第六十三話
「マツ兵士さん、ここに来たけどあんまりここのことあまり知らないんですよ。移動中に簡単に教えてもらえないでしょうか?」
私はイベントに参加してしっかり戦えるようにレベル上げばかりしていたので内容をあまり知らない。もの知りなヒビキちゃんに聞くのなら、イベントのNPCに聞いてみたくなった。
今知っているのはどこかわからない所の拠点を攻めてきているモンスターから守るということだけだ。
流石に最終ステージまで進むことが出来たのに何にも知らないのはこれから挑むのに気持ちがもやっとしてしまう。
「サイレント殿は今回の冒険者募集に飛び入りで参加されたのですね。ここはオズ大陸の北部に位置するオース地方最大の大森林からのモンスターの侵攻を隣接する街から守る拠点になります。」
「ヒビキちゃん、オズ大陸って第一の街とかがある大陸とは違うところよね。聞いたことないんだけど。」
「ええ、そうよ。私たちが普段いる大陸とは別で、第六の街にある港から定期便があるのよ。それに乗ったら辿り着く大陸ね。けど、プレイヤー達はシステム的にブロックされていくことが出来ないの。」
なるほど、このイベントはこのゲームの世界に実在する大陸を舞台にしているってことらしい。
「この拠点は十数年に一度モンスターの大量侵攻を受け騎士団がその対応していました。その原因は長年調査をしているのですがわからず。そして、その大量侵攻の年が今年で過去最大の進行規模になっております。」
「なるほど、騎士団だけじゃ対応が難しいから冒険者にこの防衛を依頼したってわけか。」
「はい、その通りです。ですが、意外にも強いモンスターが3方向から攻めてきていまして騎士団長がその中でも別格に強いモンスターを対応しておられます。しかし、一箇所突破され中央で暴れていまして恥ずかしながら中央に配置されたものだけでは対処できず。」
「そんな困っている時にぶっとんだ作戦でモンスターを倒した我らがリーダーに目をつけたってわけですな。いや〜流石は普通の人がやらないことを平然とやってのける意外性がありますぞ。」
「確かにいくらゲームの中でも盾と爆発を利用した跳躍に、ターザンをしようとは誰も考えないですよね。意外性というのはまさにサイレントさんにぴったりですね。あああのリーダー、ルイスさんと私を見て睨まないでください。殺されてしまうと思うほど怖いです、ほんと。」
ただ仲間達がそういった風に私を見ているんだなと思って見ていただけなのだが。
変なことをいうと周りが引いてしまうでしょ、ほらそこのマツ兵士なんて顔をひき釣らせているでしょ。
私のどこか意外性っていうんだ。
「あはは、着きましたよ。あれが中央広場、普段はここに滞在している騎士たちが日々訓練しているところです。今は見ての通りあの2頭の夫婦のモンスターが率いる軍団に占領されています。騎士団のものだけでは取り巻きたちを抑えるのに必死でして。」
「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
ハヤトが手を挙げながら話に入ってきた。
何故か私を見て怯えているのはなんでだろう、彼には何も怖い目線は先ほどから向けてはいないというのに不思議だ。
「騎士団の一人一人が屈強なモンスターに敵わなくても何人かは強い人はいるでしょ?その人たちが何人か集まればあそこのモンスターも倒せるでしょ?」
「それが、二匹の夫婦は取り巻きをうまく使って強者のみを選別して2人のみを自分達の目の前に誘導します。そして、2対2の状況を作ります。そのせいで大勢まとまった戦力を少しずつ削られてしまいました。」
「あら、あそこのモンスターは第2ステージと同じAIを積んでいるのかしら。それなら厄介だわ。一匹でも厄介だったのに二匹になるなんて”鬼に金棒”じゃなくて”鬼に鬼”だわ。さっきのようリーダー1人で簡単にはいかないわよ。」
ヒビキちゃんの言う通り簡単にはいかないことはわかる。
今度は司令塔が一匹から二匹に増えたことでより手下のモンスターを細かく操ってくることになる。簡単な命令以外にこちらの行動に合わせてくるので面倒な相手だ。
「面倒くさくはないでしょ、それ?」
突然、頭がお花畑の魔法少女ちゃんが興味がないはずの会話に割り込んで入ってきた。このモンスターの数と高度なAIを搭載した強力なモンスターもいるのに面倒臭くないというおかしなことも言う始末。
「アン、どうしてそう思ったんだ?あの数のモンスターを掻い潜ってあいつらを倒すのはこの人数で挑むとかなり難しいと思う。」
「そうですぞ。あの数は意外性のあるリーダーでも流石に無理ですぞ。」
ルイスの後頭部を1発拳を叩き込んで調子にのった罰を与える。本当に相手がちょっとしたイジることのできる情報が出てくればペラペラ話し始めるだけでなくて擦り切れるまでネタを擦ろうとするんだから。いつか絶対にフレイヤ以上のヤバい人からとんでもない目に遭うことになるからな。
今のうちにその癖を治すのをリーダーとしてやってあげないといけない。あと流石の私でも腹立つし。
「その陰キャは放っておくけど、あのモンスターは強い人を分断するんでしょ?しかも、あのうっすい青色のやつとピンクっぽいぐらい濃い赤のやつに対して1人ずつやられるんでしょ。なら、サイレントともう1人タイマンが強いやつが選ばれてそのまま倒せばいいじゃん。」
「それもそうね。魔法少女ちゃんのいう通り、この中で強い2人があの広場で目立ってもらって選ばれる。その後は残った人は邪魔されないように取り巻きにリーダー格からの指令を邪魔すれば案外いけるんじゃない?」
それを聞いたら思わず手を大きく広げながらみんなの前に飛び出て言った。
「あのモンスターに選ばれるのは純粋な強さだけじゃなくて運も必要だから、ここはじゃんけんで!!」
「「「(お前は既に決定しているんだけどな、展開は見えてるからいいか。)」」」
「なんなのその目は。さっきみたいに恐怖を感じた人の目じゃなくて可哀想な人を見る哀れみの目はやめてよ!」
流石の私も強いやつと戦いたいのだけど生贄みたいに捧げられてから戦うのは嫌だ。人扱いされていないようなのは戦う気力が削がれちゃう。
それならと思い簡単でもいいから勝負を仕掛けてみたが、彼らだけじゃなくて私自身も既に結果はわかっていた。
そう、1番負けは私だ。2番目はソフィアという結果になった。




