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ユートピア・オンライン〜ゲーム初心者の私が世界最大級のオンラインゲームに誘われたら〜  作者: 森の番人
第二章「Welcome, Gathering Place」

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第七十一話

「ということで前回イベントお疲れ様あんど~ギルドホーム購入おめでとう!乾杯!!」


「「乾杯!!」」

「...乾杯」


 イベントが終了して手に入れた報酬の中で本当に必要なものだけを残してその他を売却をして資金を手に入れた。それを泣く泣くギルドの会計係のヒビキちゃんに預けてギルドホームの下見に出かけた。

 いくつかいいところがあり、みんなで決めたところに急いで購入をしにいったが一足先に大所帯のギルドに購入されていた。


「だからってそんなに落ち込むことなんてないでしょう。ここだって第一希望に引けを取らないぐらいいいところなのに。」


「そうですぞ!あの大木に自然と建物が生まれたようなところもいいですが、こっちの森の中の小川の傍に佇む魔女の家みたいな感じでファンタジー感がありいいですぞ!」


「ほら、サイレントさん元気出してください。今日は余ったお金でたくさんご飯を食べて楽しみましょう。」


 みんなが理想のギルドホームを購入できずに落ち込んでいる私を各々の言葉で励ましてくれている。

 落ち込んでもお尻を蹴り上げて立ち上がらそうとする実家とは違って、こっちはとても優しく手を指し伸ばしてくれているようで涙がこぼれちゃいそう。こぼれないけどね!


「そうだな。今日は私たち『色彩の集い』のめでたい日なんだからね!ルイス飲み物!」


 ルイスに空いたグラスに飲み物を注がせてそれを一気に飲み干す。

 ゲームの中の食べ物、飲み物を食べすぎでもリアルでは影響はほとんどないらしい。

 むしろ、ダイエットをする人たちがゲームでたくさん食べてリアルではバランスの取れた食事を少量で痩せようとするぐらいだ。

 暴飲暴食ぎみに食べていたらソフィアちゃんがこちらを見て首をかしげていた。


「どうしたの、ソフィアちゃん?私に何かついてる?」


「いえ、ちょっと気になったことがありまして。」


「気になったこと?何もおかしいことなんてないと思うけど?」


 ソフィアちゃんは人差し指で顔、頬を指さして


「なんでサイレントさん、今回のイベントで仮面の効果を使わなかったのかなって。」


「「「、、、、。」」」


 ヒビキちゃん、ルイス、私は息ぴったりで無言になってしまった。

 新しい装備を使いたくて使いたくて今持っている装備のことをすっかりと忘れてしまっていたなんて恥ずかしくて言えない。


「『変貌しろ』、出来なかったですぞ。」


「ルイスてめえ、ぶっ飛ばしてやるからそこで直立不動の姿勢を取れよ。」


 そう仮面の能力を使えばもっと楽に戦えたのかもしれないことをイベントが終わってから気が付いて仲間から舎弟に降格したやつに馬鹿にされると屈辱のほかに感情が湧いてこない。


 今回のイベントの順位は21位というなんともいえない順位で終わった。クリアタイムは上位3位のチームと比べては遅かったもののそこまで悪くはなかった。

 しかし、他の要素の面で劣っていたことは否めない。

 取り巻きたちのモンスターの討伐数はかなり低かった。特にハヤトたちのパーティの討伐数が4人の私たちよりも少なかったという点がかなり響いたと思っている。


 そのため報酬で私にとって必要だったものが現時点で入手が出来ていない防具の素材だけであり、その他はアイテム作成用の道具だったりといらないものばかりだった。

 そして、ギルドホームのためにお金を出したため装備を修理したり新調するためのお金がほとんどない状態に陥ってしまった。

 だが、今の装備は片手剣はあと少し、短刀もそれなりに耐久値が減少してしまっているので急いでお金を稼いで次の冒険の準備をしなければいけなかった。

 みんなとの打ち上げを楽しんだ後にみんなはログアウトしてしまった中で私は一人だけお金稼ぎをしなければいけなかった。

 だが、それだけが理由ではない。


「仮面のことをすっかりと忘れていた自分の不甲斐なさに腹が立ってこのままログアウトしても寝るに寝れんわ。どこぞのリア充リーダーみたいな不甲斐ない気持ちをさっさと払拭してやるわ!」


 拳を握って空に向かって想像上の()()()()を殴って気分を紛らわしていく。時間帯は夜なので一人でこんなことをしていても周りに1人もいないので不審者と思われることもなく安心だ。

