第三話
始まりの街を北に出ると森が広がっており一本の道が少し行った先で分岐していた。
「街を出る前に衛兵さんから話を聞いたけどどの道を行っても次の街に辿り着くことが出来るらしいね。どの道から行こうかな。」
分岐点まで歩くと道は3本に分かれており、左に進むと平原コース、まっすぐに進むと森の近くのコース、右は森の中コースとなっているようだ。
「今は昼間だし、森の中は人が少なさそうだから右に進んでみよう。」
自分と同じようにフィールドに出てきた人たちが少なからずいるが多くの人が左の平原コースに進んでいる。そっちの方が楽しいのかな。
「人が少ないってことはモンスターと戦うチャンスが多いってことだもんね。武器の装備をしていざバトル!」
そう言って見たものの少し歩いてもモンスターの影すら確認が出来ない。この道が不人気な理由はモンスターが出現がしにくいからなのかな。
「お、あっちの草むらで何か来る音がする。ようやく戦えるのかな。」
音のする草むらから出てきたのは緑色の血色の悪そうな顔。こちらを見るとニヤッと笑い始めた。
「このモンスターってゲームを始めて少し先で戦うことになるゴブリンって名前のモンスターだよね。こんな序盤から出てくるんだ。」
武器屋から購入をした武器の槍をインベントリから取り出して構える。
「武器屋のお姉さんからフルダイブ初の人におすすめなのは槍って言われたけど。突いてよし払ってよしって言われたけど想像した使いかたでいいのかな。」
草むら完全に姿を現したゴブリンは肉切り包丁と木の板で簡易的に作ったであろう盾を持っていた。体自体もそんなに大きくなく私の胸の辺りまで頭が届くのかギリギリなぐらいだ。
「さて、どんな攻撃を仕掛けてみようか、、、ってゴブリンの方から仕掛けてきた!」
肉切り包丁を振りかぶりながら飛びついてきて頭を的確に狙ってきた。槍を横に向けてその攻撃を防ぐとしっかり攻撃の威力が伝わってくる。
「思っていたより好戦的だね。」
攻撃はしっかりと受け止めたので今度はこっちの番で攻撃を仕掛けようとしたけどゴブリンは目の前で着地した瞬間に私の足を斬りつけた。
「っ!離れろって。すばしっこいなもぉ。体が小さいだけじゃなくて意外と小回りが利くんだ。」
フルダイブでは攻撃をもらったりすると少しだけ痛みを感じる仕様になっている。色々と現実に近いような感覚を味わえるのが売りだと聞いたことがある。
「体力、HPって言うのだっけ。これが0になったらゲームオーバーでリスポーン地点に送り返されるって聞いたけど今ので3分の1まで減ったよ。」
HPの数値は最初30とあったのだが、今では20と表示されている。足への攻撃だけで大きく減少している。これが普通なのかもわからない。
「今度はこっちから槍で串刺しにしてやる。」
ゴブリンの胴体を目掛けて槍を思いっきり突くが簡単に躱されてしまう。大きな動作で槍を突いてしまったので隙が出来てしまった。槍の下をくぐり抜けてきたゴブリンが得物を私の首に押し付けるかのように斬りつけてきた。
視界が急に暗転したかと思うと真っ暗な空間に飛ばされていた。
「これは、HPが0になってゲームオーバーになったてことなの。あ~、負けたぁ。」
目の前には『GAME OVER』と文字と『転送まで30秒』と表示されている。ゲームを開始して1時間も経たない内にゲームオーバーとなってしまったのは少し落ち込む。
「槍って使ったこともないし点の攻撃がメインだから使いづらいな。」
手に持っている槍を見てそう思った。
「そういえば、あの武器屋の人初心者用の武器なら何度も交換してくれるって言っていたね。別の武器を試してみたいから行ってみよう。」
光が強くなっていくと最初に降り立った始まりの街の広場に立っていた。
「リスポーン地点ってここになっているんだ。どうやって登録すればいいのかわからないのはどうしよう。」
そう考えながらも武器屋に向かって東に向かっていく。
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「いらっしゃ、またあんたか。何度目だ、ゴブリン相手に負けたのは。」
「5回目です。今回のメイスでは善戦したんですけどやっぱり負けました。5回とも同じゴブリンですよ。今回なんて『またお前か』のような顔で見られましたよ。」
「あそこの森は初心者にとってはパーティー推奨で他の道よりもモンスターが強いんだ。他の道に変えてみたらどうだ。」
武器屋のカインは呆れながらもそう提案してくる。
「最低でもあのゴブリンだけは倒さないと気が済まないです。あの森であいつだけしかまだ会っていないんですよ。今度は剣と盾の普通の装備で行きます。」
カインはくすっと笑いながら対応してくれる。カウンターの後ろに下がっていき両刃で片手でも扱いやすい剣と丸い盾を持ってきてくれる。
「はいよ、それじゃメイスとトレードだ。今度こそ勝って来いよ。」
「ありがとう、カイン。今度こそしっくりと来る武器だよ。行ってきます。」
カインから剣と盾を受け取ると武器屋から出て因縁のゴブリンがいる森に向かって走っていく。
武器の登録も手慣れたもので、すぐさまメインウエポンに剣を、サブウエポンに盾を登録する。
「今度こそあのゴブリンを血祭りにしてやるぞう。」
森に向かっての道を止まることなく、走り続けていく。5回とも同じ場所で待ち構えているゴブリンの元に辿り着いた。
「懲りずりに何度もやってきたぞ。初心者の女だからって油断してると痛い目見るぞ。」
不敵な笑みを浮かべるゴブリンは今度も負けるわけがないという雰囲気が伝わってくるが、何度も負けるわけにはいかない。剣と盾を構えて再度挑戦。
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