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(中身アラフィフ、外見14歳)
学園では、ますますミレーヌが中心の世界が広がっていた。
レオンは彼女の隣にいる時間が増え、カイルとグレイも彼女の時間があれば、彼女と一緒に行動するようになっていた。
女生徒は、婚約者との関係に悩み、イザベラ不在時は、彼女の友人である私に相談を持ちかけてくる。
「彼が、ミレーヌ様の言葉に夢中で…」
「私と会おうとしないの…」
「婚約破棄の話まで出てるのよ…」
(ミレーヌ、笑顔で婚約者を持っていくスタイル、悪質すぎる。しかも“無自覚”を装ってるのが一番タチ悪い。恋愛泥棒に“聖女”の肩書きつけてる場合じゃない)
ー記録補足:通信状況と沈黙ー
・通信装置:録音機能付きペンダント。イザベラとの連携確立
・記録内容:ミレーヌの言動、魔力波形、精神干渉の兆候
・提出方法:魔力石板に転写、封印術式済み
・状況:イザベラが王妃に提出予定。連絡は彼女からのみ。こちらからの発信は封印
リュシアンは、次の装置の設計に取りかかっていた。
魔力の流れをリアルタイムで解析し、即座に記録する装置。
「セレナさん。次は、即時記録です。君の記録が、誰かを救うなら」
「ありがとう、リュシアン。あなたの魔法が、私の目となり助けてくれる」
「君の目は、誰よりも真実を見てる。だから、僕はそれを支えたい」
(その言葉、前世で一度でも聞けてたら、私の人生、もうちょっとマシだったかもね)
前世の私は、誰にも見られず、誰にも評価されず、ただ黙って働いていた。 誰かの“都合”で、誰かの“怠慢”で、私は犠牲になっていた。
けれど、誰もそれを見ていなかった。誰も、証言者として助けようとしなかった。
だから、今世では、私は記録する。
「この世界が、誰か一人の幸せのためだけに作られているなら、私はその“歪み”を見つけ、皆の人生が搾取されるだけの世界にならないようにしたい」
ペンを置いたとき、私は確かに“戦う覚悟”を持っていた。
そして、ペンダントにそっと触れた。
「イザベラ…あなたの声を、待ってる。記録は、あなたの言葉で完成する」
沈黙の中で、私は確かに“動いていた”。
◇◇◇
いつものように私は朝から落ち着かなかった。 ペンダント型通信装置は、胸元で静かに待機中。
イザベラからの連絡を待つだけの装置。
私からは発信できない。
(ええ、まるで“片思い専用スマホ”。送信ボタンは封印済み。恋愛なら即ブロック案件)
王宮の魔力網は複雑で、誰がどこで何を感知しているか分からない。
ミレーヌの“人心掌握スキル”は、もはや国家資格レベル。 婚約クラッシャーの手腕は殿堂入り。
そして、少しでも波風を立てれば、すぐに彼女に察知される。
(あの子、魔力で空気読んでくるからタチが悪い。こっちが息を吸っただけで「セレナさん、何か企んでます?」って言いそう)
だから私は、ただ待つしかなかった。
ノートを開いても、ペンが進まない。
記録者としての冷静さを保とうとしても、指先がわずかに震える。
リュシアンが隣で魔力石板の調整をしている音だけが、部屋の静けさを埋めていた。
「セレナさん、今日は…落ち着かないですね」
「うん。ごめん。イザベラからの連絡がなくて…」
「彼女なら、きっと連絡をくれますよ」
(信じてる。でも、怖い。イザベラに何かあったら?王宮で“聖女スマイル”に飲み込まれてたらどうしよう)
◇◇◇
午後、私は家の庭のベンチに座っていた。
風が髪を揺らし、木々のざわめきが耳に心地よい。けれど、心はざわめいていた。
そのときだった。ペンダントが、微かに震えた。
魔力の波が、胸元に届いた。私は、そっとペンダントに触れた。通信が、開かれた。
「セレナ…聞こえる?」
イザベラの声だった。
「聞こえる。無事なの?」
「ええ。今、王妃様に前にもらった記録をようやく渡せたわ。彼女は、すぐに再生して確認してくれた」
(王妃様、さすがです。再生ボタンを押すだけで“真実”を見抜く。うちの前世の上司なんて、PDF開くだけで「難しい」って言ってたのに。そして、コーヒー飲みながらExcel開くだけで「今日は頑張った」って言ってたのに)
「それで…反応は…どうだった?」
「驚いていた。でも、冷静だった。魔力波形と音声を聞いて、すぐに“精神干渉”だと判断したわ。神殿の報告とは違うって」
「それなら…動いてくれる?」
「慎重に、ね。王様は、依然としてミレーヌを信奉している。だから、王妃様はまず側近たちの動きを探るって」
(王様、完全に“聖女沼”に沈んでるわね。ミレーヌの「未来が輝いてます♡」に毎晩、お風呂のかわりに浸かってるんじゃない?)
