第八十一話
「ってなことがあってね。ほんと使える手ごまが増えたのはいいことだけど、大変だったんだからね。」
「美桜って何かある度に手下が増えていっているけど、ゲームの中でもそれは健在なのね。某ゲームで倒したモンスターが確率で仲間になるのをリアルラックで確定になる感じ。反則の能力だわ。」
麗香は私が大変な話だった話をしているのだが、おまけついでに手下を手に入れたことをなぜか羨ましがっている。
そんな彼女は今日は一段と化粧に気合が入っているように思える。
いや、微かにだけど首筋辺りから香水の匂いが漂ってくる。普段から化粧などはめんどくさいと言って最低限だけをしている女であるのにだ。
つまり今日は、この後の講義が終わればヒロとのデートがあると断定しても過言ではないということだ。
「まぁ反則といってもリアルが充実しているならどっこいどっこいじゃない?いや~めんどくさい必修の講義が終われば楽しい楽しいことが待っている人が目の前にいるとは羨ましい。」
「な、なん、なんで私がヒロとこの後でで、デートに行くことがわかって、、、」
「一言もデートとは言っていないけど。麗香は恋愛ごとになるとほんとポンコツになるよね。わかりやすいのはいいことだけど。デートってことはヒロに告白したの~?」
自分でもわかるけど顔は結構ダメな顔をしているような気がする。
麗香は顔を真っ赤にして停止してしまっている。
もしかしてだけど、あの恋愛に奥手で告白なんてあと10年は出来ないと思っていたけど。
「告白のつもりで『付き合ってほしい』とは言ったんだけど、あいつ変な思考回路してるから鈍感系主人公みたいに『さて、どこに行くんだ?』とか言われそうで内心ドキドキが止まらないんだよね。」
「、、、そんなことはないって絶対に言えないことをあいつしてきているからな。今まで何度も麗香が誘うようなことをしていても一切気が付かなかったしね。」
麗香は机にうつ伏してぶつぶつとこの後のデートのプランを確認している。
麗香もヒロも第一にゲームという考えでお似合いの2人ではあるものの、麗香の頭の中はゲームで埋め尽くされているわけではなく、あくまでゲームが優先程度だ。
しかし、ヒロに至っては行動のほとんどがゲームが優先である。課題などもゲームの発売日が近いとそちらを優先して課題は一切しないなど、ゲームに人生を支配されているようだ。
そんなやつに恋する麗香に私は今でも疑問を持っている。私も女だけど女ってそういうものなのかな、よくわからないや。
隣であれやこれや思案している中で携帯に通知を知らせるバイブレーションが振動する。
講義までにもまだ時間があるのでロックを解除して確認をしてみると通知はユートピアオンラインの運営会社からのメールだった。
「ええと、何々?解放クエスト『新大陸』...って前々から話があったやつじゃん。解放クエストってことは。」
「美桜、そのメールって新大陸のやつよね?よね?」
「う、うん。そうだけど顔がいつも以上に化け物だよ。化粧のせいかな?」
「私の化粧は化け物生成してねぇよ。で、新大陸なんだよな。なら、この後の予定はデートから作戦会議に変更だ。」
やっぱりデートだったんだ。化粧の化け物はようやく人並みの顔に戻ったから安心安心。
あとはせっかくのデートがキャンセルにならないようにアドバイスをすればいいかな。
「麗香、デートはキャンセルしないでデートと作戦会議を一緒にすれば?作戦会議するための買い物をデートとして一緒に行ってあとは家で作戦会議と称したお家デートでいいんじゃない。」
「そそうね。まずは買い物デートして、あとは家デートと称した作戦会議を...」
うんうん、作戦会議じゃなくてお家デートがメインになっちゃっているけど頭の中が幸せそうだしいいことにしよう。
私も手下1号2号と女の子2人たちと作戦会議をしなくちゃいけないな。
人数もすくないギルドだし暇なプロゲーマーや雑用係にはしっかりと働いてもらわないといけない。
