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(中身アラフィフ、外見7歳、もうすぐ8歳になる予定)
ノートを作り終えたあと、ふと考えた。
(他にも、便利グッズってあるのかな?)
前世では、文房具も家電も、便利な道具に囲まれていた。 スマホ、パソコン、電卓、電子レンジ、洗濯機。 ボタンひとつで何でもできる時代だった。
でも、この世界には――電気がない。 スマホも、パソコンも、もちろん電卓も存在しない。
(じゃあ、電気がなくても使える“便利”って、何だろう?)
そう考えて、私は“計算”に目を向けた。 税、商取引、領地管理――数字は、暮らしの土台だ。
ある日、父が重たい黒板のようなものを持ち歩いて、計算しているのを見たとき、思わず心の中で叫んだ。
(タブレットより重いものを毎日持ち歩いてるの…?肩こり待ったなしじゃないの)
その衝撃が、私の中の“発明魂”に火をつけた。
「これ、動力がいらない“計算機”みたいなものです」
そう言って、私は“そろばん”を差し出した。 木の枠に珠を通し、指で弾くだけで計算ができる道具。
街の木工所に行って、地面に棒で絵を描きながら、必死に説明した。 最初はうまく伝わらなかったけれど、親方が興味を持ってくれて、試作を始めてくれた。
でも、最初にできたのは、珠が動かない“なんちゃってそろばん”。 (いや、ただの木の板にビーズ貼っただけ…!)
それでも、諦めなかった。 子供の私は、親方のもとに何度も通えないから、何度も地面に絵を描いて、何度もお願いして――
そして1週間後、ついに本物のそろばんが完成した。
(本当に親方には感謝しかない。子供の拙い絵を見て、見たこともないものを形にしてくれた。さすが職人さんだわ。前世のブラック企業の上司とは大違い)
私は、親方にそろばんの使い方を教えながら、一つプレゼントすることにした。
父も家令も、最初は首をかしげていた。 でも、使い方を教えると、目を輝かせてこう言った。
「これは…すごいな。指で弾くだけで、計算ができるのか!」
父はすぐに文官仲間に紹介し、なんと特許申請まで済ませていた。
(さすが…父。文官だけあって、抜け目ない。転生しても“仕事できる系男子”は健在)
そろばんは王宮で採用され、父は出世。我が家の名声も高まった。 でも――私は、それだけでは満足できなかった。
「領民にも、できれば無償配る、もしくは安い金額で購入できるようにしてほしい」
私は父に願い出た。 税の計算や支払いに不安を抱える人たちのために。 商人から広めて、平民向けの学校を作りたいと伝えた。
『領民が数字に強くなれば、他人に搾取されることもなくなる』
そうして、“そろばん教室”が誕生した。
子供たちは楽しそうに珠を弾き、 平民の大人たちは、文字と数字を学び始めた。 それは、彼らの未来を守る第一歩だった。
前世の私は、何かを学ぼうなんて気力も体力もなかった。 介護と仕事に追われる毎日。 便利な道具はあっても、誰も私を助けてはくれなかった。
(私は、ただ日々を“こなす”だけの人生だった)
でも――今は違う。
この世界では、私の知識が、誰かの役に立つ。 私の工夫が、誰かの生活を変える。 私の言葉が、誰かの未来を守る。
(私は“誰かの犠牲”じゃなく、“誰かの支え”になれる)
それが、私の“居場所”。
そして、きっと――私がこの世界に転生した意味なのだと思う。 誰かが、私を気にかけてくれる。 誰かが、私の知識を必要としてくれる。 誰かが、私の存在を“ありがたい”と思ってくれる。
(前世では、誰にも頼れなかった。甘えることもできなかった。そして、誰にも褒められなかった)
でも今は――
私は、ここにいていい。
――「私はもう、“ただこなす”だけの人生じゃない」
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