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9 無意識なぶきっちょは危険です

長男が代官を務めている山の麓の村に来た。

初めは、辺境伯が何か企んでいると思ったが、彼には無理なようだ。辺境伯も魔法は使えるけど、魔力が少ないし基本魔法しか出来なかった。魔法学校は基本魔法が出来れば卒業は辛うじて出来るのだとか。

後は、魔法が使えないという長男に会って、確かめてから違う領地へ行こう。

魔法が使えないのなら、異常気象には関係ない事は分っているが、何となく気になったからだ。

長男のサムエル様は黒髪のイケメンで、まだ独身だそうだ。

廃嫡されて、婚約を取り消されてしまった可哀想な人だ。

「気象異常の調査?此処に何かありますか?」」

「この辺境伯領も雪が降らない冬という異常気象ですよね。」

「そうかも知れませんが、このお陰でこの村でもなんとか生きられるのです。」

悲しそうな声でイケメンサムエル様は言っているが、この村に追いやられて辛かったのだろう。

「サムエル様は、魔法学校へいっていたのですよね?」

「ああ、だが基本魔法すら出来なかった。魔力は誰よりも多かったのに。」

そうなの?魔力が多いのにどうして基本魔法が出来なかったのか聞いて見よう。

「ああ、私は、文字が読めないんだ。いくら勉強しても読むことが出来なかった。」

そうか。ディスレクシア、難読症か。それは大変だったね。基本魔法は確か呪文を暗記しなければダメだと聞いた。それも、難しい古代文字で。

「だが、諦めてはいない。私は今でも古代文字を覚えようと頑張っている。」

葵は一生懸命頑張っている姿に感動した。古代文字を知らない葵は魔法が使える。

サムエルも使えるはずだ。

「だったら、私に勉強のお手伝いをさせて下さい。」


「サムエル様、まず私の折り方を真似て折り鶴を折ってみましょう。」

「・・・・」

むすっとした納得いかない顔で葵の方見て、それでも素直に折り鶴を折り始めた。

意外に折れている。サムエルは、不器用では無かった。むしろ器用な方だ。

長いすらりとした指で、丁寧に折り鶴を折っている。

「これが何故魔法に関係しているのか分らない。ヤーオイ導師、私を馬鹿にしていないか?文字は読めないが、頭は悪くないつもりだ。」

まさかこんなに器用で魔法が使えないなんてあるだろうか。

「じゃあ、その折り鶴に息を吹き込んで下さい。」

サムエルが息を吹き込むと、見事に折り鶴が飛んだ。それを唖然とした顔で見ている。

「ね!魔法が発現ました。」

「これは本当に魔法か?魔法とは呪文を唱えて、魔方陣を頭に描いて初めて発現する物では無いのか?」

「それは、基本だけだそうです。その後の応用はイメージが大事なのです。鳥は飛ぶと言うイメージがサムエル様にはあって、それが発現したんです。」

「若しかして私は、以前から・・・」

サムエルは、真っ青になってうずくまってしまった。


サムエルに話を聞いてみたら、ここに来た時に村人が飢えに苦しんでいたのを見て、この地域が暖かかったなら、作物が取れて暮らしが楽になる。と強く思ったのだとか。

それから、この地域はずっと気候が穏やかなままなのだそうだ。

それは無意識に大魔法を使っていたのか。何という人騒がせな。

「その願いは取り消して下さい。貴方の魔法で、国中の気候がおかしくなりました。」

「何と言うことをしていたんだ。まさかこんな酷いことを自分がしていたとは。」

環境をいじるのは危険だ。広範囲に影響が及ぼされる。何がどういう風に変わってしまうか分らない恐ろしさがある。

そして、この世界の魔法は恐ろしい。魔力さえあれば、思うだけで、願いが形になって仕舞う。

「魔法は今取り消した。村人は南の村へ移動させよう。」

この村は、辺境伯がサムエルに態と与えた村だった。魔法が使えない長男を次男から遠ざけるために。

酷い話だ。



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