第八十七話
「ハル!!HPが1じゃないの!ポーション、ソフィアちゃんポーションを出して!」
「は、はい!えい!」
「ガクガクガク、ブルブルブル。」
ハルが氷漬けにされたように全身を霜で覆われた状態でHPを1とほとんど遜色ないぐらいまで減らした状態で体を震わせている。
ヒビキちゃんとソフィアちゃん二人掛かりで介護もといポーションによる回復と、HPが回復しても取れない霜をどうにかするための状態異常解除のポーションを浴びせていた。
回復薬と状態異常それぞれでポーションの色が違うので、人の体をキャンバスに見立てて様々な絵の具を吹きかけているボディペイントのように見える。
氷漬けにされる前に色々とスキルを発動していたようだが、上手く成功したようだ。
成功していなければハルと一緒にHPが全ロスしてしまってギルドホームへ送り返されてしまっていただろう。
それでボスのドロップアイテムも入手できないことにもなっていた。
「よかったよかった。ハルはともかくリーダーの私が落ちてしまうのは格好がつかないからね。」
「何言ってんだ!ゴルァア!!いきなりスキル発動させられたかと思えば普通盾にするか!?普通!?」
普通を2回も言わなくていいのに。
せっかくいい肉壁となれるやつもいて、自分は盾どころか自分を守るものもないのだから仕方がないというやつだろう。
あと、私の指示でスキルを発動をさせたから生き残ることが出来たのだから感謝してほしいものだ。
ハルの隣でこちらに向けて先程の氷漬けより温度が低い冷たい目線を放ってくるお嬢様とオカマがいるのだが、気にしないようにしよう。気にならないよ。
「さ、さてと。これでドワーフの人に頼まれていたモンスター討伐はこれで完了ね。みんな回復は済んでいるみたいだから早速おじさんに報告しにいこう!ほうこくほうこく~。」
倒したボスの体はゆっくりではあるものの薄れていく。
ボスを倒したこの場所はまき散らされた氷が徐々につけていく音だけを残して周囲の森は異常なほど静かであり、ここにはボス以外はいないですよとでも言わんばかりに。
このステージもあいつを倒すためだけの専用ステージのように思えた。
冷たくなった手下と優しい仲間を引き連れてもと来た道を引き返し、ドワーフのいる小屋までたどり着いた。
彼は周囲にはいなさそうなので小屋の扉の前まで行き、強めにノックをする。
「なんだ、お前さんたちか。船大工の使いが来たかと思ったぞ。ふんふん、素材を見せてもらわんでもロック鳥を討伐に成功したことはわかった。よし、中に入れ。素材を買い取らせてもらおう。」
「一人で勝手に会話を進めるバルガンって意外と独り言が多いでしょ。」
無言でバルガンが机にあった金づちを手に取るので、瞬時に手を合わせて謝罪の姿勢を取る。
最近、面白い人と多く出会うせいでついついいらないことを言ってしまうのは反省しなきゃ。
「ここのでけぇ台の上に載せていってくれ。作業台だから丈夫で多少デカかろうと問題はない。」
「それじゃあ、みんな手に入れたものを出していきましょう。」
ヒビキちゃんのいう通り、ロック鳥の討伐で入手したアイテムをアイテムボックスから選択していく。
イベントのアイテムだからかアイテム名の先頭には星のようなマークがついていて簡単に探し出すことが出来た。
これはまだ依頼が達成されておらず途中で、その仕様なのだろうと思いつつ選択し終えたのでアイテムを具現化させた。
それぞれが具現化させたアイテムでバルガンが提供してくれた作業台はあっという間に埋まってしまった。大きな羽や削れてはいるものの立派な鉤爪などこのまま提供せずに自分たちの武器・防具に利用したいものばかりが揃っている。
「よし、必要な素材はなんとかありそうだな。待ってな。」
バルガンは作業台に乗せられた素材を色々と触った後にそういい、小屋の奥へと引っ込み一枚の紙きれを持ってきて手渡された。
そこに記載されているのは依頼を達成したこと、素材を受け取り船の部品作成目途についての内容だった。
「そいつを副船長に渡せば依頼の1つは完了ってことだ。あと、お前さんたちが渡した素材で不要なものもあるからそれらは返すぜ。船の部品には使えはしないが冒険者なら何かに役立つだろうよ。」
紙きれと、ロック鳥の凍結晶を3つ、鶏肉がいくつか。
受け取り依頼ほぼ達成という喜びをみんなでハイタッチで祝福!
そして、帰り道はバグなのかこちらの攻撃が一切通らないバッファローの特徴をもつモンスターの大群に襲われ全力疾走で逃げて下山することとなった。
みんなボロボロでバッファローの大群と共にも街へ入り無事に港まで帰れた時に「帰るまでが遠足」というありきたりなフレーズは正しかったと思わされた。




