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(中身アラフィフ、外見12歳)
イザベラが王太子レオンの婚約者に内定したと聞いたとき、驚きはなかった。
彼女は同年代の中でも最も高位の貴族の子女で、品も知性も備えている。
何より、彼女は私の友人であり、レオンとも自然な距離感を築いていた。
カイルもグレイも、レオンとイザベラの婚約を心から喜んでいた。私も、笑顔で祝福した。
婚約内定を祝うお茶会に、私たちは王宮へ招かれた。
煌びやかな空間に、貴族たちの笑顔が並ぶ。 けれど、そこにリュシアンの姿はなかった。
彼がいないだけで空気が少し薄く感じるのは、私の心が彼を求めている証なのかもしれない。
そんな中、紹介されたのが“ミレーヌ”。
子爵家に養子入りしたばかりの少女で、来年から学園に通う予定らしい。年齢は私たちと同じ。
でもその登場の仕方が、どうにも“特別枠”狙ってる感が全身から漏れていた。
白いドレスに、柔らかな微笑み。首を傾けて話しかけ、まばたきはスローモーション。
手相を見せてと言いながら、男子の手を優雅にキャッチ。
「グレイ様の運命線、とてもまっすぐですね。誠実な方なんだと思います」
「カイル様は…あ、すごい。知性が溢れてます。きっと未来を導く方ですね」
「レオン様の手相は…王の器です。やっぱり、特別な方なんですね」
(はいはい出ました、“手相見ます系女”。前世でも何度も遭遇したわよ。だいたい“運命線がまっすぐ”って言われた人は、その後まっすぐ財布開いてたからね。コールドリーディングって、要は“褒めときゃ喜ぶ”の魔法よ。しかも全員に“特別”って言ってる時点で、もう特別じゃないのよ。むしろ“量産型特別”って感じ。そのうち「あなたの手相、世界を救います」とか言い出すんじゃない?)
彼女は、まるで王子たちに触れるのが“当然の権利”みたいな顔で振る舞っていた。
王子であるレオンにまで手を伸ばすなんて、普通なら即アウト。
なのに彼女は笑顔でスルッとやってのけた。
しかも誰も止めない。
王子たちも、顔が引きつりながらも“貴族の品格”で耐えているのがまた切ない。
そして、最も見たくなかった光景が目に入った。エドワルド。私の婚約者。
鼻の下、限界まで伸ばしてミレーヌの隣に立っている。 どうやら知り合いらしい。彼女が顔をかたげて話すたびに、 エドワルドの目がとろけていくのがわかる。
「ミレーヌ嬢の未来を見る力…まるで聖女のようですね」
「君の言葉には、不思議な力がある。心が洗われるようだ」
(うわー…その顔、前世でも見たわ。下心フルチャージの男が、若い女を褒めちぎるときの“とろけ顔”。あれね、脳内で「俺、今イケてる」ってBGM流れてるやつ。)
私の発明には「へー」しか言わなかったくせに、ミレーヌには「君の発想は神秘的だ」って。 発想?手相見てただけじゃない。何が神秘的なのよ。
(むしろ、男を手玉に取る女の典型的な手練手管じゃないのよ。神秘的?違う違う、現実的。実用的。恋愛戦術の教科書レベル。)
(男ってこういう女のテクニックを“運命の出会い”とか“心が震えた”とか言うけど、アラフィフの私からしたら、それ全部“打算的な恋愛スキル”よ。前世で何度も見たわ。恋愛ドラマ、不倫劇、略奪婚。全部、あの笑顔から始まるの。)
私は、紅茶のカップをそっと置いた。 割らないように、力を込めすぎないように。
でも、内心ではカップに(耐えて…私の理性と一緒に…)って語りかけてた。
目線をあげると、カイルとグレイの視線が私に向けられていた。
彼らも、エドワルドの態度に気づいている。 レオンもイザベラも、眉をひそめていた。
(あの二人、まるで不◯カップルみたい。周囲にバレてないと思ってるのが痛々しい。あの“私たちだけの世界”みたいな空気、こっちが窒息しそう。)
私は、笑顔を崩さずに席を立った。貴族令嬢としての振る舞いは、もう板についている。 でも、心の中では“おばちゃん”が全力で叫んでいた。
(前世でも見てきたわよ、社内恋愛に浮かれてる、ば◯カップルや不〇カップル。バレてないと思ってるのは、当人だけ!周囲は全員、気づいてるし、むしろ“また始まった”って思ってるから!)
(あの距離感、あの目線、あの“偶然手が触れちゃった”演出。全部テンプレ。恋愛ドラマの見すぎか、現実ナメてるのか知らないけど、こっちは人生という名の連続ドラマを2周目!)
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