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(中身アラフィフ、外見13歳)
13歳になった私は、学園の“中等部”に進級した。
この世界では10歳で学園に入学し、13歳から日本で言う中学校みたいな中等部に上がる。中等部は貴族の子女が政治・魔法・礼儀作法をガチで学び始める“本気モード”のステージ。
(アラフィフには、もう一度中学って聞くだけで胃がキュッとする…)
◇◇◇
そして春の陽気とともに、転入してきたのが――“聖女”ミレーヌ。
神官を伴っての入学式、白いケープに金糸の刺繍。
壇上で「聖女ミレーヌ様」と紹介された瞬間、空気がピシッと変わった。
(あー、来たわね。“ヒロイン”)
彼女は特別枠での転入。年齢は同じだけど、扱いは別格。
クラス分けの結果、私はイザベラと同じクラス。
レオン、カイル、グレイ、エドワルド、そしてミレーヌはもう一つのクラス。
(神様、私のメンタルを守ってくれてありがとう…って思ったのに、攻略対象っぽい男子みんなミレーヌと同じクラスなんて…なんか意図的なものを感じる)
ミレーヌの“なれなれしさ”は、お茶会で見た通り、学園でも健在だった。
授業中に「レオン様のご意見を聞きたいです♡」と微笑み、授業をとめる。それを顔を引きつらせながらレオンが答えている。
休み時間にはカイルの机に肘をついて話しかけ、 エドワルドには「昨日の夢に出てきて私に勉強を教えてくれたんですよ」と囁き、「現実でも教えてもらいたいです♡」とのたまう。
(手相・未来・夢に出てきた系アプローチ…前世で何度も見たわよ。飲み会で男を狩る狩人のような女たちが言うのを…)
そして、男子たちの反応がまた素直すぎる。
レオンは苦笑いしながら距離を取ってるけど、目が泳いでいる。カイルは「夢に出るのは偶然だ」と言いながらも耳が赤い。
エドワルドに至っては、“聖女ミレーヌ”の手の中に完全に落ちた。
(私のそろばん発明には「利益は?」しか言わなかったくせに、ミレーヌの「夢に出た」には「君の感性は豊かだ」って…何なのよ。)
私は冷静に記録を続ける。
これは嫉妬じゃない。観察・分析。
ミレーヌの行動には、必ず意図がある。
“聖女”という肩書きを使って、男子を掌握していく様子は、まるで舞台の幕が上がったかのよう。
ー観察日記:ミレーヌとエドワルドの記録ー
•4月17日(土)昼休み
・図書室 ミレーヌ、「この本、エドワルド様にぴったりだと思って」
→彼、感激して受け取る。
(“ぴったり”って言われたら断れないのよね。前世の営業研修で習ったわ)
•4月18日(日)講堂前 ミレーヌ、「昨日の夢で、エドワルド様が私を守ってくれたんです」
→彼、照れながら「僕なら当然だ」
(夢の中で守られた設定…それ、前世の恋愛ゲームで見たやつ)
•4月19日(月)朝・登校時 ミレーヌ、エドワルドのネクタイを直す。
「少し曲がってました。整ってる方が素敵です」
→彼、完全に落ちた顔。
(ネクタイ直し…それ、前世のドラマで男からの告白待ちのフラグだったわ)
イザベラはというと、眉間のシワが限界突破寸前。
「聖女様ですし」と言っていた頃の余裕は消え、
「…少し距離取った方がいいのでは?」
と、独り言をついに口にした。
(わかるわ…“距離感バグってる系女子”は、放っておくと周囲の空気をよどませるのよ)
私は、次の授業の準備をしながら静かに思った。
(ミレーヌ、絶対に何か企んでる。おばちゃんの勘がそう言ってる)
でも、ただの観察じゃ終わらせない。彼女の本性を暴いて見せるわ。
次は“記録”で、聖女ミレーヌの動きを数値化してみようと思う。
前世では事務職として、毎月資料を作ってはグラフを詳細に記載し、報告書を仕上げていた。地味だけど、あの経験は侮れない。
(おばちゃん、こういうの得意なのよ。分析と記録は日常業務だったから。でも疲れ果てて、自分のプライベートの事は、記憶も記録もできてなかったけどね…)
ミレーヌの“夢に出てきた”発言の頻度、男子への接触回数、手相を見た回数=いわゆる手を握った回数。
全部、記録で可視化してみたら、見事にグラフが跳ね上がった。
(前世ではパワポにして課長に提出してたけど、マニュアルで作る資料も結構楽しいかも⁇)
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