第二十六話
森に入ってからしばらく時間が経った。
火薬草は森の入り口の方にはほとんどなかったが、少し森の中央を離れるとそれなりに発見することが出来た。発見するたびにルイスを呼ぶのは面倒臭いが効果を上昇させるためには仕方がない。
新緑樹の幹はヒビキちゃんがルイスが用意した斧を持ってひたすら気に向かって振り下ろしていた。リズムよく叩いていて簡単に切ることが出来そうだが、意外と切ることが出来ていないのは不思議だ。
「あれはですな、木を切りにくくする代わりに品質を上げることが出来る優れものなんですぞ。いやぁ、ヒビキ殿の力でもあんなに時間がかかるとは恐ろしいほどデメリットがでかいですな。」
「いや、楽しそうに言っているけどあの斧欠陥品だよね。あの調子で目標の数まで入手できるの?」
「大丈夫ですぞ。新緑樹の幹の数はこの草より断然少なくてもいいのですが、品質が重要なんですぞ。だからヒビキ殿に新鮮でいいものを取ってもらわないとアイテムボックスに在庫がないので困るんですぞ。さて、サイレント殿もテキパキと草を見つけまくってくださらないと困りますぞ!」
ルイスは張り切って森の奥に入って行き草を取っては、偶に現れるゴブリンを雷で貫いてはせっせと草を集める作業に戻っていく。何か匠の技のように感じるのは気のせいだと思う。
私も突っ立ってみているとサボっているように見えてしまうので適当に歩きながら探してみる。
『観察眼』を使って遠くを見てそれらしきものがあると確認して目当てのモノなら回収をするそして遠くを見るということを繰り返し行った。まれに火薬草がうっすらと発光しているように見えることもあったが、近くに行くと何も光っていないことがあった。
「ルイス~、あっちの方にそれっぽいのがあるよ。あ、ゴブ二匹がこっちに来てるから気を付けて。」
この辺りにいるゴブは洞窟で遭遇した個体よりも弱くて個性もなくどれも同じにしか見えないのは残念過ぎる。戦いにもならないし、面白さもないのは原点対象。
「そろそろ木が倒れそうだわ。少し離れていてね。」
ヒビキちゃんが時間をかけて斧で叩きつけていた木の耐久値をようやく減らしたらしく倒れて目当ての素材になりかけているらしい。
木を切り倒すことが出来れば、部分ごとに自動的に素材の形に変わるので切るだけですべてが終わるらしい。しかし、その素材からまた加工すれば別の素材が作ることが出来るらしい。
「了解、そろそろ素材も集まりそうだし切り上げてもいいのかな。」
そう言って見るとルイスは親指を立ててOKと返事をしてくれる。
時間も太陽が真上に来ているのでそろそろ目標の時間になってきている。あとは、ルイスがアイテムの大量生成をするだけで私とヒビキちゃんは暇になる。
「拙者は一人船に戻って錬金をしますので陽が暮れるまでは各自自由行動にしましょうぞ。」
「そうね、私は少し運動でもしてこようかしら。」
「いいんじゃない?私もその辺りを見つつ面白そうなモンスターがいないか見ていこうかな。」
3人の意見が合致したのでその場で解散することにした。
私は森の奥へと進んでトップ層のプレイヤーたちが向かっていったであろう先に向かってみる。こんな森の入り口にしか現れないようなやつには興味がない。
「さてと、初めて出会ったようなやつとか、洞窟のやつらみたいなのと出会えないかな?」
島は思ったより広いのか他のプレイヤーが戦っている戦闘音すら聞こえてこない。風が吹いているからなのか森の木々がぶつかり合った優しい音が聞こえてくる。
今のこの場に自分しかいない気がしてしまう。
「さてと、そろそろ戦闘開始といきますか。思ったより強そうだけど、どうにかなるかな。」
木の向こう側から一体ゆっくりと現れた。口元をマフラーのようなもので隠していて肘やひざに金属製のプロテクターを身に着けている。何故かオーラのようなものを感じるのはなんでだろう。
「見た目から速度重視のステータスのような感じだけど、不意打ちをすればいいものをなんで簡単に姿を現したんだろう。私のことを見下しているのかな。」
すると今までの敵の中で最速で接近をしてきたが、そんなことより気が付いた。このゴブリン顔がいい感じに整っていて可愛くて身長も小さく、そこら辺の男が好みそうな容姿をしている。
(この個体、持って帰ることが出来ないかな?モンスターテイマーだっけ?昔のRPGにそんなのがあるって聞いたことがあるな。)
ゴブリンは脇腹を刺そうとしてきたので剣で払ってから膝で胴体を狙う。命中はしたもののふんわりと軽い感じがしただけであり、自ら後ろに飛んだのだろう。
この感じ、初めて遭遇したゴブリンに感じが似ている。まるで人がこいつを操っているような。
すると、先程以上の速度でゴブリンは私の周囲を走り始めた。ヴァンが使っていた足が速くなるスキルだったかな。最初からこれを使えばいいのに。
攻撃をするフェイントを何度もかけては距離を取ることを繰り返していて私をやっぱりなめている行動ばかりをとる。
「そろそろ怒るからね。」
プログラムが私の言葉を理解したのかケラケラと気色の悪い笑い声を聞かせてくる。今まで一番面白くもないゴミだ。昔、私をなめ腐っていたアホに似ている。
もう終わらせようか、面白くない。
今度は本気で狙って速度を上げて近づいてきたので、大きくそちらに足を踏み出して首をわしづかみにする。そして、地面にたたきつける。
「誰だか知らないけどこのゲームなめてんじゃねぇよ。」
もう片方の手で顔を引きちぎって止めを刺す。速度重視のためなのか紙装甲だったので始末するのが簡単でよかった。ドロップ品も良さそうなものもないので本当の意味で外れモンスターだった。
奥にもう一匹がこちらを覗いている。今日は気分がよかったのを害されたのを払しょくすることが出来る相手ならいいのだけど。
時間もまだまだあるから3日目までに備えてレベリングをしておこう。
他の作品のURL
・Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒
https://ncode.syosetu.com/n8193fh/
・少女は魔法を夢見る
https://ncode.syosetu.com/n9741iq/




