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(中身アラフィフ、外見7歳)
(今度こそ、誰かの犠牲になる人生じゃなくて、“私の人生”を生きてみたい)
そう強く願った瞬間、胸の奥に灯った小さな炎。 それは、前世で何度も後悔した“記録”への渇望だった。
誰が何を言ったか。 誰が何をしてくれたか。 自分が何を感じたか。
全部、書き残しておきたい。忘れないように。失わないように。
けれど――
「ノートが、ない?」
この世界には紙はあるようだ。 けれど、日記帳のようなものは見当たらない。 使用人がいうにはインクもあるが、大変高価で、子供が自由に使えるものではなかった。
(記録したいのに、記録できない。…なんて、もどかしいの)
(いやいや、アラフィフの記憶力なめんなよ。 昨日の晩ごはんすら怪しいのに、人生の転機を“頭の中に刻む”とか無理ゲーでしょ。)
それでも、私は諦めなかった。
せめて、頭の中にでも刻んでおこう。 この優しさを、この違和感を、この決意を。
(な~んて、絶対に忘れる…。でも、待って。よくある転生もので、現代にあるものを作れば世界が変わるっていう展開、あったような気がする…?よね)
ノートなんて、事務員として働いていた私からすれば造作もない。 紙を切って、糊をつけて、表紙をつけるだけ。 製本なんて、手作業で十分できる。
(ええい、やってやろうじゃないの。アラフィフの手仕事、舐めんなよ)
父に尋ねると、紙はあった。 粗い“紙”だったが、インクでの記録は可能だった。
(子供が使っていいインクは、家にあるかしら?伯爵家だし、そこそこお金はありそうだし?なかったら作る?えーインクってどうするの?)
私はノートはできてもインクが作れるような知識はなかったため、父の書斎に再び向かい尋ねた。
「お父様、質の悪いものでいいから…何か書けるものをお願いできないでしょうか?」
そう頼むと、父は少し驚いた顔をしながらも、快くインクを用意してくれた。 王宮文官の家系だけあって、インクは潤沢にある。 けれど、無駄遣いは禁物だと、きっちり釘を刺された。
(はいはい、節約ね。前世でも“経費削減”って言われ続けてたから慣れてます)
私は、紙を数枚切りそろえ、端を糊で留め、厚紙で表紙をつけた。 糊は台所にあった穀物粉と水を煮詰めて自作。表紙は古い布を貼って補強した。
(手作り感満載だけど、これが私の第一歩よ)
見た目は不格好。 けれど、ページをめくるたびに、心が少しずつ整っていく気がした。
(よし、まずは“この世界で婚約とか言い出した両親にビビった記録”から書こうかしら?)
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