第三十八話
「結局、昨日はソフィアの装備を新調したら新しい街までパーティー組んで連れて行ってあげただけになっちゃったな。」
カインのおすすめの装備を身に着けたソフィアがフレンドになったことなのでパーティーを組んで戦闘をしてみたいと頼んできたので、断る理由もなくヒビキちゃんと一緒に第三の街まで行くことに。
今全プレイヤーが行くことが出来るのは、第一から第七の街までらしい。
ソフィアちゃんのような初心者が第二から第三の街まで行くとなると一人では難しいらしい。彼女にとっては私たちはちょうどよいパーティーを組むことが出来る人だったというわけだ。
「ソフィアの戦闘スタイルがルイスとはまた別で完全に補助寄りで近接は杖で殴る系魔法使いなんだよね。」
ルイスの戦闘は遠距離の安全圏から魔法やアイテムを使って攻撃を仕掛けることに特化していて、近接にはめっぽう弱い。
ソフィアは遠距離で仲間のステータスを上げたり、魔法の盾を使って敵の攻撃から守ったりすることを生業として、近接ではスキルなしで杖で叩きのめしていくスタイル。
ルイスとは別の意味でいるだけで戦闘が楽になるサポート型の戦闘をしていた。
彼女自身、リアルでも運動神経がいいのかこの世界でリアルとの動きの差に苦戦することもなく、出会ったときに絡まれていた男たちも一人でなんなくあしらうことが出来たのではないかと思った。
「さて、ソフィアもヒビキちゃんもいないらしいから第六の街で受けられるクエストでもやりに行こうかな。職業クエスト!」
第六の街は、ゲーム内で唯一存在する図書館があり第一の街よりも面積が広く滞在するプレイヤー数が第一の街の次に多いらしい。ネット情報なので本当なのかは知らないけど。
街の奥のほうには造船所と港があるらしいが、今は船は一隻も沖に出ていないらしい。
まだ未定らしいが今度の大型アップデートではこの港から船が出航されるようになって新しい冒険の舞台が解放されるかもしれないと噂になっている。
その情報は確定的と言われていて、そこまで情報の正確性を上げたのはこのゲームの考察をするもの好きの集団らしい。その考察をしたものを本にまとめて出版しているとかなんとかフレイヤが言っていたような気がする。
「その大型アプデが来る前に職業を解放してもっと強くなっておかないといけないからね。受注が出来る場所はどこかな?」
ヒビキちゃんに聞いた話だとレベル30になってこの街に訪れたらわかるって聞いたけど、よくわからん。なんか変な人がいるとは聞いたけど。
「ちょっとそこのお嬢さん、ちょっといいかな。」
瞬きをした瞬間、誰もいなかったはずの目の前に白髪がよく似合う老婆がこちらに声をかけてきた。瞬間移動とかの超能力でも使ったのかな。
驚きが一周回って動じることはなかった。
「ええと、なんでしょか?おばあさん。」
「ちょっと私の住処で困ったことがありまして、手伝ってもらいたいのですが。」
『「職業クエスト その10」を受注しますか?』
突然、目の前に職業クエストを受けるのかどうかを示すウインドウが出てきた。その10ってことは色々ある職業の中の一つのクエストってことになることか。
なんの職業のクエストなのかとは一切情報がないから受けるのを迷ってしまいそうなのだが、変なものならすぐに別の職業クエストを受ければ、変更によるデメリットも何も受けないから迷わずに受注をする。
「いいですよ、どこに行けばいいのですか?」
返事をするとおばあさんはお年寄り特有の柔らかい感情を浮かべた笑顔になる。
いい人そうだけどさっき『住処』と言っていたのが気になるけど、家でも納屋とかでもないというのは不思議だけどファンタジー世界ではそういうのかな?
「私についてきてもらえればいいのです。移動速度が速いので遅れないようについてきてくださいね。」
おばさんに移動速度のことを言われると本当にそうなの?と疑いたくなるのだがゲームでファンタジー世界なら子供ぐらい機敏に動くのだろうか?この前に見たドラマのおばあさんはあり得ないぐらい軽快なステップでダンスを踊っていたぐらいだから少し見失わないように気を付けておくとしようかな。
「了解しました。」
「それでは行きましょう。『加速』」
おばさんは突然スキルを発動して路地裏に向かって高速の早歩きで移動していく。そんじゃそこらのモンスターよりも早いと思うのですけど。
「って見とれている場合じゃない‼このままだと見失ってしまう。」
私も全力で走って徐々に遠くなっていく老婆の後姿を追いかけて走っていく。
路地裏は空箱や木の板、樽などが色々ところに無造作に積み重ねて置いてあり移動する際には邪魔な障害物としかならない。
しかし、老婆はそれをなんなく避けたりそれを利用してちょっとしたショートカットにしたりしてもろともしない。
後ろからそれを見ているとパルクールの練習のための動画を見つつ練習をしているような感じで勉強になる。こちらは移動のためのスキルというものは持っていないので純粋なステータスとプレイヤースキルで追いかけないといけない。
「職業クエストってモンスターを倒すだけじゃなくて、移動で見失ったら失敗という感じなのかな。喋る暇がないぐらいあの人早いんだけど。」
老婆は少しずつ距離を開けていくのはプレイヤースキルなのかステータスなのかもわからない。
そう思って追い続けていると大きな壁があるところで止まったので、なんとか追いつくことが出来た。
「追いつけたようでよかったわ。大抵の人は私の姿を見失うのだけど。」
「ええ、あと少しで見失うところでしたけど。で、ここが住処なんですか?何も建物もないようですが。」
老婆はそれを聞くと足元を指さした。そこにあるのはマンホールのような円形の蓋があった。
「ここから私の住処に繋がるのよ。それであなたに私の住処の一番奥まで来てほしいの。ただそれだけよ。」
「へ?てっきり家の片づけとかと思っていたんですけど。」
「そろそろ住処の罠を仕掛けなおしたいのだけど、まだ新しい罠を思いついていないから実際に罠をかいくぐる人を観察して考えたいのよ。だから、お願いね、先に奥で待ってるわ。」
そういうと老婆はマンホールの蓋を強く踏みつけて出来た穴に向かって飛んで降りていき、穴は塞がった。ちょっと待つと再度蓋が開いて
「入ってきていいわよ~。あ、罠はかなり酷いものもあるから死を覚悟してきてね。」
ただの職業クエストのはずで、ヒビキちゃんからは簡単にHPが0になるような内容はないと聞いていたのだけどどうやらそんな雰囲気は一切しない。
「やるしかないから仕方ないけど、私でもこれはちょっと怖いけど。」
カインに新しく鍛えてもらった装備を身に着けて、少しだけ呼吸を整える。
「さて、罠だからの住処、忍者屋敷のようなところに入りますか。最初から罠があるって知っていれば何とかなるでしょう。」
他の作品のURL
・Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒
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・少女は魔法を夢見る
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