「ありがとう、イザベラ。あなたが動いてくれたから、私の証拠が意味を持った」
「こちらこそ、ありがとう。そして、あなたを信じてる。だから、これからも連携していきましょう」
「でも、連絡は…」
「そう。私からだけ。あなたは、待ってて」
通信は、そこで途切れた。私は、ペンダントをそっと握りしめた。
風が、少しだけ暖かく感じられた。
ー記録補足:イザベラからの連絡
・通信:午後、魔力波受信。イザベラからの連絡
・内容:王妃に記録提出済み。精神干渉と認定
・状況:王妃、慎重に動き始める。王様は依然としてミレーヌを信奉
・今後:連絡はイザベラからのみ。こちらからの発信は封印継続
ペンを置いたとき、私は確かに“希望”を感じていた。
(この記録が、誰かを救う。誰かの未来を守る。ミレーヌの“未来が輝いてます♡”の裏にある“闇が濃いです…”を暴くために)
王妃は、証拠記録を受け取ったその夜、独り私室でもう一度、証拠を再生した。
録音記憶装置が捉えたミレーヌの言葉、そして魔力波形。音声には、確かに魔力が乗っていた。
ミレーヌがレオンに囁いた
『王としての器に満ちています』
その言葉に、魔力が揺れていた。
王妃は、静かに紅茶を口にしながら、窓の外を見つめていた。
「…これは、確かに精神干渉。報告と異なる。そして…危険」
◇◇◇
翌朝から、王宮の空気がわずかに変わり始めた。
王妃の信用できる侍女たちが、他の侍女たちの動きを観察開始。
•誰がミレーヌに接触しているか
•誰が手相を見てもらっているか
•誰が、彼女の言葉に影響されているか
王妃は、表向きは何も変わらない。
けれど、裏では静かに情報を集めていた。
(王妃様、表情は“優雅”、中身は“諜報機関”。このギャップ、推せる)
「ミレーヌ様に言われたんです。私の未来は、光に包まれているって」
「それを聞いてから、夜の不安が消えたんです」
「彼女の言葉って、魔法みたいですよね」
イザベラは、微笑みながら話を聞き、記録を続けた。
けれど、心の中では冷静に分析していた。
(これは、魔力による暗示。言葉で心を操る“聖女式洗脳”。しかも“キラキラ系”で包んでくるから厄介)
◆◆◆
「イザベラ、私はまずは王様の側近。彼らの動きを見極める。ミレーヌが、どこまで影響を及ぼしているか」
「王妃様、では王様は…どう?」
「彼は、完全に取り込まれている。だからこそ、慎重に動かなければならない」
王妃の目は、鋭く光っていた。
「私は、国を守るために王妃になった。だから、こういう“男をたぶらかす女”が、王宮の中枢に入り、国を惑わすことは許さない」
◆◆◆
私はイザベラからの連絡をまとめ上げた。
ー記録補足:王宮の動きー
・王妃:記録を確認後、側近たちの動きを調査開始
・イザベラ:侍女たちの証言を収集。魔力干渉の傾向を分析中
・対象:王宮内の“聖女影響圏”の特定と記録
・目的:王妃による極秘調査の補佐。記録の信憑性強化と証言の裏付け
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