第二十一話
「さて、マップを開いてみようよ。この島がどうなっているか確認してどう探索するかを決めようよ。」
そう2人に提案をすると渋い顔をされた。
なんでそんな顔をしているのか理由を聞こうとしたらヒビキが答えてくれた。
「普通にフィールドに出た時のミニマップがあるわよね。あれって行ったことがないところはマップに表示がされないでしょ。イベントのマップも同じなのよ。最初はスタート地点周辺だけになるのよ。」
「サイレント殿はイベント参加が初めてのようですな。拙者はイベントでマップを埋めるときにはまず真ん中を突っ切ってから左右に行くか、今回のような島であれば周辺をぐるりと回ってからどこから攻めるかを決めますぞ。」
2人はそれなりにイベントに参加をしていて、探索の仕方をある程度知っているようだ。それならルイスが言っている方法でまずは島を調べてみようかな。
「それじゃ、今回は島だし周りをぐるっと回ってみようかな。それでいい?」
2人とも頷いて賛同してくれる。それなら、この船から降りて右回りで島の外周を回ってみようかな。
さっき降りて行ったフレイヤやヴァン達など多くのプレイヤーは島の中央に向かってまっすぐに進んでいったので、島の端にはゴブリンは倒されておらず残っているだろう。
「それじゃあ、敵が出てきたら私が敵を惹きつけるからヒビキさんがその隙に接近、ルイスは遠距離から攻撃でいい?錬金術師って遠距離攻撃でしょ。」
「そうではありますが、何故に拙者は呼び捨てなのですぞ?」
見た目からして怪しいし、目の上の人でもない感じがする。むしろ弟のような感じでもあるので「さん」や「くん」などとつけるのは違和感がすごくて気持ちがわるい。
それを正直に言ってしまうのは良くはないので、少し誤魔化すかな。
「いや〜、呼び捨て以外だと気持ち悪くて(違和感があってつい。)」
「あら、サイレントちゃん。本音と建前が逆よ。ま、素直でよろしいわ。」
ヒビキはそう言いながら船をひょいっと降りて手招きをしているのでルイスのローブを掴みながら船の甲板の色がついてしまいそうなぐらい引っ張って船を降りる。
いやいやと顔に出しているのがイラつくので船から放り出したら綺麗にポーズをとって着地をしたのでよりイラつく。
「さて、行きましょ。久々のパーティでの行動でテンションあがっちゃうわ。」
ヒビキの歩き方から独り言、少し背筋が寒くなるのはなんでだろう。
島に上陸をしてすぐ横が海に面している地面を固くして歩きやすいようにしている道を進んでいく。
船のある場所から右回りで進んでいくと数分おきでゴブリンに出会った。一匹一匹それぞれ特徴があり同じ個体はいなかった。ある個体は綺麗な刺繍をほどこしたバンダナをつけていたり、体に何かしらの模様を掘り込んでいたりといった感じで昔の部族のような格好をしているのが多かった。
「ゴブリンだけで文明でも築いているのかな。前にあった個体よりも顔とかが人間に近くて子供みたいだから少しだけ可愛いって思っちゃうな。」
「拙者は人に近い方が不気味と思いますぞ。ですが、どこかのフルダイブのゲームでは人間以外の種族になりきって戦うようなものもあると聞きますな。」
私とルイスとでは感性が違っているようだが、ゴブリンは人に近い感じではあるものの獣の要素は抜けてはいないのでそう思うのもわかる感じがする。
私としては昔どこで見たかはわからないが、オークと呼ばれるモンスターのメスのイラストは可愛いなと思った。
「それにしてもゴブちゃんの数がイベントにしては少ないわね。これじゃあプレイヤーはここに立ち寄らないわ。この周辺を独占しても旨みがないわね。」
ヒビキの言う通りここではイベントのポイントを効率良く稼ぐことが出来ない。
しかし、今は調査の段階なのでプレイヤーがいないのなら今のうちにどんどん突き進んでいっていいポイントを誰よりも先に見つけることだ。
「今は仕方がないよ。島を1周しても良さそうなところがなかったら考えようよ。」
「そうね、サイレントちゃん。そうしましょ。」
ヒビキは私の頭を撫でてきて先頭を進んでいく。なんだかお姉ちゃんのようで先ほどまで感じていた背筋が寒くなるようなことはなかった。
なんだかルイスとは違って接しやすい。
「あれはなんですぞ。海に面したところ洞窟のようなものが見えますぞ。」
ルイスが双眼鏡を覗きながら先の方を指さしている。その指の先を観察眼を使って見てみると巧妙に茂みを使ってここからの位置以外では見えないように隠されていた。これは隠しエリアというやつなのではないだろうか。
「確かに見えるね。洞窟の前に何か柵のようなものもあるからゴブリンがたくさんいるんじゃないのかな。」
「あら、あなた達そんな遠くまで見れるのね。サイレントちゃんは道具なしで見れるってことは何かのスキルかしら。」
「はい、遠くの方まで見ることができるもので距離の調整も出来るんです。ルイスの双眼鏡は売っているものなんですか?」
「いや、これは拙者の錬金術と道具作成で作り出したものですぞ。スキルも回数制限もないので便利ですぞ。」
ルイスは自慢げに双眼鏡の自慢話をし始めたのだが何を言っているのかがよくわからないので、相槌を打つだけ打ってほっておく。
「よし、マップにマークをしたから見失うことはないね。行こうか。」
「「はーい」」
洞窟の近くまでに行ってみると、柵があるだけで付近にはゴブリンはいなかった。入り口付近にもいなさそうだ。
「それじゃ入ってみようよ。道中の戦闘もいい感じに連携を取ることが出来たから大丈夫だよね。」
「ええ、サイレントちゃんの動きが機敏ですごかったわ。このゲーム以外に何かフルダイブのものでもやっていたの?初心者とは思えないわ。」
「拙者もそう思いますぞ。まるでゲームの世界の忍者のようですぞ。」
2人とも私の戦闘がすごいと褒めているようで少し嬉しい。
「私はフルダイブのゲームも、画面上でやるゲームもこのゲームが初めてですよ。元々はリアルでは色々なスポーツを転々としていたんです。」
そう、小学生の頃から色々なスポーツをしてきたが、私が長く続けたいと思えるようなものはまだ見つかっていなかった。何をしてもある程度の練習で基本は身について地域で一番の人と同じレベルまでに達した。
体を動かすことは昔から好きだが、この世界の体を動かすのは想像以上に楽しい。
「なるほど、リアルの経験をこのフルダイブに活かすことが出来ているのね。このゲームはレベル差が大きく開いていないのならプレイヤースキルが高い方が有利なのよ。」
「拙者は体を動かすのが苦手ですので、中距離・遠距離で仲間の支援をしながら戦う方がいいですぞ。その分戦況を把握しなければいけないのが辛いですぞ。」
スポーツでもそうだけど、人によっては色々なプレイスタイルがあるのは面白い。
さらに面白いのはそんな人たちと戦う中で集中力が高まって行った時の高揚感は最高。
「サイレント殿?洞窟に乗り込む前の顔ではござらんぞ。」
おっといけないいけない。いつも親にも注意しろと言われた顔をしてしまった。
フレイヤにも言われたけど集中力が高まっている時の私の顔って女ではないって言われたけど本当なのかな。
「ごめん、それじゃ乗り込もうか。ゴブの洞窟(仮)に。」
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