第七十三話
「サイ、じゃなかった。美桜さん明日はお時間がありますか?私の学校の部活動を見学に来られませんか?もし、断られても大丈夫です。美桜さんの明日の予定は黒服さんたちが既に把握済みなので。え?そうです、拒否は出来ても怖い黒服のお姉さんたちに強制連行される、、、美桜さんならあの人たちも倒してしまいそうですけど。ま、予定がないのなら私との予定を入れさせていただきますね。集合場所はメッセージしておきますので、また明日です。」
「おいおい、私の個人情報はお金持ちのお嬢様のソフィアちゃんには筒抜けかよ。現実ではソフィアじゃなくて知世ちゃんって呼ばないといけなかった。」
お風呂を済ませて後は好きな実況者の動画を見て寝るだけだったところに、彼女からの電話が鳴った。あの日に連絡先を交換してから初めての通話だった。
しかし、美桜が一言喋ったらマシンガンのごとく言葉を放たれて通話が一方的に終わってしまった。
明日予定がないことは確かなのだが、一方的なのもしゃくなのでバックレようと美桜は考えはしたのだが、本当に黒服たちがやってきそうなのでその考えはさっと忘れ捨てた。
「お、メッセージが来た来た。あの子もこの辺に住んでいるからそんな遠いところではないと思うからゆっくり寝ることは出来るはず?」
アプリを立ち上げて集合場所と書かれているところを確認してみると、あまり行きたくないような場所の近くであった。
現在の日本ではありえない物語に出てきそうな舞台、小学校・中学校・高校のそれぞれ大人数が在籍している一時期世界からも注目を集めた私立学校のすぐそばである。
あの学校には昔やんちゃしていたころに知り合った子が在籍しているはずで、少し鬱陶しいので行きたくはなかった。
「ま、俗に言うマンモス校で学校休みの日のはずだから会うはず、、、これってフラグだね。」
憂鬱な気持ちになり携帯のアラームを設定したら投げ捨てベッドに倒れこむ。
手探りでリモコンを探し当て電気を消して明日に備え眠りにつく。
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「ヒビキ、このゲームのモンスターは最初の街の近くだから弱いのか?」
「ええ、プロゲーマーにとってはそうだと思うわ。それにしてもあなたのそのアバター趣味が出すぎじゃないかしら?」
ヒビキはリア友であるプロゲーマーの陽音、プレイヤーネーム『ハル』を朝から最初の街まで向かいに行くとさっそくモンスターと戦いたいといいフィールドに出ている。
ハルのアバターは彼のリアルの身長と同じぐらいなのだが、髪は長くポニーテールで括られていて目はまん丸と子供のアイドルのような可愛さがある。
しかし、声は中性的からほんの少しだけ男よりであり会話をしてようやく男の娘であることがわかる。
彼が趣味でしているゲームで好きなキャラクターのことをヒビキは知っているのでそれに寄せて作成したのだろうなと思いつつ、なぜだか冷たい視線を送りたくなる。
「いいでしょ!自分から見えないのは残念だけど、いつものゲームで使っているアバター以上に動きやすくて使い勝手はいいぞ。敏捷をメインにステータスを割り振ってみたからより機敏だ。」
両手に装着をしているガントレットを打ち付けあい武器の使い勝手に満足そうな笑みを浮かべている。
格闘ゲームでも拳をメインにしたキャラクターを使用しているので、不人気ランキングに度々ランクインしているガントレットを選んだ。
ガントレットはゲームで重要なリーチが他の武器と違い腕を伸ばしたまでの距離しかない。
「あなたが使っているから機敏に動けるだけで、普通なら他のゲーム以上に武器の重さに振り回されるのにそれを軽々使っているのはさすがというべきね。」
ハルはモンスターを倒したことによるレベルアップと獲得したポイントとスキルを屈託のない笑みで確認しながら操作している。
「ガントレットのスキルはやっぱ属性付与なのは確かだな。『拳気『水流』』ってやつが使えそうなスキルで、ステータスは敏捷と筋力と耐久に割り振ってこれでよし!近接肉薄スタイルは徐々に作っていけば大丈夫でしょ。」
「あんたね、ガントレットは肉薄するしか戦い方がないでしょうが。これが、PvPだったらプレイヤーがどんなスタイルで来るのかは予想が簡単ね。」
「このゲームは高性能なAIを搭載したモンスターと戦うのだろ。それなら、スタイルが誰かに知られたからって俺が弱くなるわけじゃないだろ。」
「かっこいい名言をあなたが使うと台無しになるのはなんでなのかしらね。うちのリーダーが使うと笑いに変貌するけどね。」
ヒビキがそういうとハルは不機嫌そうな顔に変わり、ガントレットを装着した右手を握っては広げてを繰り返して何か物思いにふけている。
そして、突然何か思いついたのかガントレットを打ち付けあうと
「そうだ!そのリーダーと俺を戦わせてくれよ!PvPの機能はあるだろ。」
「え~、そんなめんどくさいことをサイレントちゃんは受けてくれるかしら。それに、レベル差が圧倒的になっちゃうでしょ。それだと不公平じゃないかしら?」
「いや、俺はプロゲーマーで、相手はそうじゃないんだろ?レベル差はハンデとして俺はプロとしてのプレイヤースキルという圧倒的な差があるからな。」
ヒビキは高笑いをして慢心をしているハルが負けるビジョンしか見えてこないし、サイレントがそもそもPvPを受けてくれるのかも怪しいうえ、橋渡しをしないといけないことが億劫になる。




