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絶望の底から  作者: 夜桜るーな
第1章 新しい風
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ep.10 会えて良かった

全てを思い出した俺は1つの疑問を率直にぶつける。


[なんであの日から引っ越したの?]


と聞くと、西園寺さんは[ようやく思い出しましたか...]と嬉しそうな表情になる。


[その点についてはごめんなさい。あの日、早瀬く─かけくんに【大丈夫だよ...迷惑をかけるよりね、みーちゃんが傷ついてく方が親は見たくないし、俺はいつだってみーちゃんの味方だ】と言ってもらって私は親に話すことを決めました。しかし、私の親は政治家ということもあり話せばすぐに引っ越しの手配を行うと踏んでおりました。そのため、あの場でかけくんに感謝の言葉を言わないとダメだと思ったからです]


と嬉しい表情から悲しそうに俯く彼女、あの頃の面影と重なり何故か安心してしまう。


また、彼女の発言を聞いて、現在の日本の政治で大きく権力を持つ西園寺 秀明(ひであき)が彼女の父親ということがわかった。


でも、俺が今言いたいのはそんなことじゃない。


[おかえり─美来、また会えて嬉しいよ]


と笑顔で伝える。彼女もその意図がわかったのか


[ただいま─翔]


と笑顔で返す。


もうあの頃のかけくんとみーちゃんはいないしその思い出も止まったままだ。しかし、これからは翔と美来の2人で新しい思い出を作っていくんだ─


[ところで今度、翔の家にでも行っていい?ご両親に挨拶をしておきたいんだけど...]


美来がそんな提案をしてきた。彼女と出会ったのは小学6年の頃なので中学2年の時の事件は知らない。しかし俺はまだ彼女に話す訳にはいかないと思い嘘をつくことにした。


[ごめんね...俺は今一人暮らしで両親の家は九州の方にあるから流石に無理かな...]


[両親だけ引っ越したの?昔もこの地域にいたでしょ?]


[ああ、俺はここの方が良くてね。ちょうど高校に入るタイミングだったから一人暮らしをしたんだ]


[そーいうことね、じゃあ夏休みとかだったらいい?]


[わかった、両親にも連絡しとくよ]


俺は美来に嘘をつくたびに心が痛くなる。─彼女にも話したいと思うが、それと同じくらい巻き込みたくないという気持ちがあるからだ。


すっかり思い出話に浸っていると下校の時間を表すチャイムがなり俺たちは慌てて学校を出た。今の季節はまだ春のあけた5月ごろだが美来は美少女なので家まで送ることにした。


[私も一人暮らしをしててこのマンションだから、もう大丈夫だよありがとう]


[わかった、じゃあまた月曜日にな]


[じゃあね翔っ!]


笑顔で手を振る美来に手を振り返し俺は家に帰った。

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