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(中身アラフィフ、外見14歳)
誰もいない午後の図書室。
静寂に包まれた空間で、私は黙々と資料を探していた。 そこへ、靴音を響かせて現れたのは
――ミレーヌ。靴音だけは一流。
中身は“恋愛テンプレート詰め合わせ福袋”。しかも賞味期限+ボキャブラリー切れ。
「セレナ様、最近何か…いろいろと…調べていらっしゃるようですね」
(出た、“探り入れてるでしょ”系のほのめかし。前世でもいたわ、こういう“牽制”女。だいたい昼休みに近づいてきて、コーヒー片手に“最近色々とお忙しそうですね”って言いながら、裏で探りを入れ、根回ししてるタイプ)
ミレーヌは机の端に手を添え、例の“聖女スマイル”を浮かべる。
(その笑顔、たぶん鏡の前で100回どころか、300回は練習してるでしょう。あらゆる角度で)
「昨日はエドワルド様とカフェに行ったんです。次回のお茶会用のドレスも新調してもらって…」
(その情報、私の人生における“無関係ランキング”堂々の1位よ。カフェ? ドレス? こっちは魔力波形と婚約破棄の統計とってるのよ。話のジャンルが違いすぎて、もはや別の惑星)
「あっ、招待状、セレナ様には届いてなかったですか?」
「あっ、ごめんなさい。婚約者の方を差し置いてこんな話をするなんて…気分悪いですよね?」
(その話、1ミリも興味ないってすごい。ほめてないけど。ていうか、“ごめんなさい”って言いながら、顔が“勝ち誇り”なのよ。謝罪の皮をかぶったマウント、あからさますぎて逆に清々しい)
正直、二人がデートしようが、月に移住しようが、どうでもいい。
でもやるなら、徹底的に私の目の前でラブラブしてほしい。証拠集めのためにね。
(ええ、興味ゼロの恋愛劇場を最前列で観るのは苦行だけど、そこはプロ根性で乗り切るわ )
私は観察者。記録魔。恋愛茶番劇の実況中継担当。
「セレナ様、知ってました?エドワルド様って、甘いものがお好きで…私が選んだケーキを“運命の味”って言ってくださって♡」
(エドワルドの好きなもの知る気もないわ。それに運命の味って何よ。こっちは“糖質”と“賞味期限”しか気にしてないわよ。ていうか、運命ってそんなに軽々とケーキに宿るの? だったら私、前世のコンビニスイーツで何回も感じてるわ)
私は微笑みを崩さず、こう言った。
「ミレーヌ様とエドワルド様の関係がますます順調で何よりです」
(どうでもいい話で話しかけるの、罰金制にしたい。一言100Gで徴収したら、学園の図書室に最新設備導入明日にでもできる。そもそもあなたの“報告”って、もはや雑音超えて騒音。静寂の図書室に響く“自己陶酔”の音、うるさいったらない)
◇◇◇
久々に登校したイザベラを見かけ、声をかける。
制服の襟元を整えながら、彼女は微笑んだ。
その微笑みは、気品と覚悟のミックス。まさに“王妃候補の顔”。
「記録、また見せてもらえる?」
私は迷わずノートを差し出す。
魔力反応の数値ページで、彼女の指が止まる。
「…これ、すごいわね。波形まで測ってるなんて」
「リュシアンの技術よ。彼の魔法使いとしての腕は本物」
「王妃様も彼女を警戒してる。でも王様とレオン、そして、王様の側近や神殿は好意的。動くには、確実な証拠が必要よ」
「じゃあ、このまとめたノートを“第三者の記録”として王妃様に提出してくれない?」
ノートを受け取るイザベラの手が、微かに震えていた。
(ああ、その震え、知ってる。前世でも見たわよ。責任と不安がタッグ組んで、心の中で“どうしよう”って鐘が鳴り始めたとき、人ってああやって静かに震えるのよね。ちなみにその後、私は胃薬探し始める。しかもポーチの奥から“効き目強め”のやつ)
◇◇◇
リュシアンの家へ行くと、地下室には魔力検知装置の改良版がズラリ。
見た目は完全に“理系男子の夢の城”。配線の美しさにすら哲学を感じる。
「これが完成すれば、魔力の“性質”まで判別できます」
「魅了系か、精神干渉か、もっと特殊なものか」
「でも、長時間の反応を取らないといけないです」
「それなら、私がやる。接触の機会はあるし」
「セレナさんに、危険が伴います」
「でも、前世でこういう態度を取る女に何度も会ってるし、免疫あるからきっと大丈夫よ」
(ハイテク能力はないけど、人生経験だけはフル装備よ。魅了系? 精神干渉? そんなの職場の昼休みに何度も浴びてきたわ。耐性? “魔力耐性+50”の称号持ってるから。しかも“マウント耐性”もセットで付いてる)
ー作戦概要:仮面崩壊計画ー
・ミレーヌが男性接触時、何かをするタイミングを見極める
・魔力検知装置で波形を記録
・イザベラが王妃にまとめた記録を提出
・王妃が動けば、王宮の空気が変わる(ただしタイミングを誤ると危うい)
「これは成功すれば、仮面が崩れる。失敗すれば、セレナさんが危険に晒されます」
「それでも、やる価値はある。私は、もう黙って見ているだけの“私”じゃない」
(前世ではね、黙って耐えて、泣き寝入りして、枕に顔うずめて「人生って何よ」ってつぶやいてたわ。でも今は違うの。仲間がいる。証拠もある。助けもある。あと、人生経験、すべての感情カンスト済み)
ー記録補足:ミレーヌの影響と婚約破棄傾向ー
・婚約破棄件数:学園内で5件以上確認
・接触後の変化:男子の態度が急変、婚約者への関心が希薄に
・自身の婚約:継続中。エドワルドからの手紙と花束あり(特許利益の配分について記載)
・エドワルドとのお茶会:自然消滅(もはや“幽霊イベント”)
・両親の反応:沈黙。高位貴族への配慮か、言葉は控えめ
・王宮の情報:ミレーヌに好意的な評価多数。情報源は男性中心
(つまり“ミレーヌの魔力にやられた人々”)
リュシアンの解析結果によると、ミレーヌの力は――
「魅了系に近い。でも、もっと深い。感情じゃなくて、価値観そのものに触れてるような波形」
「それって…人格そのものを揺さぶるってこと?」
「でも、今のところ、セレナさんはまだ影響されていません」
「前世で、こういう女に何度も会ってるからね。免疫があるからかも?」
「セレナさんの“おばちゃんの時の経験”って、すごいですね」
「でしょ? 伊達に二度目の人生やってないわよ。」
(“恋愛マウント女”の攻略法なら、前世で何十パターンも見てきたから。ミレーヌなんて、まだ“初級編”よ。演技力はあるけど、台詞がワンパターン。“未来が輝いてます♡”って、何回言えば気が済むのよ。語彙力、どこに置いてきた)
ー記録補足:新たなポイントー
・ミレーヌの魔力は、魅了系を超えた“価値観操作型”の可能性あり
・対象は男子中心。女子には違和感を与えるが、影響は限定的
・魔力反応は接触時に急上昇。波形は“感情”ではなく“思考”に干渉している兆候あり
そして、ペンを置いた。
(次に崩れるのは、誰かしら。エドワルド? レオン? それとも、ミレーヌの“聖女スマイル”?)
私は、静かにノートを閉じた。 記録は、まだ終わらない。
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