 第五の街から第四の街まで田舎道を歩いてモンスターを探す。

 まだイベントの疲れが抜けきっていないので集中力が疎かになっているので森などよりも開けた田舎道ならモンスターやPKにも強襲されることはほとんどない。


「PKも来たら来たで返り討ちにする気はあるけど、今日は金策だからこないでほしいから来ないでね~。お金もアイテムもない私に出会いを頂戴~。」


 お金もアイテムもない私には、いい出会い(モンスター)でお金を稼ぎたいという欲まみれになってしまっているのは自覚はある。

 お金を稼ごうにもメインの武器が壊れる前に何とか必要な金額を稼ぐ必要があるのだが、平原にモンスターが一匹も見当たらないのは何かがおかしい。


「運だけじゃなくてモンスターにも見放されてしまったのかな?それにしても一匹も見当たらないのは何かおかしいよな。」


 首を左右に倒して物思いにふけっているとゲーム内の月に目がいった。

 満月ではなく綺麗な弧を描いたような三日月で薄っすらと漆黒の雲がかかっている。現実では建物が多いし日本は山が多いからこの景色を見れたのはよかった。


「そうだ、試しにスクショでもしてみようかな。ゲームの中でやったことなかったからいい練習になるかも。あれ?」


 スクショの設定をして構えを取ったら真っすぐ進む道の先に揺れている何かがいる。

 海の中の海藻のようにゆらゆらと不規則に揺れながら少しずつ揺れている物体が増えているが、9本目からは増えなくなった。

 その揺れている根元を徐々に見ていくとそこにはぽつんと真っ白な毛並みをした狐が美しく佇んでいた。

 体はそこまで大きくないと思っていたら、狐がこちらに歩み寄ってきた。


「小さくないじゃん。少し離れていたから小さく見えてだけで、、、デカすぎじゃない!?3メートル以上あるんだけど。」


 9本の尻尾を持った狐は私の2倍以上の高さがあり、白い毛皮は一本一本が太く剣などを軽くはじき返してしまいそうなぐらい堅そう。

 すかさず短刀を逆手に持ち臨戦態勢を取る。

 狐はこちらを舐めまわすような目つきでこちらを観察をしたと思うと舌を出して口の周りをぺろりと舐める。

 こいつはかなりヤバい奴だ、と思ったら狐の白い毛が一瞬で緋色に染まっていく。


「『変貌しろ』!!」


 今まで忘れていた仮面の効果をすかさず起動させて、相手の背後から隠れるように迫ってきている炎を纏った尻尾の軌道から逃れるように緊急回避する。

 背中が焼けているのか物凄く痛いのだが、回避を止めると全身が焼き尽くされるのを考えるよりも体がアラートを上げているので転がり続ける。

 立ち上がったと同時に横なぎの攻撃が来ていたのですかさずスキルで弾き飛ばす。


『ジャストパリィ』


 尻尾から出ている炎のせいなのか微々たる量のダメージが入っている。

 おそらく最初の攻撃の背中に受けた炎のせいだろうが、仮面の効果があって微々たる量で済んでいる。あと、背中が少し涼しいけど確認する暇は一切ない。


『ぬふふふ、少しだけ楽しめるおもちゃかと思っていればそれなりに動ける羽虫ではないか。』


「しゃ、しゃべった!?狐のくせに!?」


『小娘!狐のくせにとはなんじゃ!!』


 狐は人の言葉を流暢に話すだけでなく私の言葉にもしっかりと返事をした。

 これはただのすごく強いモンスターではなく高度なAIを積んだモンスター、ユニークモンスターということになるのでは?


『我は九尾であり、高貴なる存在である。矮小な人間ごときにわかるはずがなかろう。さて、人間と会話をすると汚れてしまう。さて、退屈せぬよう踊り狂えよ。』


 私のことを舐めて遊び道具としか思っていないのは腹が立ったが、私はこの時までうぬぼれていたことにようやく気が付いた。

 九尾の攻撃を捌くことだけで精一杯となり反撃を何度かすることが出来たものの太い毛に弾かれてしまい有効打が一切ないまま弄ばれてしまった。

 そして、耐久値も低かった短刀が相手の攻撃に耐えきれずに砕け散り下半身が消し飛んでHPは全損。


『良い退屈しのぎになったぞ。また頼むぞ、小さいものよ。』


 その言葉が聞こえたと同時にリスポーン地点のギルドホームに飛ばされてしまった。

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