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(中身アラフィフ、外見13歳)
春の新学期が始まってから数週間。
ミレーヌの存在は、学園の空気を確実に変えていた。
彼女の周囲には常に人が集まり、特に男子たちは彼女の一挙手一投足に過剰な反応を見せていた。
だが、私の目にはそれが“聖女の力”というより、“怪しい新興宗教”と“人心掌握術”の賜物にしか見えなかった。
(完全に“教祖様”じゃない?)
ミレーヌの行動は、前世で何度も見た“合コンや婚活パーティーの勝者”たちのそれだった。
手を握り「私、手相見えるんです」と囁き、後日、出会った際には〇〇さんのこと、今朝、夢で見ちゃいましたと甘く語る。
曖昧で、根拠のない言葉ほど、男子の心をくすぐるのだ。
しかも、彼女はそれを“聖女”という肩書きで正当化している。
(手相と夢でここまで宗教作れるレベルなんて、ある意味才能≒褒めてない)
そして、エドワルド。
彼は、私に対しては冷たく、ミレーヌには甘い。
私の発明には「へー」としか言わないくせに、ミレーヌには「君の発想はいつも僕を幸せにする。」とまで言っていた。
幸せ??発想だけで幸せになるならば、わが家の発明品のリストで幸せ感じなさいよ。
私は、色々と心の中で、一人悪態つきながらも、冷静に記録を続けている。全くと言っていいほど、嫉妬心はない。
これは“観察”であり、“分析”だ。
ミレーヌの行動の意図を見つけるため。
そして、彼女が“聖女”であることを利用して、周囲の男子を掌握していく様子は、シナリオがある舞台のよう。
ー観察日記:ミレーヌとエドワルドの記録ー
•4月19日(月)食堂
しっかりエドワルドの手を握り
「エドワルド様の未来はいつも輝いています」
→上目使いで手を握る。いつまでも見つめあい、手をお互い離さない。
女子に対しては「今時間がないの」。
(男子には“未来”、女子には“時間がない”。わかりやすいわね)
•4月20日(火)中庭西側
「この花、君に似合うよ」
→「エドワルド様と私の運命の色ですね」
(運命の色って何よ。色彩心理学でも勉強したの?)
•4月21日(水)講堂裏
「この場所、落ち着きますね」
→袖引き、上目使い→うっかり転びそうになり、エドワルドに抱き着く
→気色悪いほどデレデレのエドワルド
「気を付けて。僕につかまっているといい」
(袖引きは“距離を縮めるテクニック”。前世の恋愛マニュアル本で見たわ)
•4月22日(木)登校時の門前
荷物持たせて「人柄が手相に出ていました。やはり優しい人ですね」
→手握る→満面の笑み
(手相って、性格判断できるほど万能だった?)
•4月23日(金)中庭東側
肩に手→距離近すぎ→私に気づいてわざとエドワルドの腕を触る。
(あの顔…“勝ち誇った女”のそれ。制服着る年齢で、マウントを取る…才能恐るべし)
エドワルドの私に対する睨みも、もはや日常茶飯事。目玉が睨み仕様になっているのかと思うほど。
彼は、私が、ミレーヌに嫉妬していると思っているようだ。
だとしたら、彼の中では“私が彼を好き”という前提があるということ。滑稽だ。
私は一度たりとも、彼に対して恋愛感情など微塵も持ったことがない。
さらに言えば好意すらない。
むしろあるのは嫌悪。
ただ、私が2人を見ているのは、ミレーヌの“演技”がどこまで通用するのか、観察しているだけ。
(それにしても、あのマウント顔…前世で何度も見たわ。職場の後輩、取引先の女、婚活パーティー、合コン…)
ミレーヌは、男子の前では“聖女”として振る舞い、女子の前では“時間がないのでちょっとだけ”と距離を取る。
その差が、彼女の“計算”を物語っている。
彼女は、自分がどう見られるかを完璧に理解し行動している。
そして、それを武器にしている。
私は、冷静に記録を続ける。
(ミレーヌ、絶対に何か企んでる。アラフィフの勘がそう言ってる)
次は、誰が彼女に“未来”を見せられるのか。 誰の“運命線”を握るのか。
私は、記録を続ける。
冷静に、着実に。
そして、必要なときが来たら
――この“エセ聖女”の仮面を、制服ごと剥がしてやるから!
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