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絶望の底から  作者: 夜桜るーな
第1章 新しい風
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ep.6 翔と美来 出会い

確か小学6年生の夏休み前だった…


その日はピアノの発表会があって、俺はモーツァルトの〚トルコ行進曲〛を演奏した。いつもならいる俺の両親は仕事の急用で行けなくなったため、俺は仕方なく使命感を背負ってひいていた。


当時の俺はやること全てが一発ででき、今日ひいた[トルコ行進曲]だって子供がひくようなものじゃなかったんだ。そのため、表彰の時、俺の名前が呼ばれると観客の保護者からは


[毎回、その子が賞を取ってるのいい加減にしてもらえる?!]


[うちの子の頑張りが意味ないじゃない!]


など罵声の声が飛び交った。この頃の俺は他人の声は気にしていなかったし、ここで辞める方が両親に迷惑をかけてしまうなどあって弱音ひとつも吐かなかった。


しかし、賞を取ったあと俺は着替えるために賞を置いて更衣室で着替え、部屋に戻ると同じ発表会で俺の次に賞を取っていた子が俺の賞状を破っていたのだ。


[おい、何してるんだ?]


と声をかけると


[お前ばっか最優秀賞取っててムカつくんだよ!だから、こうしちまえば俺が最優秀賞をとったことになるんだよ!]


と謎の理論で返してきた。どちらにせよ賞には優秀賞って書かれてるんだから意味ないんだよなと思いながらも俺はそいつを無視して破られた紙を拾った。


今ここでコイツを殴ったとしても同じレベルに立つだけで吐き気がするから抑えておいた。その後、俺は家にはすぐに帰らず近場の公園のベンチに座っていた。


(どうしたものか…)


俺は親に褒められたいがために賞を取っており、親もそんな俺の要望に応えてくれた。しかし、今の破られた紙を見せるとどうなるだろうか?両親は優しいから俺を心配してピアノ教室の先生にも電話をかけるだろう。


だけど俺のせいで両親に負担をかけたくはなかった。しばし、ベンチに座って頭を悩ませていると俺より少し身長が低い女の子が声をかけてきた。


[どうしたのー?そんな暗い顔して?]


俺のことを心配してくれていたのだ。他人に興味がなかった俺だが何故かこの子に話してもいいと思って今日の出来事を話した。しかし、その子から帰ってきた返事は意外なものだった。


[私も聞きたい!今から私のお家に来ない?ピアノあるよ!]


と解決策ではなく欲望を言ってきたのだ。最初はなんてワガママなんだと思ったが今は帰りたくないので大人しく首を縦に振っといた。


[私はみらいっていうの!みーちゃんって呼んでね!]


みらいと名乗った女の子は手を出してきた。


[俺は翔だ、よろしくなみーちゃん]


それに応えるように俺もみーちゃんの手を握り返した。


[よろしくねかけくん!]


[かけくん...?]


この日、俺は初めての友達と呼べる存在ができたんだ。


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