第四十話
「よう、20位様。優等生らしく授業開始30分前にちゃんと席に座って眉間にしわを寄せて考え事ですか?」
「麗香、優等生から私が程遠いって知っているでしょ。」
今日は朝いちから授業があったため、先程終わったばかりのくそババアの訓練で脳みそは溶けて鼻から出てきそうなぐらい使いまくったのに休む暇もなく外に出る羽目になった。
そこに麗香のめんどくさい一言が疲労を通り越していらつきに変わってしまいそうだ。
「それはもう知っているわ。で、なんでそんなに疲れているの?またゲームなの?」
「そうよ。レベルが30になったから職業クエストを受けに行ったんだけど、とてつもないくそババアに色々特訓という名のいじめを朝まで受けていたんだよ。」
「美桜ぐらいのプレイスキルがあれば職業クエストなんて難しいことなんて一切ないと思うけど。。。もしかして‼上級職のクエストでも発見したの?あれって普通の職業クエストと違ってクリアするまでがかなり大変だって聞いたけど。」
麗香が机に乗りかかってくるぐらい前の席から顔を邪魔なぐらい近づけてくる。本当にこの娘はゲーマーなのねと改めて思う。
恐ろしいものを口の奥に秘めた顔を鷲掴みにして押しのけてあげる。
「たぶん、麗香の言う通り普通のとは違うものだと思う。なんかクエスト名にexってついていたんだよ。で、クリアしたら『忍者』になってた。」
「それって『忍』の上位職ってことじゃん。忍びって習得条件が確実にわかっているものの一つよ。ステータスで素早さが一番高くて次に力でプレイスタイルがかなり動き回ることなの。で、第六の街で怪しい老婆のトラップ屋敷に挑むの。けど、挑むことが出来るのは一度だけ。」
私はそのクエストを受けるための条件がばっちし揃っているんだけど。狙ってはないよ。
「あんたって昔からリアルラックが高いとは思っていたけど、ゲームでもラックが高いなんて。少し分けて頂戴。」
麗香が胸元に向かって顔をぐりぐり押し付けてくるが痛い。
そう思うとすぐに離れてしかめっ面になっていた。
「あんたの胸硬くて顔痛くなったからこれで止めておくわ。」
私は胸が小さいことをコンプレックスに思っていてそれを知っているのに目の前で堂々と言うなんて言い度胸だなこのくそお嬢様は。けど、今はそんなコンプレックスについて言われても気にはならない。
「あのトラップハウスをなんとか最後まで乗り切ったのはいいけど、最初の罠と比べると天と地の差があるものをずっと挑み続けたんだよ。モンスターから悪路を走って逃げたり、見つからないように出口まで隠れながら進んだり。見つかったら問答無用で殺されて入り口からやり直し。」
朝まで続いたあの地獄が数年前の記憶のようにおぼろげになっているよ。もう、ババアを殴るだけでは済まさないぐらいの怒りがほとんどの記憶を占領されちゃったもんね。
「美桜の目がものすごく遠くを見つめてるの怖いわね。ま、私の職業の『魔女』は上位職がないことは確認済みだし、魔法系の上位職のなり方が不明だけど魔女はそれらと比べても十分に強いからね。」
「へー、性格からして魔女っぽくて似合ってるわ。残忍な魔女っぽいし、悪役に向いているね。」
「よし‼授業後にはあんたをボコしてやると思ったけど、次にアプデについて話してからにしてあげる。」
今はまだ未定の大型アップデートのことなのだろうか?昨日ゲームをする前に公式サイトを覗いてみたけどなんの情報もまだ出ていなかったけどな。
そもそも、今の状態でユートピアについて知らないことが色々とあるんだけどな。
「話しっていうほど情報があるわけじゃないんだけどね。」
「ふーん、それで公開?された情報を教えてよ。私、頭が回っていないから簡単にね。」
フレイヤは前の席から荷物を持って、隣に移動して体をぎゅっとくっつけてくる。正直、疲れた状態ではなんか腹立つ。
「でさ、情報っていうのが大きく2つあるの。一つは新しいフィールド、もう一つがモンスターについてなの。」
フィールドって聞くと新しい大陸についてなのかな。港にある壊れた船を修理して次の大陸への航路が開かれるってなんか聞いたことがある。次のアップデートが導入されれば勝手に船が直るってこと?
