第八十四話
港のある第六の街から徒歩で30分ほど歩いたところにゲームの世界の中でも大きいといえる山がある。
そこが今回新大陸行きの船団の副船長から依頼をされたロック鳥討伐のための情報を持っているドワーフの小屋に向った。
道中は1人ではなかったためモンスターが度々現れるものの拙いながらも連携を取り誰もダメージを受けることもなく処理することが出来た。
基本前衛の私とハルが敵のターゲットを受けつつヒットアンドアウェイでHPを減らしていき、隙ができたところをヒビキちゃんのハンマーで叩き潰す。
ソフィアちゃんは魔法で魔力で形成された槍を敵に投擲するかのように投げ刺して止めを刺す。
これから戦うであろうロック鳥の前に事前に打ち合わせをした陣形を試すため雑魚モンスターたちで実施している。
自分自身の感覚ではまずまずといった感じだ。
私とハルとの連携はつい最近戦ったことで相手の動きが予想できるのもあるが、ハル自身がこちらの動きに合わせて私が攻撃しやすいような立ち回りをしてくれている。
彼の職業がプロゲーマーであることをつい忘れてしまうが、ただプロであるだけでなくかなりスキルのあるプレイヤーであることを再認識した。
モンスターを倒し進んでようやく目的地の小屋に辿り着いた。
木造建築の2階建ての赤い屋根が特徴的であり、ちょっとやそっとじゃ傷つかないような作りになっている。丸太を無造作に組み合わせているように見えるが、槌などでどついてもびくりともしないということがなぜか感じ取れた。
「あら、ここが目的の場所なのね。この小屋にロック鳥についての情報をもっているドワーフさんがいる。」
「さっそく行ってみようぜ。早く歯ごたえのあるモンスターと戦いたいんだよね。」
ハルは1人駆け足で小屋の方に向っていく姿に小さな少年を彷彿させられて思わず笑ってしまった。
だが、その視界の端で何か動いているなとふと気が付くとそれは大木がこちらに倒れてきているではないか。
避けるように声をかけようとしたが、既に速度を付けて倒れこんできており声に気が付いてから避けるだけでは間に合わない。
そして、自身の足元に影が落ちてきてようやく気が付いたハルはそのまま大木に押しつぶされていった。
「ハルさん!!」
ソフィアちゃんが叫びみんなで駆け寄るが土埃が舞っていてよく見えない。
数秒してからようやく落ち着いてきたところでプレイヤーから発せられるポリゴンが見えないあたり死んではいないのは確実だろう。
見えたのは両手の平を合わせて天に突き出してまっすぐ直立の姿勢を保ってなんとか潰れずに生きていた。その姿はプロゲーマーの格を落としてしまいそうななさけない姿だ。
こう思ったことは口に出さないでおくのが淑女の嗜みだろう。
けど、最近覚えたスクリーンショットで今の光景はしっかりとメモリーに保存をしておいた。手元がおぼつかないから連写しちゃったけど、あとでヒビキちゃんと共有していいものを保管しておくかな。
「おうおう、冒険者どもがやってきおったのか。」
倒木の上からこちらに向けて重い声質で声をかけてきた人物がいる。
土埃が舞っていてよく見えなかったが、相手が土埃が舞っていていないこちらへ飛び降りてくる。
ズドンと地震が起こるかのような重量感のある振動と共に現れたのは私より頭一つ分だけ身長の低く、顎髭が三つ編みになっており胸辺りまで伸びている。
全体的に小さいというのが真っ先に思い浮かぶイメージだが、全体的に太い、つまりは筋肉がすごいというのが次に浮かぶ。
「あなたがロック鳥を討伐してほしいとライネル副船長に依頼を出したバルガンであってます?」
「おうよ、この俺がバルガンで木工職人だ。俺が良質な木材の採取をしている箇所をロック鳥っていうモンスターが縄張りにしやがった。それだけじゃ飽き足らず縄張りを広げようとしてやがる。それがこの小屋まで到達するのも時間の問題ってわけだから腕っぷしがあるお前ら冒険者の出番ってわけだ。」
バルガンは肯定して話しながら腰から小さなナイフを取り出して細枝を取り除いて囚われているハルを手際よく救出していった。
さすが木の扱いには慣れている職業だと思った。
「なるほどね。ロック鳥の縄張りに入り込んで討伐すれば新大陸行きの船団に依頼されたあんたの仕事が再開されるのか。それまでは人がいるかもしれない小屋付近の木々を伐採しているのね。」
先程まで人間タワーになっていた頭に葉っぱを乗せたハルが何事もないかのようにバルガンとの話に入り込んできた。
HPが消し飛ぶ可能性のあった倒木の元凶をにらむかのような目つき。内心怒りはあるだろうがここでNPCの好感度をダウンさせるのはよくはないのでよく耐えている。えらいね。
「そうだ、だからお前たちにはロック鳥を討伐を頼む。場所はこの小屋の先の道、あそこ見えるだろう。その道は森の奥の方へと続いている。進めば縄張りに入って向こうからやってくるだろう。討伐したらその素材を見せろ。それで討伐完了としてやつには報告をしておく。」
そうバルガンは依頼内容を簡潔に説明し終えると「小屋のベッドとか勝手に使って休むなりしてからいけよ。」と言って斧を担いで森へと帰っていった。
私たちはここまでモンスターを相手をしていて集中力が落ちてきているのもあるので休憩をしてから対象の元へと向かうことにした。
「よし、準備はできたね。配置は事前に話した通りにするけど、最初はロック鳥の攻撃方法を分析することが第一に。攻めることが出来るときには一気に攻めてダメージを稼ぐのはありで。」
「おけおけ、敵の分析優先で叩けるなら叩くってことね。俺がいつもやっていることだ。」
みんなもアイテムの整理や装備のチェックを完了して座っていたベッドから立ち上がる。
私自身も装備は以前から変わりはしないもののクナイなどの飛び道具はアイテムボックスから取り出して足や腕にいくつか装着しておく。
みんなから討伐対象のロック鳥という未知のモンスターに不安・心配が伝わってくるが、私はその未知と戦えることにワクワクしている。




