第四十七話
「帰ったら工事も終わっていたから家事も集中できてよかったんだよ。重機の音って何か不快感があるんだよね。」
「そうかしら?私は夜中でもない限りはそうは思わないけど。」
「ヒビキちゃんは家のすぐ横当たりで工事をされたことがないからそう思うんだよ。」
お金持ち親子との恐怖のカフェタイムで疲れたのだが、すぐさま布団に入って寝るのも何だかなと思いゲームにログインするとヒビキちゃんがスキップしながら転移門から出てきたので首根っこ捕まえて誘拐してきた。
ヒビキちゃんも予定という予定がなかったらしく大人しく誘拐されてくれたので先日来たばかりの店の奥で世間話をしている。
「ヒビキちゃんの住んでいる所って綺麗に開発済みのようなところなイメージなんだよね。」
「そうでもないのよ。思ったより交通の便が悪くて電車が近くにないから車がない人たちはバスがメインになるんだけど、住民が多いからバスがぎゅうぎゅうなのよ。」
「電車はともかくバスでぎゅうぎゅう詰めは気持ち悪くなっちゃいそう。でも、ヒビキちゃんは自転車でバスより早く移動してそう。」
「はは、バスよりも早くは無理だけど雨でもない限りは自転車を使って運動ついでに移動してるわ。大きな買い物とかには車を使っているけどね。中古よ、サイレントちゃん。」
「ちぇ、高級車のイメージがあったのに。」
「私は高級車持っちゃうと傷つけてしまうのが怖いから運転できなくなってしまうわ。」
「ふーん、そういうものなのね。私も高いものを買っちゃうともったいないってなるわ。」
ヒビキちゃんは紅茶を一口飲むと温厚な顔から真剣な顔に変わった。いよいよあの話をするときがきた。
「さて、サイレントちゃん。ギルド設立をしたことで今後やることは大きく分けて3つあるのわかる?」
「うん、一つは今度のギルドまたは大規模パーティーを対象としたイベント。」
「ギルドメンバーにも周知させておかないといけないことね。」
「二つは目標かな。なにも目標がなければギルドとしての活動がぐだぐだになるからね。」
「これも周知してからみんなで決めるのがよさそうね。最後は?」
「ギルドホームを購入すること。これが一番大変なことだよね。」
そうギルドが活動をするための拠点が今現在ない状態である。
拠点がなくても活動するうえで問題はないことはないが、ある方がメリットが大きい。
まずは、ギルドメンバー共有の倉庫を保有することが出来る。これはギルドの拠点によって保有量は変わってくるが一番小さな拠点だとしてもプレイヤーが所持できる量の何倍にもなる。ギルドメンバー間でアイテムの交換をする際にも直接会わなくても倉庫に入れておけば簡単に出来る。
次は個人的なものになるがハウジングが出来ること。生産職にとっては命と言われているのだが、建物の周りを子供の遊び場のようにしたり、内装で、ある一角を鍛冶場にするなどすることも出来る。今のメンバーの中には生産職が1人もいないのでそれは関係がない。
自分が覚えている限りでは、転移先として設定が出来るということだ。転移門からとゲーム開始地点、HPが0となってデスとなって場合に、拠点を選択が出来る。
「まぁ拠点があるだけで選択肢が色々と増えることでゲームがやりやすくなるからね。でも、サイレントちゃん、拠点を買うのはお金が結構かかるだけじゃなくて維持費もそれなりに必要なのよね。」
「そこなんだよね。私はまだゲーム始めたばかりでお金なんてないし、お金を持っている人に負担を増やしたくないからね。」
「そこはなるべく安いけど、立地面と広さがあるところにしないと2人がうるさいかもしれないわね。」
「ヒビキちゃんならいいところ知っていない?」
するとヒビキちゃんが気色の悪い笑顔になってこちらに画面を見せてきた。
「第二の街の郊外エリアの端っこにある大樹から作られたログハウス風の建物よ。今は仮押さえの機能で2週間は誰にも取られないわ。後はみんなで行って見て決めましょ。」
「流石お姉さま。ルイスはどんな時でもやってくるから連絡は後でいいや。無理って言っても必ず連れてくるから。で、問題はソフィアなんだけどリアルでも忙しいそうだしな。」
頼んでいたケーキが来たのでそれを一口で頬張ると気持ちがふわふわとしてソフィア問題なんてどうでもよくなりそう。この店のものもいくらか食べたけどモンブランが一番だと思うな。
でもゲーム内のケーキよりも現実のケーキのほうが味わいが深くていいから今度買いに行こうかな。
「あら、サイレントちゃん。ゲーム内ではリアルの話は厳禁だけど、ソフィアちゃんのリアルと仲がいいの?」
「仲がいいというか偶然出会ってね。しかもソフィアの親から知り合いになって。」
「あら、まるで物語の主人公みたいね。その話を聞きたいわ。」
ヒビキちゃんは胸の筋肉と目を輝かせて体を乗り出してきた。リアルの事はあんまり話すのはよくないと日頃から言っているヒビキちゃんがこう乗り出してくるとは矛盾だ。
直感にはなるけど、ヒビキちゃんとも近いうちにリアルで会いそうな気がする。この直感って昔から
よく当たるから重要な部分だけ省いて話せばいいかな。ソフィアがオーディンの会長の娘とかそういうことはね。
ヒビキちゃんを信じてはいるのだが、ゲーム内の常識を守りつつ省くところは省いて話しをした。
「サイレントちゃん、やっぱり主人公なんじゃないの?私はその物語の脇役かしら。」
ヒビキちゃんは冗談交じりで頬杖をつきながらそういうが、横顔は何か寂しそうな雰囲気を感じる。
私を物語の主人公みたいとは言うけどヒビキちゃんだって主人公。
昔お世話になった人がどこかで使いまわされた言葉を言われたことがある。
『君は君だけの物語があって、その主人公なんだ。喧嘩でも好きなことも嫌いなことも全部やりまくりな。今の内にいろいろやってなんぼよ。』
その人は本当に無茶ばかりをして私を助けてくれた恩人のような人。今も日本中を駆け回っていると連絡はもらっている。
「私の物語では脇役かもしれないけど、違う物語では主人公だよ。ってなんでこんな話しているだっけ?」
「ふふ、それじゃソフィアちゃんの予定に私たちは合わせようかしら。連絡はサイレントちゃんお願いね。」
「了解。ヒビキちゃんはギルドの拠点の購入と維持費のための金策を調べておいてね。私はそういうの調べるのが苦手だし偽情報とかに踊らされそうだし。」
「わかったわ。それじゃ、今日は解散としますか。」
「了解、ごちそうさまでした、姉貴」
「いやいや、ギルドマスターになって初っ端のご飯で奢られるなんてどうなのよ。」
「私なんてただの看板娘と一緒よ。」
ヒビキちゃんは席を立ってこちらに来ると頭をぐしゃぐしゃと撫でまわして『今度はお金貯めておいて奢りなさいよ。』と言って会計をしてくれた。
持つべきは頼れる姉貴だけど、ソフィアに連絡とるのが億劫だな。
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