第三十二話
「洗濯物よし!洗い物よし!服装よし!室温よし!カフェインの摂取よし!」
今日の日課とゲーム前のコーヒーを飲んだことを指さしで1つ1つやり忘れがないのか確認をしていく。
イベントが終わって次の日の朝からユートピア・オンラインのメンテナンスが急に入ったので、一日ゲームをしない日が出来てしまった。
そのため、学校の課題を午前中で片づけて、イベントのランキング報酬は何があるのかなどのゲームの情報の収集をのんびりと午後に行った。
そして、二日後の午後からメンテナンスが開けてログインが可能になる時間になったので、その日にやることをすべてやりきってから思いっきりやりこもうと考えている。
「なんだか、ゲームにどっぷりとはまってしまったな。いい年した女が外に遊びに行かずに家でゲームばっかりとはね。ひと昔だと親に怒られてしまう案件だよね。」
腕や足を軽く伸ばしてから、ベッドに後ろから飛び込むようにして倒れた。ヘッドギアを装着してゲームを起動すれば後はユートピアの世界に入るだけ。
最後にログアウトしたのはイベントの集合場所の第一の街なので、降り立ったらその足でカインのお店に行ってみよう。たぶん店にいるはずなので手に入れたアイテムをどう使えばいいのかを聞いてみようかな。私はどう使えばいいかわからないし。
ゲームスタートするためのこめかみ辺りにあるセンサを触れて理想郷にログインをする。
「うわ、思ったよりも人が多いな。メンテナンスが終わった後は人が多いとはフレイヤから聞いていたけどこんなにも多いんだね。」
第一の街の転移門辺りに降り立ったのだが、周辺はプレイヤーでごった返していた。色々な見た目や装備をしていることからNPCではないことは確実だ。
その中で顔や髪は全然違うのだが装備が同じようなプレイヤーがちらほらいることに気が付く。
「そういえば、イベント終了後から2週間は新規プレイヤーのためにゲームの販売価格が半額になっているんだっけ?それなら新規参加者がやってくるな。」
私自身も少し前までは同じような装備を身につけて、おかしなゴブリンに何度も立ち向かっては返り討ちにされていたっけな。もう遠い過去のように思えてしまうのはなんでだろう?
そんなことを思いながら人混みをかき分けるようにしてカインの店に向かう。
くたびれたような看板と他の店と比べて明らかに目立たないようにワザとしている感じの色合いが目印。
「邪魔したな、また頼むよ。」
店に入ろうとしたら先客が出ようとして扉を勢いよく開けたためぶつかりそうになる。身長がかなり高めでがっちがっちの真っ黒な黒い鎧を着込んだ戦士風の男だ。
「おっと、すまんな。」
「こちらこそ、すみません。」
見た目と反して少し声が高くて驚いた。けど、ちゃんと返答も出来たから問題はないと思う。
あの黒い鎧はすごく強そうなオーラを放っているような気がしていて、またそんな装備を身につけているプレイヤーからもそんなオーラを感じられる。
あんな人と一度でいいので手合わせしてもらいたいな。ま、人を襲うとプレイヤーキラーと言うゲーム内の犯罪者のような存在になることがあるらしい。どこかの街では人同士が戦うような小さなイベントがあるらしい。
そんなことは今出来ないので考えても意味がないから忘れよ!
