第五十三話
「はぁ、ようやく神官の攻撃に慣れて被弾も少なくなったわ。」
『神秘が眠る墓』のボスにトドメの一撃を与えて爆散させて、経験値を取得しレベルが上がったことをシステムが通知してくる。
「これでレベルが48まで上がったからそろそろ目標としてはクリアになるよね。にしても、あの墓守の少女の思念体が毎度入る度に何体も廊下で座り込んでいたのは恐怖でしかないよね。」
2回目にダンジョンに入ってから気がついたことなのだが、思念体が持っている武器は一体一体持っているものが全く違っていて、斧を持っている少女たちが襲いかかってきた時は今日の夢に出てきそうと少し恐怖してしまった。
一度だけ思念体の少女が1人しかいない時には倒してみようと挑んでみたのだが、普通にボスよりも小回りが利いて呪いという状態異常も付け加えるだけでなく、持っている武器のスキルを巧みに使ってきた。
一番大変だったのは自分よりも身長が低くて下からの攻撃に慣れていなくてタイミングが何度もズレて致命傷をもらってしまいそうになってしまった。
そう、この子がボスの方がいいのではとも思った。
「さて、ボスのドロップアイテムもいいのは出なかったけど、ここに挑み始めて3日かかってレベルが一気に上がったけど、48に近くなってからあんまり上がらなくなったな。そろそろ別の強いダンジョンに挑まないといけないのかな?」
そう思いながら転移陣に乗ってダンジョンの入り口に戻って時間を確認していると、フレンドからメッセージが届いたので誰からかとそちらを確認する。
相手は私が知る中で最恐の女であるフレイヤからであった。
『最近ギルドを結成して、ギルドリーダーになったんだってね。通りすがりのルイスから聞いたわよ。そのことは置いておいて最近プレイヤーを狙うプレイヤーキラーがたくさんいるんだって。野良の人とパーティを組むのなら気をつけなさいよ。多分、あんたの嫌いな連中だから反撃する際には逆通報で垢バンされない程度にしなさい。以上。』
「忠告すでに遅し、なんだよね。既にプレイヤーキラーには出会っているし、返り討ちにもしちゃったし。けど、弱い相手だったからよかったけど本当に強いプレイヤーだったらどうしよう。野良とパーティを組むのは忠告通り気をつけておこうかな。」
メッセージ画面を閉じて第三の街の転移門に向かう。初日のプレイヤーキラーからの襲撃を受けてからは、道中のモンスター以外は快適に移動することが出来た。
普通にゲームをしていたらそうそうプレイヤーからの襲撃を受けることなんてないのだろう。
なので、簡単に街に着いたと同時にまたメッセージが飛んできた。
今度は誰なのだろうと思い確認してみると我らが女武器屋店主のカインからであった。
『おい、頼まれていたものが出来たぞ。今週中に取りに来い。それだけ。』
なんて愛想なんて一ミリもない簡素な文章だけだった。
「そっか、カインに新しい武器が欲しいから作ってて頼みに行ったんだったね。レベルも上がったことだし使えるようにはなってるはず。」
数日前に1人でカインの店に行ってイベントに向けた武器を作ってと頼みに行き、色々と何がいいのかを話して前々から使ってみたかったものを作ることにした。
段々と作業じみたダンジョン攻略にも嫌気がさしてきたので、気分転換としていいタイミングで連絡が来てくれたのは嬉しいね。
転移門にスキップをしている気分で早歩きして第一の街のカインのお店に向かう。
「こんにちはぁ!カインきたよ、はよ武器ちょうだい!!」
「朝っぱらからうるせぇ!」
ダンジョン帰りでテンションが上がっていたから早朝ってことをすっかり忘れてて怒られちゃった。
それはそれ、これはこれとしてカインが座っているカウンターまで一直線に向かっていって両手のひらを向けて頼んでいたものをせがんでみる。
「金払ってからその手を出してこい。」
「ちぇ、ダンジョンで稼いだのと襲ってきたプレイヤーキラーから搾取したお金どうぞ。」
「あ~はいはいどうもって、近頃頻発してるあいつにもう襲われたんだ。早いね。」
カインは私がプレイヤーキラーに襲われたっていうのに心配1つせずにさらっと流された。女の子同士で普通何か危ない目にあったら「ダイジョブ?」とかの一言が第一声にあるとは思うのだけど彼女にそれを求めるのはお門違いってことだろうな。
「あんたならそこら辺の流行りに乗っただけのやつなんて相手じゃないだろ。むしろやり返しすぎないか心配だよ。」
「あはは、フレイヤにも同じこと言われた。」
カインはフレイヤという言葉にいつも通りびくっと体を震わせたが、平常運転に切り替えて裏に私が頼んだものを取りに行った。
「ほら、これがあんたの新しい武器『黎明』という名の短刀だ。盾と合わせては使用するものではないけど、相手が重装備なら攻撃に補正が入る。」
「へぇ、なら防御力が高そうな人達にもいいダメージが入りそうだね。細くて短いけど意外と重いんだね。」
「あんたが使っている武器の素材の金属よりも比重が重いんだよ。だからちゃんと攻撃さえすれば今使っているのよりダメージが多く入るはず。」
今使っている剣よりも刀身は短く、細いのだがずっしりと金属らしい重さを感じる。
ゲームを始めたころから刀を使ってみたいなと思っていたのだがそれがようやく叶う。
ちょっと嬉しいのと刀の波紋が美しいので眺めていると横からカインの手が伸びて視界を遮ってきた。
「サイレントはこのゲームの刀の特性は知っているの?」
「武器ごとに何か特性が違ってくるの?知らないや。」
カインはため息をつきながら改めて椅子に座りなおした。
「このゲームの武器には現実に近いか独特の特徴があるんだ。その短刀などの刀は横からの衝撃に弱く耐久値が大幅に減るし、攻撃を受け止めることには向いていないとか。装飾が多い武器も耐久値が低いとか、リーチが短いものよりも長いものは空気抵抗を受けやすいって設定で扱いにくくなるとか。妙に現実に近い部分があるんだ。」
思ったよりも色々と学ばないといけないことが多くあるんだね。
というよりかこんな現実に近いことがあって設定などを知り尽くしても全部が全部知ることは途方もないことになりそう。
「そうそう、あんたみたいに色々と設定を知ってどうしようかと考えようとすると大変なことになる。だから今自分が使っているものについて考えるだけにとどめておけばいいだろう。」
「うん、私は頭を使うことは苦手だしアドバイス通りそれだけにしておくよ。。。」




