第五十八話
『ステージ1クリアしました。ステージ2に移行します。』
耐久力の高いボスモンスターを倒すとゲームマスターからのアナウンスがこの一帯に鳴り響いた。
今回のイベントは、ステージがわかれているらしいが、幾つステージがあるのだろうか?と思ってしまうが誰に聞いてもわからないだろうからなるようになると思うことにした。
ステージを移行するというので開始と同じように転移が始まるかと思ったのだが、何も起きない。
「おい、そこの冒険者ども!!モンスター共の第二陣が迫ってきている!あっちの東の砦に向かって兵士たちと合流しろ!」
突然、少し離れた位置にそびえたっている木製の即席の見張り台にいる軽装備の兵士がこちらに向けて命令をしてきた。
無精ひげが目立つ中年のおっさんに命令されるとなんだか腹が立ってしまう。
「ちょっとサイレントちゃん、あのおじさんが指さしていた方に行くわよ。」
「え?あのおっさんの命令に簡単に従うの?なんで?」
「サイレントさん。イベントの情報を読んでいないのですか?このイベントで私たちプレイヤーは大量のモンスターが街へと進行しているのを防いでいる砦からの依頼を受けた冒険者という設定なんです。あの見張り台の人は私たち冒険者がどこで戦えばいいのかをナビゲーションしてくれます。」
「あ、そうなのね。私全く情報を見てなかった。」
ヒビキちゃんは私の頭をいつものようにぐしゃぐしゃとして最後にポンッと叩いて兵士のおっさんが指さした方に道なり進んでいく。
いつも行動がお姉さんの行動ではなく、頼りになるお兄さんで彼女の格好や口調とは真反対だ。
「うちのリーダーは本能で動くからね。周りがその分しっかりしてあげないといけないわ。ま、それでギルドとして引き締まるからいいけど。」
「それってただ立っているだけの無能リーダーになっていない。」
「「「that's right」」」
「3人そろって英語で言われるとものすごく凹んでしまうんだけど!?」
ハヤトたちは私たちのその様子を見て笑っていて少し恥ずかしいし、リーダーとして情けないと思ってしまう。
「ほら、私の情けない姿を見るんじゃなくてみんなさっさと行こうよ。ステージ2っていうから次も取り巻きを倒してまたボスが出てくると思うからね。」
「お、不器用ながらリーダーをやっていますぞ。」
ルイスが汚ぇ笑いでこちらを煽ってくるのが無性に腹が立つ。
後頭部をひっぱたこうとするが頭を前に倒して避けられてしまったので、無防備な尻に全力で蹴りをお見舞いしてあげた。ナイスショット!
「痛いですぞ!体力が異様に減ってしまいましたぞ。拙者の耐久力は紙っぺらなので場所が場所なら流石に致命傷になってしまいますぞ。」
「別のギルドの俺が言うのもなんだけど、女性にそんなことを言うのはやめておいた方がいいぞ。彼女が闇の存在だったとしてもね。」
「ハヤト殿それは言い得て妙ですぞ。彼女はそっちの属性を持っている感じがしますぞ。」
人見知りの激しいルイスがいつの間にかハヤトと仲良くなっているのは不思議だな。
もしかしたら、見た目は陽のオーラを放っている感じなのだが、中身の方のリアルでは陰のものでお互い無意識に通じるものがあるのかもしれない。
ルイスは一度でもまともに話をすることが出来れば次からは怯えられることは無くなる。ただし例外は一名いるのだが。
子犬のルイスがあんなに楽しそうにしているところを見ると姉心としては嬉しいが、先程の発言は今は見逃してこのイベントが終わったら半〇し確定だね。
楽しみだな、スカーレットから聞いたことを実践してみるのもいいかも。
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無精ひげの兵士に言われた方角に向けて数分間移動をすると東の砦と思われる場所に到着した。
名前の通り小規模な城である砦であり、中世のヨーロッパの城の小規模版と思わせる建造物のすぐ隣には大きな川が流れていて城と対岸には4車線ぐらいの幅を持った橋が架かっている。
その橋の上ではたくさんの兵士とモンスターが戦いを繰り広げていた。
先程戦ったモンスターもそこにはいるが他にも小型の恐竜、獣脚類である二足歩行の軽快な動きを見せるモンスターも兵士と戦っている。
「恐竜ですよ、恐竜。私初めてみましたよ。」
恐竜のモンスターを見てはしゃぐのは男子と相場が決まっているので、ルイスやハヤトとその取り巻き達がその対象かと思ったのだが、予想に反して一番はソフィアだった。
リアルでは本当のお嬢様であり男の子っぽさなどはほとんど見せていなかったが意外な一面を発見した。
「それよりもあれって何ですか?橋の奥側に何だか変なやつがいない?」
「そうね、魔法少女ちゃんの言う通りね。小型モンスターと同じ二足歩行だけど少し体が大きくて耳が少し大きいわね。あれがステージ2のボスかしらね。」
何か騒いでいる魔法少女が言った通り一匹だけ別のモンスターがいて、小型と四足歩行のモンスター達と何やら会話している素振りがある。
モンスター同士が会話をしているのは前回イベントでも見たのだが、今回は獣のような知性があるようには思えない存在が会話しているのは不思議だ。
「なんだか司令塔みたいだ。」
「あ、思い出した!この前のアプデで追加されたモンスターの行動じゃないか。」
ハヤトがいきなり大声で叫んだ。
「なにその追加された行動って?」
「ああ、ゲームでは基本的にはモンスター同士で連携は取るもののほとんどが決められたものなんだ。だから、プレイヤーとしては連携のパターンを覚えてそれを逆手に攻略していくのが定石なんだ。けど、今回のはボスモンスターに限定して取り巻きの動きや連携を状況を把握してより強力な連携を指示するようになったんだ。」
「だから?」
「このステージ2はより臨機応変に対応しないとかなり厳しいってことで、長引くとこちらがどんどんと不利になるってことだよ。」
なるほど、AIなどを駆使して段々と強くなっていく敵ってことなんだろう。PC関係とかアルゴリズムとかは頭良くないし知識もないからよくわからないけどそういうことなんだろう。
「よし、作戦はみんなでボスに向かって一直線に向かって最速最短で首を取りに行くでどう?長引いてめんどくさいことになってしまうのを防ぐためにね。」
「言い方が悪いけど短期決戦の方がいいのは間違いないね。みんなはどう思う?」
ハヤトがみんなに尋ねると誰も否定することなく同意の意思を示した。
私の何倍ものリーダーシップを発揮しているのを見るとなんだか眩しく思えてきた。
「さて、陽キャに当てられたうちのリーダーを放っておいていきましょ。」
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