ハルは私とソフィアちゃんと同じぐらいの最低限のレベルに達してもらわないといけない。対人戦については自身のみをもって知っているのであとはステータスさえ十分であれば特攻隊員になってもらえる。
「あぁこの後の講義の内容は絶対に頭に入ってこないは。」
そのあとは、宣言通り講義の内容は頭に一切刻まれることはなくただただ憂鬱な時間過ぎていった。
准教授が講義室から出ると同時に麗香は机の上に無造作に置かれていた教科書類をカバンに詰め込んで走って出ていった。
周囲の人が作業中の手を止めて驚いているが、こちらとしては懐かしい感じだなと思った。
今日の講義は終わりで華の金曜日なので私も新大陸へ没頭するために買い出しにいかないと。
エナドリ、カップ麺、冷凍食品に顔パックに。
考えている時間があるなら歩いて考えよう。
買い物をさっと済ませて冷蔵庫などに詰め込み、腹ごしらえを簡単にしてからヘッドギアを装着してユートピアオンラインの世界に向かう。
降り立ったのはギルドホーム内。
辺りを見回してもソフィアちゃんやヒビキちゃんなどはいないようだ。
どちらもまだ学校だったり仕事だったりするのだろう。
私のような大学生やいつだって暇人のプロゲーマーなら別だろう。
「さて、まずはカインのところにいって武器の新調と情報を奪いと、入手しにいくこと。その前にみんなに夜には集まれるか連絡しておかないと。」
メニュー画面から宛先をメンバーに設定をしてメッセージを入力していると、光の粒子が地面から立ち上がってきて人の形を瞬時に作成される。
誰かがログインしてきたということだ。
誰なのか確認しようと思ったが宛先をいまさら変更などするのはめんどくさいので送信ボタンを押下する。
「あれ?リーダー来てたんだな。今日は俺が一番乗りかと思っていたんだけど。」
ハルが頭をかきながら眠たそうな顔でやってきた。
この顔をみるとなぜだか殴りたくなるのは私だけではないと思う。この間抜け面が若い世代に人気なプロゲーマーでなおかつトップ層で大金を稼いでいるらしい。
間抜けづらだからといって現実もおかしいというわけでないらしい。
「授業が今日はあんまなかったからね。ハルは一日中この世界に入り浸っているかと思ったけど。」
「俺は遅めの昼飯を食べに行ってたのと、所属している事務所との打ち合わせがあったから抜けてたんだよ。で、リーダーがこんな時間にさっそうとログインしているってことは新大陸に関連するクエストが解禁されたとかか?」
流石のプロゲーマー、情報のアンテナは仕事のゲーム以外にもしっかりと機能しているらしい。
それはそうとプロゲーマーでも打ち合わせとかがあるのだと初めて知った。大会に参加して入賞することで賞金をもらうことで生活をしていたり、配信したりしているのだと思っていた。
事務所に所属しているって聞くと芸人さんやアイドル等のイメージがかなり強い。
「そうよ。だから今日の夜にギルドに集まって作戦会議しない?ってメッセージを飛ばしたわ。」
「ふーん、それなら夜までは自由行動ってわけか。それじゃ俺はまだ辿り着いていない街へ行ってみるからよろ~。」
「待て。行ったことのない街へ行くのはいいが、レベリングを忘れないでね。一応だけどあなたはギルドの戦力なんだから。」
そういうとハルは手をひらひらと振りながらギルドから出ていく。
初対面の時のような減らず口などを叩かないあたり少し照れているのかな?一応だけど褒めては挙げたんだし。
私もメッセージを送ったからあとは色々とやることをやるのみだ。
アイテムボックスから不要なものをギルドのボックスに放り込んでからギルドを出てカインのところへと向かう。
しかし、店の前まで来てみると扉には「CLOSE」と看板が出ている。
今すぐに武器の修復などが必要というわけでもないので今日のところは引き返そう。
「そうなると私もレベリングするしかないよね。ハルが簡単に追いついてこないようにしないとな。」