モンスターは今ではユニークモンスターがなんか色々といるらしいけど、新しい種類が追加される?それともモンスターに使われているAIが変わってより強くなるのかな?
「ちょっと自分の世界に入らないで。まずは、フィールドについてなのだけど美桜も聞いたことがあるでしょ、新大陸について。第六の街に壊れた船が何隻か置いてあったと思うけど、あれが修理されるらしいの。」
「やっぱりそうなんだ。けど、私第六の街に辿り着いたらすぐさまくそババアの特訓で船は見ていないのよ。今日授業が終わって仮眠取ったら行ってみようかな。で、新大陸ってどんなところなのかはわかってる?」
顔を横に振って知らないと答えられた。まぁ、新大陸に行けるって話が確定したってことだけでいいことだと思う。こういった新大陸ってジャングルのような自然が溢れたところとか、砂漠地帯のような過酷な環境だったり旅行でも行こうとは思わないようなところがあればいいなと思う。
「で、次にモンスターの事だけど、今までユニークモンスターていたじゃん。」
やっぱりユニークモンスターのことだ。想像通り新しいモンスターが追加されるってことなんでしょうね。こう想像通りだったら何故か気分が少しダウンしてしまうそうなんだよね。
「ユニークモンスターの中で、階級があるってことが発表されたの。」
全く想像と違った情報であったので、眠たくてエンジンがかかっていない脳みそが一瞬で点火した。
ユニークモンスター、ゲーム上に何匹も存在はしておらず決まった場所、時間、気候など条件は一切公開されておらず強さはそこら辺のモンスターと比べ物にならないぐらい強い存在。
私自身も遭遇し、なんとか倒すことを成功した。そのモンスターの心臓とも呼べる核の色を変更して様々な属性の魔法を扱うスライムと対峙した。遭遇する前から多くのプレイヤーと戦闘をしていたのかHPは大きく削れていた状態だったので何とか勝利することが出来た。
そのぐらい強い存在であるユニークモンスターに階級があるとは驚きだ。
「階級は大きく4つに分けられていて、一番下から『一般』、『猛者』、『歴戦』、『魔王』。ランクが1つ違うだけでステータスどころか行動AIも全く別物になるらしいわ。」
私自身が倒したスライムはどこに属するのかは何となくわかる。『一般』だと思う。初心者でステータスも低い私が勝てて、行動もいくつかパターンがあったので弱い部類じゃないのかなって。
つまりは次のアップデートであれよりも強いモンスターと戦う機会があるって思えばもっともっと強くならないといけないね。
「あなたが今考えていることが容易に想像出来るわね。流石に一人で挑むのは無謀ってことだけは覚えておきなさい。ヴァンなんてかなり強そうなユニークと出会って1分も経たずに負けたらしいけどね。」
「でも、そんな強い相手を独り占めできると考えればワクワクするじゃない。」
頭に向かってゴツンと拳を叩き込まれた。鉄のように固くて痛い。
「そんな赤の他人とか誰彼構わず一緒に戦えって言っているわけじゃないよ。」
「え?それじゃあフレンドと一緒とか。」
「そうそれよ。でもただのフレンドじゃなくて、特に仲がいい人たちの集まりを作って情報を共有したりイベントを一緒に攻略すればいいの。その集まりの事を『ギルド』っていうの。」
「ギルド?なんか歴史の教科書でチラッと見たことがあるけど。」
「何か共通の目的だったり、ただの談笑するためだったりとかプレイヤー同士の集まりの団体が『ギルド』。私もギルドに入っているの。」
「麗香が入ってるギルドってガチガチの戦闘狂ばっかりぽいけど。」
「まぁ、あながち外れてはいないわ。私が所属しているギルド『ハウンドドッグ』はイベントで最前線で戦うことを目的としているの。ヴァンもいるわ。どう、入る?」
「やだ。麗香とは違うギルドの方が絶対に楽しいと思うし、既に強いギルドって魅力感じないんだよね。」
「だよね~。あんたはいつも一人狼のように行動しているし性格的にもね。ま、ギルドは職業クエストを受けれるレベルになっていれば第六の街で作ることが出来るから気が向いたら自分の好みのギルドでも作ればいいじゃない?」
「うん、そうなったらそうするわ。私は今日の授業は前の人を壁にして寝るから起こさないでね。帰ったら速攻ゲームしないといけないから。」
「ふふ、どっぷりとゲームにハマったのね。おやすみ。」
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