5 今日の授業は影絵です
今まで、魔法という物がよく分らないで指導してきたが、何となく分ってきた。
魔法は想像力が一番大事だと言うこと。簡単では無いか。
保育所の子供達の想像力は素晴らしい物がある。
子供達は例え、石ころにも自由に想像を膨らませ、それに物語を作っている。
だったら、とっかかりは影絵が良いのでは無いだろうか。
魔法使いの生徒達は、おしなべて頭が固く生真面目だ。
言われたことはきちんと出来る様になったが、それ以上を自分で工夫することが無い。
今度は想像力を付けるために色々試して貰おう。
「はい!これは何に見えるかな?」
「はい、導師!」
「どうぞトーマス。」
「どう見ても手です。」
こいつー!全く分っていないな。手で作った物を想像しろよ。
「はい先生、いや、ド、導師。」
「はい、バッカス。」
「何か食い物に見えます。」
むー。腹が減っているだけじゃあ無いか!
「ヤーオイ導師。、犬みたいに見えます。」
オオー流石、ルメラは若いだけあって柔軟だね。
こんな具合で、授業を進めていく内に、彼等も想像力を働かせることが出来る様になってきた。
そろそろ、次に進めても良いかもしれない。
「今日は外で、ピクニックをしましょう。」
皆を連れて、神殿にある庭園に来た。
庭園と言っても滅多に人が来ない、殆ど草藁状態の、手入れのされていないところを借りた。
近くには大きな森があり、四阿がひっそりと建っている場所だ。
その四阿に皆で座って、お茶にする。
そよそよと風が吹いていて、青空には丁度良い雲が流れていた。
「あの雲は、私には恐竜に見える。トーマスは、何に見える?」
「雲は雲だが、強いて言えば綿菓子かな。」
オオー。少し進歩したな。
「俺は父上が火魔法を放っている姿に見える。父上の火魔法は凄い威力なんだ。」
へえ、優秀な親のせいで、プレッシャーがあったのかな。
「私はドレスを着た貴婦人に見えます。」
相変わらずルメラちゃんは、優秀だね。自由さに磨きが掛かってきた。
「では、今思い描いた物をここに作ってみましょう。」
葵は、恐竜を思い浮かべそして目の前に出して見せた。
皆、葵の付け焼き刃の魔法を見て目を輝かせる。
それぞれが思い描いた通りの魔法を出現させている。よく出来ました。
三人は喜びに顔を紅潮させて、鼻息が荒い。
「先生、いや、導師!これは、俺達は魔法が、その・・・」
バッカスが驚きすぎて言葉にならないみたいだ。だが、周りは草藁状態だから、火事は困る。
葵はすかさず消防のホースを出して消火した。
「この綿菓子は、食べれるぞー!」
トーマス、君の魔法は細部に拘って作ったのね、素晴らしい進歩だ。
「綺麗なドレス。これでいつでも只で洋服が作れるう。」
すごい、ルメラはもっと想像力を働かせることが出来るようになっている。
もう、卒業で良くない?
「これからは、思い描いた魔法を打ち放題になれるわね、卒業おめでとう。」
皆感激して泣いてしまった。
葵も、皆に教えている内に普通に魔法が出来るようになっていた。