「こんにちは~、カイン元気だった?」
「あいつの次はランキング20位のお前か。イベント終了後大変だったろ、フレイヤから色々聞かれたんだろ。想像出来るわ。」
「いつもの電話以上にめんどくさかったわ。初心者でどうやってランキング上位になったの?とか私と一緒にいたメンバーとはどう出会ったの?とか色々と次の日にも用事があったのに朝までになったし。」
「ご愁傷様。私も同じようなことが何度もあるから気持ちがわかるけど、あの子って朝まで電話してもその日は眠そうな顔をせずに色々活動しているからおかしいからね。」
「そういえばカインもあいつの被害者だったね。いつかフレイヤ被害者の会で集まればそれなりに集まってやつの暴挙を聞けるな。」
カインもフレイヤともリアルで知り合いらしく彼女の期限が悪い時には憂さ晴らしに関節技を仕掛けられたりすることがあるらしい。
彼女の暴力は過去に受けたことがある私も強烈であることはわかっていてそれを何度も受けてまともな精神でいられるカインは彼女以上に変人でドMであることがうかがえる。
「さて、今日はカインにイベントで手に入れたアイテムをどう使えばいいのかを聞きに来たのと、いらないアイテムを売りに来たのと、ええと。」
「うん、わかったから一つずつ聞こうか。で、まずはイベントで手に入れたアイテムをどうすればいいかだな。で、何を手に入れたのか見せてくれ。」
「まずはこれなんだけど。『野生の女王の杖』。魔法と呪術の威力を向上させる代わりに相性が悪ければ強烈な痛みを持ってるだけで引き起こすらしいけど。」
「へぇ、呪術と魔法を両方ね。この効果は使いづらいね。」
「そうなの?どっちにも威力が上がる効果があるっていいことじゃないの?」
カインは私が渡した杖を持つと色々な角度から眺めてから少しため息をついた。
「普通のプレイヤーは魔法と呪術の両方のスキルをメインで育てている人はいないんだよ。魔法と呪術とは求められるステータスなどと違うんだよ。共通しているのは精神力ぐらいなものだな。」
「それじゃ、これはとっても使いづらいゴミ装備ってことだよね。」
カインは杖を返してくると腕を組んで首を傾けて悩んでいる。さっきゴミアイテムって感じの言い方をしていたよね、なんでそんな顔をしているんだ。
「いやね、魔法か呪術をメインで使って補助としてもう片方を使う人がいるんだ。魔法で必要なステータスを向上させて呪術を使う、その逆も。この杖の効果の威力を向上させるは補助の効果にも適用されるから、そんな少数の人達にはうれしいものだよ。」
「私のスタイルには相性が悪いし、押さえつけていないと装備していないのになんかチクチクするしどうしよう?」
「そうだな、自分のスタイルに合わないなら私とか必要そうなプレイヤーに売るとか、今はまだ持っていてイベントの肥やしになりそうになってから売るとかでもいいんじゃないかな。」
今すぐに売って何かに使えそうなことがわかって後悔するぐらいならしばらくは持ち続けていてもいいかな。どうしたものかな。
「使うまで持ち続けて結局使わなくなるエリクサー症候群ってことにならないようにね。」
「ん?なにそのエリクサーなんちゃらって?聞いたことないけど。」
「え、ああそうか。あんたは今までゲームやってこなかったからこういった用語は知らないか。簡単に言えば超貴重なアイテムをゲームクリアまでもったいなくて使わずにとっておいて一生使わずに終わるようなこと。」
「何もせずに置きっぱなしは一番もったいないことだね。気を付けるよ。次はこれ、『ゴブリンクイーンの角』ってやつなんだけど、加工すると装飾品になりそうだけど。」
カインは角を受け取ってステータスウィンドウと角を見比べながらまた別のウィンドウを開いて何かを調べ始めたので、その辺に置いている装備を物色して待つことにする。
中でも刀が置いてあるので興味があって手に取ってみる。これを使うのに必要とされるステータスは私のステ振りと比べると少し似ているのでクイーンを倒したことによるポイントをうまく使えば使えるようになるらしい。
刀ってかっこいいから使ってみたいな。
「角とかの加工はそういったものを扱っている生産職に頼めば装飾品にしてくれるな。多分得られる効果は魅了耐性と即死耐性だと思う。説明文を見る感じだからあくまで予想だけど。」
「ふーん、耐性系はこの仮面でどうにかはなるけど切り替えめんどくさいしあったら便利になるから頼もうかな。カインの知り合いでいい人がいたら頼みたいんだけど。」
「わかった。ならこれは私が預かっておいてその人がログインしたら頼んでみるよ。多分来週までには渡せると思うから出来上がるのはその時に聞いておくよ。加工料金は完成後にもらうからね。」
「うん!今は持ち合わせがあるから大丈夫だね。あとは。。。」
そんなこんなでどう使えばいいのかわからないものを聞いていくと、1時間以上時間がいつの間にか経っていた。流石にそろそろ新しい街に向かいたいので話は打ち切って、今のレベルにあった装備を見繕ってもらうことにした。
「うん、ようやく初心者から脱却されたような見た目になったな。ま、これ以上の装備が欲しいなら俺のところ以外にも頼みに行くことだな。」
「え?カインの店にも色々置いているじゃん?」
「俺がいい装備を作れるのは武器だけだからな。防具とか装飾品とかが欲しいならまた別の生産職に頼んだ方がいいものが揃えれる。俺のところに置いているのはお世辞にもいいとは言えなくて普通だからな。」
「そうなんだ。じゃあ、今度装備を新しくするときになったら知り合いを紹介してね。」
新しい装備の代金をカインに渡してその場を後にする。これから、第五の街に向かって第六の街を目指そうと思う。でも、あまり道がよくわからないので今ログインをしている暇そうなフレンドを引っ張って案内してもらうことにしようっと。
他の作品のURL
・Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒
https://ncode.syosetu.com/n8193fh/
・少女は魔法を夢見る
https://ncode.syosetu.com/n9741iq/




