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「…ここは、どこ?」
ぼんやりと目を開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは、見慣れない天井だった。 繊細なレースが揺れる天蓋付きのベッド。ふかふかの枕とシーツ。 そして、部屋の隅には、まるでメイドカフェの衣装のような服を着た女性が立っていた。
「お嬢様…目が覚められましたか?」
優しく、けれどどこか緊張した面持ちで声をかけてくるその女性に、私は戸惑いながらも小さく頷いた。
(お嬢様? 私が? アラフィフの独身女が?)
体を起こそうとした瞬間、違和感が全身を走る。 手が…小さい。足も短い。体が軽すぎる。 慌てて鏡を探し、視線を向けると
――そこには、子供らしいぽっちゃりとした7歳くらいの少女が映っていた。
「…これが、私?」
美人でもなく、ぶ◯いくでもない。 どこにでもいそうな、可愛らしい普通の子供。むしろ前世で言ったら"可愛い。写真映えする"といわれる部類だと思う。
けれど、その瞳には、明らかに“年齢不相応な光”が宿っていた。
「セレナお嬢様、体調はいかがですか?」
「セレナお嬢様?」
「お名前は…覚えていらっしゃいますか?」
メイドらしき女性が心配そうに問いかけてくる。 言われた名前、セレナは、全く聞き覚えのないものだった。
(……誰その名前?私のこと?じゃあ、典子は……)
どうやら、典子だった私はこの世界の“誰か=セレナ”として生まれ変わったらしい。
いわゆる――転生、というやつだ。
(これが…転生? 2度目の人生?それとも最近巷で騒がれてる、異世界転生?もしそうだとしても、ゲームもほとんどやったことがないし、小説もほぼ読んだことない…。そんな時間なかったもの。設定なんてわからない)
混乱する頭を抱えていると、部屋の扉が『バ~ン』と勢いよく開き、美男美女の夫婦が駆け込んできた。 その瞬間、ふたりは私を抱きしめ、涙を流した。
「よかった…目を覚ましてくれて…!」
「もう二度と、あんなことが起きませんように…」
「大丈夫か!どこか痛いか?」
(誰? この人たち…でも、あったかい…。大丈夫?って私のこと心配してくれてるの?前の世界では聞けなかった言葉だわ)
その言葉と彼らの体温の温もりに、思わず胸がぎゅっと締めつけられる。自然と涙が溢れてきた。
前世では、誰かにこんなふうに誰かに抱きしめられて、心配されたことなんて、この最近あっただろうか?
誰かに「生きていてくれてよかった」と言われたことなんてなかった。
そして、ふと祖父の言葉がよみがえる。
「お前には、まだ生きる意味がある」
あの川の向こうで、祖父は私を見つめていた。 そして私から遠ざかりながら、生前と変わらない優しい笑顔で、静かに手を振っていた。あれは『バイバイ』ではなく、『頑張れ〜!』 という意味だったのかもしれない。きっと祖父が、私を“こちら側”へ導いてくれたのだろう。 もう一度、“私の自身の人生”を生きるために。
誰かののために犠牲になる人生なんて、もう二度とごめんだ。 この小さな手で、今度こそ、自分の未来を掴んでみせる。
少女の瞳に、確かに生きる力が宿った。 それは、長い闇の中でようやく見つけた――自分だけの希望だった。
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