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医師の診断によれば、私は“頭を打ったショックで記憶が混乱している”とのこと。
(つまり、私はこの世界の“令嬢”でありながら、前世の記憶だけを持っている状態らしい。だけど誰にも言えない…。)
数日後、私はこの家――王宮文官を代々務めるアルフォート伯爵家の一人娘であり、跡取りであることを教えられた。 両親は高位貴族で、将来的には婿養子を迎える予定だという。
「セレナお嬢様は、我が家の誇りです。お体が治られましたら、きっと旦那様と奥様が良縁を見つけてきてくれますよ…」
(え、良縁? 婚約ってこと?いやいや、私は中身アラフィフなんですけど!?)
思わず心の中で叫んだ。いや、叫ばずにはいられなかった。
(転生したら…婚約なんて、よくある話だとは思うけど…年齢差がえげつなくない? 自分の子供でもおかしくない年齢の子供と結婚するの?それって…ロリコンというのでは?)
この世界では、貴族の婚約は家同士の結びつき。年齢差なんて、たいして気にされないかもしれない。 でも、私は気になる…というか、気にしない方がおかしい。
(中身アラフィフのおばちゃんが、10歳前後の子供と婚約って…倫理どこ行った?)
もちろん、誰も私の中身年齢を知らないのだから悪気があるわけじゃない。両親も、使用人も、私をセレナとして大切に扱ってくれる。 朝はメイドが髪を梳かしてくれ、食事の時間には両親が私の好みを気にかけてくれる。
(誰かに世話を焼かれるって…こんなに、あったかいんだ)
前世では、誰にも頼れなかった。
介護も、仕事も、家事も、全部ひとりで背負っていた。
「独身だから」
「女だから」
「下っ端だから」
――そんな言葉で、何もかも押し付けられていた。
(だからこそ、今のこの皆の優しさが、胸にしみる)
でも、だからといって家のためとは言え“婚約”は別だ。 私は、誰かの妻になるために転生したわけじゃない。 この世界で、誰かの犠牲になる人生を、もう一度繰り返すつもりはない。
祖父が言ってくれた「生きる意味」。 それは、誰かのために尽くすだけの人生じゃない。 自分の意思で、自分の足で、自分の幸せを掴む人生を送らせたいと思ってくれたのではないか?
(今度こそ、“私の人生”を生きてみせる!)
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