第十九話
昨晩は夜遅くまで第三の街の奥の方を散策していたが、秘密のエリアなどは一切見つからなかった。
その代わりに知らない老人から変なクエストを強制的に受注させられて街とその周辺のエリアを行ったり来たりする羽目になってしまった。
「おかげで新しいスキルを手に入れることが出来たからいいけど。非戦闘のスキルだからよくわからないいや。」
入手したのは『観察眼』という双眼鏡で見るように遠くまで見ることが出来るようになる効果。戦闘中に遠くを見る機会はあまりないと思うのでその場面以外で使用することになると思う。
遠くを見るための道具は今のところ購入できるのかも知らないのでいい景色を探すのに役立つのかもしれないからよかった。
「それで、イベントの開始30分前にはログインは出来たけど集合場所の第一の街にプレイヤーが多すぎるわ。」
第三の街に降り立ってからポータルで第一の街に行くと様々な装備を身に着けたプレイヤーで溢れかえっていた。これら全てが今日行われるイベントに参加する人達なのだろう。
この中にフレイヤやヴァン、イービスもいるのだろう。流石にこの中から探すのは骨が折れそうなので止めておこう。
何か建物か壁かに時間が来るまでもたれて待っていようかと思い移動をしようとすると後ろからぶつかられてしまった。よろめくだけで終わったが人が多いので気を付けてほしい。
「おや、すみません。拙者人が多いところを歩くのは苦手でしてな。人ごみに酔ってしまいましてな。」
ぶつかってきたのは深くフードを被った一人称にロールプレイかかった男の人だった。
身長が高く、眼鏡をかけていて腰などには様々な色をした液体を詰めた瓶を身に着けている。こういう見た目の人は錬金術師っていう怪しい人のことを言うのだろう。
「いえ、人が多いと歩くのも一苦労ですからね。」
「おや、その仮面はとてもいいデザインをしておりますな。拙者のコレクション加えたいですな。いや、あくまでもそう思っただけなので警戒はしないでほしいですな。」
びっくりした。
私の身に着けている仮面は確かにデザインはクールさが溢れていていいものだけど、誰かに譲る気は一切ない。なので、ローブの男の言葉にはドキッとしてしまった。
「驚かせないでくださいよ。私のお気に入りなんですから。」
「いやいや、すみません。お詫びといってはなんですが、こちらのアイテムをプレゼントいたしますぞ。モンスターに襲われて危ないときにはこいつを投げるといいですぞ。」
男は腰につけていた瓶を差し出してきた。色は薄緑色で怪しい感じはしない。
「警戒しなくてもいいですぞ。これは拙者が作成した試作品ですが、悪いものではないですぞ。もし、使用したなら感想をいただきたいですぞ。」
男は画面を操作してフレンド申請を送ってきた。名前は、ルイスという海外でよくありそうな名前だった。
私の直感としては悪い人ではなさそうなのでフレンド登録しても問題はなさそうなのでOKとしてフレンドになった。
「もし、イベント中にアイテム不足で困ることがあれば連絡をしていただいても結構ですぞ。特別価格で制作してあげますぞ。」
「タダではないんですね。」
男は少し気持ち悪く笑って
「そこは商売ってものですぞ。ただより怖いものはないですぞ。それでは。」
男は手を振りながら人ごみの中に消えていった。
私は純白の鎧を着た派手な人から、ローブでとても怪しい人とか変な人にフレンド申請をされることが多いのかもしれない。
今は装備をイベントに向けて更新をする。カインには装備の耐久性を回復してもらって新品同様になっている。
あとはアイテムを整理整頓して取り出しやすいようにしておく。
『告知通り、予定時刻になりましたのでイベントを開始いたします。第一の街にいるプレイヤーの皆様をイベントエリアに転移させますので衝撃に備えてください。』
空にメガホンのマークが浮かんだと思うと男性の声でアナウンスが聞こえてきた。
この男性の声、どこかで聞いたことがある気がするのだけどどこだったかは思い出せないまま、視界は真っ白に染まって次に映し出された光景は真っ青な空に真っ白な雲、真っ白な海に足元のこげ茶色の木。
「ここって、海を漂っている船の上なのね。」
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