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(中身アラフィフ、外見10歳)
私たちは10歳を迎える年、無事に学園へ入学し、式典も滞りなく終え、幸運なことに皆同じクラスになった。
新しい制服に袖を通した瞬間、胸の奥にふつふつと湧き上がる期待と緊張が入り混じった感情に包まれた。これから始まる学園生活は、きっと前世とは違う、希望に満ちたものになる。そう信じていた。
けれど、心の片隅にはリュシアンの不在が引っかかっていた。
彼がこの学園に入学しないことは事前に聞いていたが、いざその場に立ってみると、彼のいない教室はどこか物足りなく感じられた。
宰相の息子カイルに尋ねても「彼の詳しい事情は知らない」と首を振るばかりで、父に聞いても「王宮の一部の人しか、彼の事情は知らない」と言われ、結局その理由は不明のままだった。
リュシアン自身は「成長が遅れている」と言っていたが、あれほど精神的に成熟している彼がなぜそう言うのか、私は不思議に思っていた。
彼の言葉には、何か隠された意味があるような気がしてならなかった。
もしかすると、彼自身が抱えている何か重い事情があるのかもしれない。そう思うと、彼の笑顔の裏にある孤独に、胸が締め付けられるような思いがした。
学園生活は彼不在のまま始まったが、噂に聞いていた聖女様がいなかったのは幸いだった。もし彼女がいたら、何かと面倒なことに巻き込まれているかもしれない。そう考えると、少しだけ安堵した。
家では、父と母が私の学園での話を楽しそうに聞いてくれた。
前世では介護と仕事に押しつぶされ、会話すらなかった日々が続いていた。
そんな日々とは違い、今では夕食の時間が待ち遠しくなるほど、家族との会話が心を温めてくれる。
両親の笑顔や、何気ない会話の一つひとつが、私にとっては宝物のように感じられた。
放課後はリュシアンの家を訪れ、彼の魔法で雷を発生させてもらい、それを電池として蓄える方法を一緒に考えるなど、発明に取り組んでいた。
彼の魔法は精密で美しく、まるで芸術作品のようだった。
魔法で廊下のごみを集める道具や、ライターの代用品なども次々と完成し、私たちはその成果に胸を躍らせた。
特許申請を共同名義でしようとしたが、彼は固辞した。
そこで父が彼の父親と話し合い、両家で利益を折半する契約を結んだ。リュシアンは表には出さないが、誰かと何かを共有することに、まだ少し抵抗があるようだった。
リュシアンの父とはあまり会う機会はないが、たまに顔を合わせると、私と彼が仲良くしていることをとても喜んでくれている様子だった。ただ彼の父親は、私の両親と同年代と言うより、むしろ前世での私に近い年齢。もしくはそれよりも年上のように感じる。
彼の母親は、彼を産んですぐに亡くなったと聞いたのは、私たちが親しくなり始めた頃だった。
その事実を知ったとき、彼が時折見せる孤独の影の理由が少しだけわかった気がした。
父親との関係は静かで言葉少なだが、互いに深い絆で結ばれているように感じる。リュシアンが何も語らずとも、彼の魔法や発明への情熱には、父から受け継いだ何かが確かに息づいている。
そんな彼のそばにいられることが、今の私には何よりの喜びだった。
前世では誰にも頼れず、心を閉ざしていた私が、今では家族と笑い合い、友と未来を語り合える。
この世界での人生が、少しずつ輝きを増していくのを感じていた。
リュシアンが学園にいないことは寂しいけれど、彼と過ごす時間が、私にとっては何よりも大切なものになっていた。
そして、いつか彼が学園に来る日を、私は心のどこかで静かに待ち続けていた。
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