに会ったが、母とは名乗らず。
「遠い日にお坊ちゃまをお見掛けして、ああ、懐かしくて懐かしくて。大きくなったのですね」
そう言って涙した。
会わせて良かったとジュリアーナは思った。
ジュリアーナはフェレイラと二人で、あの後、お茶をした。
ベルデ伯爵家のテラスで。
カイドは元気に庭で、伯爵家の使用人達に見守られながら遊んでいる。
フェレイラは桃色の花のキーホルダーを返してきた。
「私は一つ持っておりますから。ジュリアーナ様にお返し致します」
桃色の花のキーホルダーを握り締める。
幸せとは言えない生活。
心に負った傷は消えはしない。
それでも、こうして親友とお茶を飲める日が来るなんて。
何とも言えない気持ちで晴れた秋の空を見上げるジュリアーナであった。




