第六話
道中は先にここを通った人たちが先にモンスターを倒していたのか、何事もなく新緑のダンジョンに辿り着くことが出来た。
大きな岩場の中央に丘があり、そこに不自然に掘られたような穴が開いていた。
「ここから新緑のダンジョンに入っていけばいいの?」
「そう、この穴から入って階段を下っていけばモンスターのいる階層に降りれるんだ。」
「ゲーム初心者であるサイレントはダンジョンについて知ってる?」
フレイヤは私に気遣ってくれているし、ダンジョンについてもあまり知らないので助かる。
「あまり知らない。何をしていけばいいの?」
ダンジョンといえば、ミノタウロスを想像してモンスターを外に逃さないための監獄のイメージがある。
「こういうゲームのダンジョンはね、最奥を目指して道中のギミックを解いたり、モンスターを倒して最後にダンジョンボスを倒すまでをするコンテンツよ。経験値稼ぎや特定のモンスターからのドロップアイテムの獲得に向いているの。」
モンスターはボスに辿り着くまでに何度も出会って戦闘訓練になるってことね。
しかも、ゲームの世界でも金策が必要でバイト感覚としてもいいのかな。
「なるほどね。私がこのゲームの戦闘に慣れるためにうってつけってことなのね。」
「まぁこのゲームが初めてならそうなるわね。(あなたならもう少し上のダンジョンでもいいとは思うけど。)」
フレイヤがまだ何か言いたそうだけど、本当に言いたいことがあるのならはっきりと言う性格なので問題があるわけではないだろう。
私はカインに交換してもらった剣と盾を装備をしてみると少しだけ武器が軽い気がする。
「へぇ、剣と盾の片手剣の剣士スタイルなのね。そのスタイルだと敏捷性のAGIと器用さのDEXのステータスを上げたらいいバランスが取れそうね。」
「何そのステータスみたいなものは?ステータスって自分で変更することが出来るの?」
「え?モンスターを倒した時に何か出てこなかった。レベルアップと一緒にステータスポイント獲得とか。」
確かに、ゴブリンを倒した時に何か表示をされたけどそれがどうしたのだろう。
「出てきたけど、ヴァンが先に進んでいきそうだから早く追いつこうよ。」
ヴァンは昔から目を離すとどこかに行ってしまいそうな勢いでどんどん突き進んでしまう。なので、見失わないようにしなければいけない。
「ちょっと、歩きながらでいいから説明するわ。」
「え、うん。わかったわ。」
フレイヤがヴァンを追いかける私の肩を強く握って、話を聞かせようとしてくる。普段の真剣で怖い顔を近づけてきたので少し驚いてしまう。
「いい、ステータスポイントは自分のステータス画面からそれぞれのステータスにポイントを振ることが出来るの。ポイントを振ることでステータスが上がって強くなる。基本的にはゲーム開始時にもらえるポイントを増やすにはレベルアップをした時にもらえるの。」
「ああ、だからモンスターを倒してレベルが上がった時に何かポイントがもらえたのね。」
フレイヤは呆れたようにため息をつくが、いきなり顔つきが部活動でよくみたきりっとしたものに変わる。
「ヴァン、前方から敵が来るわ。3体。」
「了解、植物系のモンスターだな。サイン、お前の装備だと前衛職だからこのモンスターを惹きつけてくれ。」
先頭にいたヴァンから呼び出されたのですぐさま装備を構えながら走っていく。話は途中だったけどモンスターが出てきたのならいくしかないし、ようやくゴブリン以外のモンスターと戦えると思うとテンションが上がる。
「このくねくねとしたのが植物系のモンスターなんだね。どこが頭でどこが胴体なんだろう。」
「はは、そういうのが気になるのなら色々あるクエストの中でもモンスターの書というのを集めたらいいんじゃなか。モンスターの気を惹きつけてくれ。」
そういうと植物系のモンスターはこちら?を向いてのそのそとこちらにやってくる。
頭にあたる部分は綺麗な真緑の色をした双葉がありその付け根あたりには大きな玉のようなものがある。そこが弱点であることは明白だ。
そこからは大きな幹が螺旋状に伸びており、足はタコのように複数ある。そして、腕のような根っこが幹から生えている。
