表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三題噺もどき3

待ち合わせ

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくごじゅう。

 


 ほんの少し冷たい風が、火照った頬を優しくなでる。


「……」

 数日前までの雨続きの日々が嘘のように、晴れ間が覗く。

 柔らかな日差しは、夏場程の痛みはなくとも、確実に人々の体を温めている。

 暑くて、汗をかいてしまう程に。

「……」

 近所にある公園。

 普段はもっと、子供がいたり、親がいたり、散歩のご老人が通り過ぎたりするのだけど。

 今日は、ブランコは風を乗せて揺れているだけ。滑り台はその巨大な体を風に吹かせているだけ。シーソーは傾いたまま微動だにしない。

「……」

 世間は大型連休というやつなので。

 この辺りに住んでいる人々は総出で、出払っているのだろう。

 実家に帰ってみたり、家族旅行をしてみたり、惰眠をむさぼってみたり。

「……」

 個人的には、連休というもの自体、仕事をするようになってから、トンと関わりがなかったものだから、あまり実感がない。

 まぁ、その前から、連休なんてものはただただ暇を持て余すだけのものであって。

 世間一般のような、楽しい思い出作りなんてものはなかったから……あまり心地のいいモノではない。

「……」

 しかし、そんな私も珍しく、今日は予定があって外に出ている。

 公園に来たのは、ここで待ち合わせをしている体。

 家で待ち合わせでもよかったが、まだそこまでの余裕がない。

「……」

 閑散とした公園の隅。

 そこにあるベンチに、ぼうっと座っている。

 なんとなく、今日は必要なきがして、ヘッドフォンをつけてきたのだが。

 いやはや。

 音楽を聴くだけでなく、雑音を消してもくれるのだから、便利で良い。

「……」

 どこに行くかは、詳しく聞かなかったが……。身内の家でなければ、どこでもいい。

 お互い人混みは苦手なタイプなので、そうそう人の多いところにはいかないだろう。

 あぁでも、子供がいるからなぁ……

 と。

 若干、憂鬱になり始めたあたりで。


 ドンーー!!!


「うっ―」

 何かが背中に突撃してきた。

 襲撃にでもあったのかと思ってしまうぐらいに、すごい勢いだった。

 思わず漏れたうめきが、脳内に響く。

「ったた……」

 痛みに耐えながら、頭にかけていたヘッドフォンを首にかけなおす。

 瞬間、ざわーと、葉擦れの音が鼓膜を叩き。

 ぞわりと、何かが走った。

 が。

「――!!」

 すぐ後ろから聞こえた声がすべてかき消した。

 突進または、襲撃してきた本人だ。

 元気いっぱいに私の名前を呼び、嬉しそうにはしゃぐのは、この子しかいない。

「びっくりした?」

 首だけを後ろに回し、腰のあたりを見やると。

 キラキラと目を輝かせながら話す甥っ子がいた。

 今日は、彼らと出かける予定があったのだ。

 ―大型連休初日にいいのか、といったが、何かあるのか妹が頑として譲らなかった。

「うん、びっくりした」

 まだ少し痛む背中を無視して、さらりと甥っ子の頭を撫でる。

 嬉しそうに私の手を受け入れてくれるその姿。

 愛おしい以外のなにものでもないな。

「……?」

 しかし突然。

 その楽し気な表情を曇らせ、首をかしげる。

 何事かと思ったら。

「けがしたの?」

 そう言って、撫でた掌の先を見つめた。

 あぁ、忘れていた。大したことはないのだが。

 色々とやらかしてしまったので、手首に包帯を巻いていたのだ。

 たいして多きものでもないが、目に入るとアレなもので……念の為と包帯をしていたのだ。

「いやいや、なんでもないよ、大丈夫」

 そういいながら、甥っ子の体を持ち上げ、膝の上に乗せる。

 しかし、日に日に大きくなっていくなぁ。

「ほんと?」

「ホントホント」

 未だ不安げに聞く甥っ子の頭を、両手でくしゃくしゃとなでる。

 きゃーといいながら、笑ってくれるのが何よりも嬉しい。

 子供は笑ってくれていることが、一番だ。大人の心配なんてしなくていい。

「お姉ちゃん」

 すると後ろから、また声がかかる。

 くるりと振り向けば、見慣れた顔があった。

 普段より少しおしゃれ目に、且つ動きやすさを重視した格好の妹だ。

 先にかけてきた甥っ子を追いかけてきたんだろう。

「行こっか」

「うん!」

「あ!頭ぐしゃぐしゃにしたな!?」






 お題:ヘッドフォン・包帯・襲撃


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 晴れた連休初日の公園の1コマ。 ほのぼのです [気になる点] 前半、「……」が描写の合間に何ヵ所かあるけど、この意図は? [一言] これ、ヘッドフォンとか包帯、襲撃というテーマに沿っ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