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誰にも頼れず、誰にも労われず、ただ「当然」のように色々と背負わされる日々。
典子の人生は、いつからこんなにも“誰かの都合”で塗りつぶされてしまったのだろう。
「もう限界…でも、仕事は辞められない。介護離職なんてしたら、生活が成り立たない」
その言葉の裏には、叫びにも似た沈黙があった。
助けてほしい。でも、誰も助けてくれない。
逃げたい。でも、逃げ場がない。
職場では、年上の新人が口だけ達者で仕事をしない。
彼女に仕事を頼むには、頼む理由が必要だという。
「私に仕事を振るなら、ちゃんと理由を説明してもらわないと。責任持てないし」
(責任って…あなた、何もしてないじゃない)
結局、彼女の分まで業務をこなし、彼女に与えるための仕事の資料の下準備までしていた。
睡眠時間は削られ、体力も気力も限界を超えていた。
兄や姉、年上新人は私が“大した仕事をしていない”と思っている。
高卒の私には、何をしても“当然”という空気がまとわりついていた。
(でも、そもそも大学に行けなかったのは、父が学費を払わなかったから。 それを責められるのは、私じゃない)
きちんと証拠を残していれば、違ったかもしれない。
(…あのとき、記録を取っておけばよかった。 誰が何を言ったか、何を押し付けたか、全部。いつ、大学から通知が来たのか? 証拠がなければ、私は“何もしていない人”にされてしまう)
《《そしてある日ついに、私は倒れた》》
病院のベッドで目を覚まし、看護師から職場で倒れ、運ばれたことを聞いた。
そして、保証人は、ご家族に頼んでほしいと言われたため、兄か姉のどちらかに受け付けてもらおうと電話するも、返ってきたのは冷たい言葉。
「で、父さんの介護はどうするの?あんたが入院してる間、誰がやるのよ」
「保証人?私、家のことで忙しくて、あんたの病院なんて行けないわよ」
「俺も大変なんだよ…電話出来るってことは、父さんのヘルパーさんに電話で指示できるだろう?」
「保証人、あいつに頼めよ。主婦なんだから時間あるだろう俺より」
「…私の心配は、誰もしないんだ…」
(大丈夫?って言葉すら二人から聞けなかった…)
そして、会社からも容赦なく連絡が来る。
「いつ復帰できます?業務が滞ってるんですよ。お客様からも連絡あるし、担当者なんだからきちんとしてもらわないと」
病室でノートパソコンを開き、急ぎの仕事をこなしながら、父のケアマネジャーさんに電話をかける。
「すみません…ヘルパーさんの追加、お願いできませんか。ちょっと私、入院中でして…はい…お願いします」
涙も出ないほど疲れ切ったその日、ぐったりとしたままいつの間にか眠り込んでしまった。
そして、明るい日差しに、朝かと思い、ふと目を開けると、そこには見たこともない美しい景色が広がっていた。
(ああ…とうとう親より先に逝っちゃったか)
でも、その景色は ――私の人生を、もう一度やり直すための“入口”だった。
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