「あ、モンスターの頭に名前がある。『ゼッツリンイーベネンー平原の若木』若木がモンスターになったということなのかな。」
腕の根っこを横から振り回してきて攻撃してくるので、走って向かって滑るようにして掻い潜る。植物であるのに脇に潜られると距離を取るか、むしろ接近をしなければいけないのだが、動きの遅い植物にはそんなことはできないはず。
「弱点もーらい。」
剣を玉の部分に突き刺して引き裂くように切り裂くとモンスターは大きく体を仰け反らして暴れ始めた。やっぱり弱点であったのでもう一度狙おう。
「暴れているから狙いがつけにくい。足元の根っこも思ったより伸びてて接近しづらい。」
もう一度狙おうにもモンスターは先程以上に動いており、こちらを乱雑に攻撃をしてくるので対処するのが大変だ。
動きから攻撃を予測をしようとしたが、しなる攻撃を受けたことがないので躱すので精一杯になってしまう。
「サイレント、次の大振りでモンスターから離れて。魔法で止めを刺すから。」
フレイヤから指示をもらったので、モンスターの大振りをさっそく誘うために相手から少し離れて狙われやすいところまで引いてみると予想通り大振りがきたので体をそらしてみるとうまいことすり抜けるかのように綺麗に横を通り過ぎる。
あとは、盾の腹で思いっきりモンスターを叩きつけその反動で後ろに下がる。
「ナイス避けタンクだ。フレイヤ、頼んだぞ。」
「わかってるわよ。『フレイムランス』」
フレイヤが杖を高く掲げると上空に炎が槍を形成していく。そして、杖をモンスターに振り下ろすとめがけて飛んでいく。
モンスターは大振りをしていて、私に体勢を崩されているので避けることはできず直撃する。
モンスターのHPは瞬く間に0になっていき、体が爆散して倒すことに成功する。
HPの減り具合を見る感じ、あの植物系のモンスターは火が弱点であることは間違いなさそうだ。
「フレイヤ、あいつの弱点は斬撃か風だろ。なんで火属性の魔法を使ったんだ?」
「低レベルのモンスターに耐性のある攻撃でどれぐらいダメージが入るのか気になって撃ってみたの。」
見た目と反してあの若木の弱点は火属性ではなくむしろ燃えることに関しては強いってことらしい。若木なので体にたくさん水分を含んでいるので燃えづらいのだろう。モンスターの設定が弱点とかに繋がっているのかな。
「そんなこと言って〜サインにかっこよく魔法を打つ姿を見せたかったんでしょ。しっかりと魔法を当てたときの顔がとっても気持ちよさそうだったよ。」
「うっさいわ、ボケ。まぁ、魔法はあんな感じで打つのが多いからサイレントも覚えておきなよ。基本魔法はあんな感じで味方と連携しながら打つタイミングを測るから敵を引きつけつつ味方の攻撃を被弾しないように避けること。」
「そうそう、正面の敵だけじゃなくて、後ろの味方の攻撃にも目をつけておく必要があるから大変なんだよね。」
ヴァンが腕を組みながら頭を縦に振っている。前衛っぽい見た目をしている彼が頷いているってことは私のような敵に接近して戦う人には必須のことなのかな。
「ゲームを始めたばかりだから覚えることがたくさんあるのね。頑張らないと2人に追いつけないからね。」
やることがたくさんあるけどそれが楽しみで気合いが入って思わず拳を握ってしまった。
けど、2人はなぜか苦笑いを浮かべているのがよくわからない。
「そうそう、フレイヤ。ステータスポイントの話が途中だったよね。」
「そうね、ステータスポイントはステータスを形成している要素にそれぞれ振ることが出来るのよ。」
話しを聞いていると、ステータスは以下のものがあるとのこと。
・体力・・・HPに大きく作用する。
・力 ・・・筋力に関する。物理攻撃に影響する。
・器用さ・・・命中力に関する。命中に関する補正に影響する。
・丈夫さ・・・耐久力に関する。防御力に大きく影響し、HPは少し。
・敏捷性・・・素早さに関する。回避力に補正があり、素早く動くことが出来る。
・知力 ・・・賢さに関する。魔法の攻撃力に影響する。
・精神力・・・魔法影響に関する。魔法に対する耐性、魔力量に影響する。
・運 ・・・そのまま。
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