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転生したら中世でした

すみません、気の向くままに書いていたらグロくなりました。

 15世紀のナーロッパの夜を空の上から見てみると面白い。まず、東、中央、西で明かりの性格が違う。東の方を見るとあたたかな薄いオレンジ色をした明かりが団子のように固まって、数個散らばっている。人類の文明を長く支えてきた、火の明かりだ。西の方を見ると、東とは対照的に青白い光が点々としている。近年人類が手にしたもう一つの明かり、魔法石の明かりだ。そして中央では、注意深く見ると、その二つの明かりが混ざっているのがわかる。では、その部分を拡大してみよう。すると、その色にばらつきがあることがわかる。ナーロッパの中央には南北に伸びた半島があるのだが、南の方はまだ暖かな色をした明かりがぽつぽつと見られるのに対して北の方ではもうすでに青白い光で埋め尽くされているのがわかる。もっと拡大して北部の方を観察すると、今回の舞台であるV共和国の心臓、V市が見えてくる。V市は交易で栄えた港町で、海の方に目をやると商船の明かりが点々としているのがわかる。町の方はもう真夜中だというのに真昼のように輝いている。その姿は、まさに眠らない町であった。だが、少し不思議な場所がある。その街から遠いというわけでもないのに、穴が開いたかのように真っ黒なところがあった。この場所はPO島というのだが、死を運ぶ病「黒い死神」にかかった者、またその疑いがあるものを収監しておく検閲所の役割が与えられていた。不幸にもこの島に飲み込まれたならば、回復するか、野垂れ死ぬの二つしかない。このようなことから、商船は一隻も近づかなくなった。こうして、この夜のベネチアの町に小さなブラックホールが誕生したというわけだ。

 さて、今回の話は、このPO島で起こった奇妙な事件についてである。この夜、PO島のある棟に見回りをしていた看守が、ヒステリックな叫び声をあげて逃げ回り、何とかこの島に住む医者の部屋まで行くと、しわくちゃな顔をさらにしわくちゃにして訴えた。

「でた!でたんです!ついにでやがった!」

「落ち着けよ、どうせ幽霊でも出たというのだろう?」

「・・・そうです!赤ん坊の霊です!△△棟で出たんです!」

医者はため息をつきながら同僚をなだめた。

「よく聞け。何度も言っているが、俺はここに12年務めている。それで幽霊が出たとかわめく奴はいやというほど見てきたが、一度だって本物の幽霊に会ったことはない。いいか、こういうのはたいてい狐の仕業なんだよ。ほら、最近V市でも狐が増えてるっていう話を聞くだろう?それに、もし本当に幽霊だったとしても、死神に魂を取られた幽霊だ。そんなものに怖気ついていて大丈夫なのか?わかったらさっさと持ち場に戻れ。今すぐにだ!」

しかし看守は足がすくんで動く気配がない。

(新刊の小説をじっくりと読んでいたかったのだがな)

医者は重い腰をゆっくりと起こすと、看守を無理やり立たせ、共にその幽霊のでる棟へと向かった。

 この棟は近年増築されたものだが、ほかのどの党よりも不気味な雰囲気を身にまとっている。それもそのはずで、この棟だけで島全体の半分の死者が出るのだ。この島に集められるのは主に外国からやってきた人々である。もっとはっきり言ってしまうなら、V市が受け入れることができなかった難民である。よって、この棟の人々が黒い死神に罹っているかどうかはさほど重要ではなかった。この棟に収監されたものは島を出ることが許されず、ベッドはもちろん、水や食料すらままない状態となる。このような状況では、病でなくとも簡単に人は死んでしまう。二人がその棟に足を踏み入れると、そこはいつものように死体が床に転がっていた。腐臭がほとんど密閉された塔内を埋め尽くしていた。二人はマスクをしていたので幾分かマシだったが、この悪臭は今にでも香辛料の香りを掻き切って二人の鼻を溶かしてしまいそうだった。死体の焼却の予定は、明日であった。すると突然、どこからか赤ん坊の鳴く声が聞こえた。オギャアオギャアと泣くのである。鳴き声は三階から降りてきているらしい。看守は思わず後ずさりしたが、医者は構わず進んだ。看守はどうすることもできず、ただ医者の後をついていった。医者にはこれが日常であった。慣れとは恐ろしいもので、医者の心は東帝国の首都のように堅牢だった。だが、階段を一段ずつ上がるたび、彼は違和感を覚えた。それは恐怖によるものではなくて、単なる疑問だった。赤ん坊の泣く声が大きいのである。この環境で、真っ先に死ぬのは弱いものだ。赤ん坊など、三日もすれば衰弱して死ぬ。だが、棟に響き渡るこの声はなんと力強いのだろうか。やはり霊ではない。では、本当に狐のいたずらだろうか。いや、そうすると・・・。そんなことを考えているうちに、二人は三階にたどり着いた。あたりには死体が転がっているばかりだ。だが赤ん坊の鳴き声は聞こえる。二人はその鳴き声のもとにたどり着いた。そしてそこには、女の死体があった。

 看守の震えは頂点に達し、目からはとうとう大粒の涙があふれた。

「やっぱりそうだ、幽霊だ!女の幽霊が僕たちを恨んでるんだ!きっとこの赤ん坊は女の子供になるはずだったんだ!」

「あぁ、そうらしいね。だが母親は死んでしまった。残されたのはこの赤ん坊ただ一人だ」

看守はそこで、本当の声の主を悟った。女の股の下に、今まさに生まれたばかりの赤ん坊が手足を懸命に伸ばして泣いていた。

「こんなものを見たのは初めてだ。」

医者は呆然としていた。

「死体を見る限り、母親の死は昨日だ。そして、この赤ん坊が生まれたのはついさっきだ。にわかには信じられん」

医者は赤ん坊を抱きあげた。赤ん坊は四肢を大きく振りかざし、あらん限りの声で鳴いていた。それはまさに、生命の躍動であった。医者は母親を一瞥して、そのまま階段を下りて行った。

(とりあえず、ミルクを与えよう。それで、少し様子を見て、問題なければV市の友人を頼ってこの子の里親を探す、そうしよう)

こうして、この物語の主人公、ジョヴァンニが誕生したのであった。

眠い。明日授業あるってマジかよ。あ、今日だったw

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