表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

6 これで帰れる?

「ヤーオイ導師。素晴らしい成果を上げてくれました。彼等は、第一級の魔法使いに育ってくれまた。これからは、王都の学園でもっと沢山の生徒に教えて頂けませんか?」

え!帰れるのじゃあ無かったの?困るわ、私、保育所へ帰って仕事をしないと。お遊戯会はどうなっちゃうの?

「あの、帰れるんですよね、そう言うお約束だったはずです。」

「いえ、ソ、それはデスね・・」

まさか嘘八百並べてたの?私は騙されて働かされていたの?

葵は怒ってしまった。この神官達は、神に仕える身で在りながら平気で嘘をつく。

怒りが脳天をぶち抜いた。身体から、何か分らない物が吹き出してくる。

気持ちが高ぶって、嵐のようなうねる波が心に浮かんでくる。

怒りと言う感情がどんどん形作られて、大きくなって行く感覚がハッキリと分る。

想像しただけで巨大な火の玉だって、隕石だって思いのままになって仕舞う。

このままでは、ここに居る人達は木っ端微塵になって仕舞う。

大きく息を吸い、吐き出した。落ち着こう、まだ分らないでは無いか。帰れる道があるはずだ。

葵の魔法で帰れるかも知れないのだ。転移で連れて来られたのだから、自分で転移が出来ると思い浮かべれば出来るはずだ。

『よし、試してみよう。』

葵が転移をしようと集中したその時。

「大変です!南から大津波が押し寄せてきます。後一時間後津波が海岸に着きます。」

神殿の中は大騒ぎになった。

「魔法部隊を出動させるように連絡を!」

神殿は南の海岸線に位置している。今から王都に連絡しても間に合わない。

真っ先に津波にのまれるのはこの地域の農民や住民達だ。

葵は、オロオロした。このまま帰ってしまったら、この人達を見殺しにすることになる。

自分なら、なんとか出来るかもしれない。葵は急いで神殿から掛けだした。

高台に上がり、南の海を見ると、白波が立っていた。広い範囲にわたっている。

さっき、葵が怒りに任せて思い描いた光景が目の前に実現していた。

「導師、ヤーオイ導師!」

後ろから、神官と一緒にバッカスやトーマス、ルメラが駆け込んでくる。

「貴方たちは、もし私が失敗したとき津波にのまれてしまう。早く逃げた方が良いわ。」

「導師が失敗するはずはありません。」彼等の信頼感が心に刺さる。

葵はさっき、どんな想像をしたのか。あの怒りを力で押し切るのは難しい。心を落ち着かせ、想像する。

凪いだ海、穏やかな海、津波は無かったことになった海だ。

胸に手を置いて目を半開きにして、深呼吸をして私の心よ「静まれ!」と一声。

海は静まった。何も無かったかのように。

『津波は私が原因だった。』

葵は恐ろしくなった。こんな事まで出来てしまう魔法に。

自分の心の平安を保って居なければ、またいつ何時今日のようになって仕舞うかも知れない。

ここから早く居なくなりたい。魔法の無い自分の世界へ帰りたい。

この世界の魔法という物はとんでもなく危険な要素を含んでいる。

身体が芯から震え血の気が引いてくる。葵の魔力はこの世界の常識を越えた物らしい。

『私のせいでこの世界が壊れて仕舞うかも知れない。』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