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(中身アラフィフ、外見10歳)
お茶会から始まった私と友達との日々は、遊び、学び、笑い合う時間へと変わっていった。
レオンの素直さに癒され、カイルの知識に刺激を受け、グレイの情熱に背中を押され、イザベラの志に共鳴し、リュシアンの静けさに心を整える
――そんな日々が、気づけばあっという間に二年も過ぎていた。
穏やかで、温かくて、まるで夢のような時間だった。
そんなある日、母が妊娠したと知らされた。
家の空気がふわりと変わり、期待と不安が入り混じる日々が始まった。
母は少しずつ体調を気遣うようになり、父は落ち着かない様子で家の中をうろつくことが増えた。
私はというと、弟が生まれるという事実に、どこか不思議な感覚を覚えていた。
前世では、もう子育てを終えた友人たちの話を聞く側だった。
それが今、姉として、娘として、家族の一員として新しい命を迎える準備をしている。
そのことが、なんだか胸の奥を温かく撫でてくるようだった。
そして迎えた出産の日――私は、なぜか妙に冷静だった。
「お湯を沸かして。タオルは清潔なものを。布を敷いて、体を支えるクッションも」と使用人に指示を出した。
母が苦しみながらも、私が使用人に指示をしていることに驚いたように言った。
「セレナ…あなた…どうして…そんなに出産に詳し…いの?」
私は一瞬、言葉に詰まった。
でも、もう隠す理由はなかった。
この世界で生きると決めた以上、家族にはちゃんと伝えたかった。
「私…前世の記憶があるの…。記憶の中に…友達から出産の話をなんとなく覚えてて…」
父が静かに歩み寄り、私を見つめた。
「セレナ。前世って…どういう意味だ?」
私は静かに答えた。
「実はこの世界に来る前、別の世界で生きてたの。そこで私は50歳で、亡くなったんだけど…。こっちに来て、お父様とお母様の子供として生まれ変わったけど、記憶は残ってるの」
沈黙が流れた。母は目を潤ませながら微笑み、父はぽつりと呟いた。
「…そろばんを作ったと見せに来た時、なんとなく…感じてたんだ。あれは、子どもの発想じゃない…」って
「前世では事務仕事してたから。そろばんは使い慣れてたの」
父は困ったように眉を寄せた。
「じゃあ、私より…年上だったのか。どう接すればいいんだ…」
私は笑って首を振った。
「今は、セレナとして生きているの。だから、娘として接してくれていいの」
その言葉に、父はようやく笑った。
「なら、遠慮なく溺愛させてもらうぞ!」
そう言って父に抱きしめられた。
母は苦しそうにしながらも、私の手を握った。
(私は心から、この両親の元に生まれることができて幸せだと思った。)
その日の夜、弟が無事に生まれた。
小さな命の泣き声が、家族の絆をさらに強くしてくれた。
私はその音を聞きながら、静かに思った。
(この世界の私は、もう“誰かの人生の脇役”じゃない。)




