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(中身アラフィフ、外見15歳)
この世界がミレーヌを中心に回っているのは、もはや疑いようがない。
王宮も、学園も、神殿も。彼女が微笑めば空気が変わり、囁けば心が揺れる。
(ええ、まるで“乙女ゲームのヒロイン”。ただし、選択肢は全部“ミレーヌを褒める”一択。バッドエンド? そんなの存在しません)
作者は、ミレーヌだけが幸せになるように世界を設計していて、巻き込まれた人々の心情なんて、まるで考えていないに違いない。
(前世での私は、こういう自己中な人間にいやというほど仕事を押し付けられた。“できる人に任せる”って言いながら、責任は取らないタイプ)
◆◆◆物語◆◆◆(※セレナ目線的要約)
ミレーヌは、貧しい村で育った平民。ある日突然「聖女の印」が出て、神殿に召し上げられ、子爵家の養女に。 王宮に招かれた彼女は、レオン王子とイザベラの婚約発表のお茶会で、レオンの心をかっさらう。
(え、婚約発表の場で? それ、もはや“略奪イベント”じゃない?)
彼女の言葉には不思議な力があり、手相を見れば未来がわかるらしい。
侍女たちは彼女を崇め、王様は「国の希望」と呼び、レオンはもちろん、カイルもグレイも、ミレーヌに夢中。
(全員、恋愛脳に感染中。ワクチンはどこ?)
学園は、平民上がりの聖女と王子の“身分差カップル”を全力応援。
一方、イザベラは“嫉妬に狂った悪役令嬢”として描かれ、取り巻きに嫌がらせを命じたとされる。
(でも実際は、命じてない。証拠もない。なのに“未来が見える”ミレーヌの一言で有罪確定。裁判どこ行った)
決定打は、ミレーヌが階段から落ちた事件。 レオンが駆けつけ、グレイが“逃げるイザベラ”を目撃。
(それ、証拠としては“目撃証言だけ”ってやつじゃない? しかもグレイ、ミレーヌに夢中だったよね?)
そして、卒業パーティーでイザベラの悪事が暴かれ、婚約破棄。 平民に落とされ、国外追放。断罪。
ミレーヌはレオンと結婚し、逆ハーレムで幸せに暮らしましたとさ。
――それが、この世界の“表向きの物語”。
◆◆◆
でも私は知っている。これは“物語”じゃない、“私たちはこの世界で生きている”。
私はこの物語の内容は知らない。 けれど、レオンとイザベラの婚約を祝うお茶会が、きっとこの茶番の始まりだったのだろう。
もしかしたら、私――セレナの存在のせいで、この“ミレーヌのためにあつらえた舞台”がバグっているのかもしれない。
(転生者が現れたら、話は違う方向に進む。ええ、モブですが、私がその転生者です)
イザベラは、きっと“悪役令嬢”の立場だったのだろう。 でも、彼女の人となりは真逆。私の大事な女友達だ。
リュシアンに至っては、存在そのものが“攻略対象”になりそうなのに、ここまでミレーヌと直接的な関わり一切がないのも謎。
(普通、転生ヒロインなら真っ先に攻略しに行くでしょ? リュシアン、イケメンで頭脳派で優しいのに、スルー? やはりバグってる?)
ミレーヌは、転生者ではないだろう。 もしそうなら、もっと“転生者ムーブ”を起こしてくるはずだ。
けれど、“ヒロイン”として振る舞い、周囲の反応に合わせて“聖女らしく”振る舞い続けている彼女は、何者なのか?
まるで、誰かが彼女に“役割”を与え、世界がそれに従って動いているような違和感。
(ええ、まるで“台本通りに動くNPC”。でも私は知ってる。この物語自体、今、バグってる)
ミレーヌは、本物の聖女なのか? それとも、誰かが仕組んだ“幻想”なのか?
彼女自身が選ぶ運命は既定路線なのか? それとも、バグなのか?
そして私は、そのすべてを見て、記録する。
(この世界が、誰か一人の幸せだけで作られているなら――そんな世界、ないほうがいい)
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