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「…ああ、とうとう親より先に逝っちゃったか」
その言葉には、諦めと静かな覚悟が滲んでいた。 意識が薄れていく中、ふと目を開けると、川の向こうに懐かしい姿が見えた。 幼い頃、誰よりも自分を可愛がってくれた祖父。 優しい笑顔は昔のままで、胸が締め付けられるほど懐かしい。
思わず走り出す。
「おじいちゃん、待って!典子だよ」
だが祖父は、手を振りながら遠ざかっていく。 近づこうとするたびに、距離は開いていく。 まるで、今の私にはまだその場所に行く資格がないかのように。
「行っちゃダメ…お願い、もう少しだけ…」
その声に、祖父はふと立ち止まり、静かに言った。
「お前には、まだ生きる意味がある。だから――」
その瞬間、視界が暗転した。
次に目を覚ましたとき、そこは見慣れない天井のある部屋だった。 「お嬢様…目が覚められましたか?」 メイドのような衣装を着た女性が、心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「え…ここ、病院じゃないの?」
豪華な天蓋付きのベッド。レースのカーテン。 見知らぬ名前で呼ばれ、聴診器を当てられて体調を尋ねられる。
「お嬢様、気分はいかがですか?お名前は…覚えていらっしゃいますか?」
言われた名前に、まったく聞き覚えがない。 鏡を見れば、そこに映るのはぽっちゃりした7歳くらいの少女。
「…これが、私? 美人でもないけど、ぶ◯いくでもない。普通…いや、なんで子供?」
どうやら、異世界に転生したらしい。 けれど、ゲームも小説も読んだことがない私には、何が何だかわからない。
「これが…今流行りの“転生”ってやつなの?」
戸惑いながらも、祖父の言葉が胸に残っていた。
「お前には、まだ生きる意味がある」
もしかしたら、祖父は私を“こちら側”へ導いてくれたのかもしれない。 あの川の向こうから、手を伸ばして。
(今度こそ、誰かの犠牲になる人生じゃなくて、“私の人生”を生きてみたい)
少女の身体をした、50歳の私の心に希望の光が灯った。
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