第十八話
「キーワードの設定って何を設定すればいいんだろう。」
日が変わるまで麗香ことフレイヤの愚痴に付き合わされ、朝日が昇るまでカインにフレイヤにしばかれたことが辛いことを酒と一緒に相槌を打つだけのめんどくさいミッションを終えた。
そのあとは、眠たさを振り払うように顔を洗ったらすぐさま大学に行って授業を受けた。
その授業を担当している准教授は授業中に寝ていたら速攻単位を落とすことやナルシスト、浮気で2回も離婚、何十年経っても教授になれないことを1日に何度も言う問題のある人で有名だ。
あげく授業内容はわかりづらく自主勉をしていた方がわかりやすいというダメダメである。
しかも、必須授業となっているのでふざけている。
ふらふらになりながら帰宅し、数時間寝てからゲームを開始した。
明日、土曜日は初めて参加するイベントがあるので、アイテムを整えたり、少しでもレベルを上げておこうと思っている。
最後にいた第三の街に降り立ち周りを見て今まで私がやり忘れていたことを思い出した。
「キーワード設定より、街を見て回ることをしてなかった。モンスターを追い求め続け過ぎてすっかり忘れてた。アイテムを整えるついでに街を見て回ろうっと。」
1人で拳を突き上げて意気揚々と歩き始めた。
第三の街は第一の街より少し小さいぐらいで第二、第五はかなり小さくて散策も1時間以内で終わってしまう感じだ。
まず最初に第五の街にたどり着くまでに消費してしまったポーションを買いに売っていそうな店にむかった。
「初心者ポーションは私のレベルだと効果が落ちるって言われたっけ。ポーションかハイポーションのどっちかになるんだっけ。」
「そうだよ、仮面のおねえさん。ポーションとハイポーションは初心者レベルを超えたプレイヤーが買うべき回復アイテムだよ。回復量はハイポーションの方が10%高いのが特徴だね。」
店でポーション類を見ていると背後から声をかけられたが、振り返っても誰もいない。
幽霊でも出たのかな。
「顔を少し下に向けてよ。」
声の言われるとおり顔を下に向けると可愛くて小さな女の子の顔があった。
ショートヘアであり短パンでエプロンをつけていてここの店員さんなんだろう。
「ごめんなさい、気がつかなくて。でも可愛い女の子のアバターですね。」
「違いますよ、僕は男の子です。リアルに合わせた身長で少し可愛く作ったらみんな女の子扱いをするんだから。」
どこからどう見ても小学生の女の子にしか見えない。
しかも、そこらへんのプレイヤーと比べても可愛さは断然上であり、フレイヤとは別のベクトルの女らしさもある。
「そ、そうだったんですね。ええと、私はサイレントっていいます。ここの店員さんですか?」
「はい。ま、いつも初対面の人には間違われるんでいいですけど。それでお姉さんはアイテムの補充に来たんですね。明日のイベントに向けてですか?」
不機嫌そうな顔をしていたが一瞬で営業モードに切り替わった。リアルでは接客業でもしているんだろうか。
でも、店員さんが話かけてくれたのはちょうどよかった。
「そうです。イベントに参加するのは初めてで何を用意すればいいのかわからなくて。何を用意すればいいのか教えてくれませんか?」
「わかりました。1番必要なのはポーションであることは言われることでもないと思いますが、私としてはこちらがポーションの次に必要だと考えます。」
店員さんが案内をしてくれた先は何かの草や動物の角を置いている売り場であった。それらのすぐそばに置いている札を見てみると薬草やゴブリンの角と記載されている。
「これってポーションを作る素材ですよね。これを買うよりも普通にポーションを買った方がよくないですか?」
「ま、初心者のプレイヤーはポーションを買うだけで十分だと考えられます。しかし、少し時間がかかることに目を瞑れば素材からポーションを作った方が金銭は少し浮いて、効果も少し高いんですよ。」
「へぇ。ポーションって作ることが出来るんですね。」
店員さんは口元を片手で抑えて笑う。
「ええ、このゲームでいくつかの街で受けることが出来るクエストをクリアすることで『調合』を獲得できるんです。そのスキルでポーションなどの回復アイテムなどをプレイヤーの手で作ることが出来るんですよ。」
このことは公式サイトには載っていなかった情報だ。
思い出した、カインの店でも端っこのほうにポーションが置かれていた。
「なら、お店で買うよりは自分で作った方がお得ってことなんですね。」
「いやいや、それがそうでもないのがこのゲームなんですよね。この調合などのモノを作るもののスキルには必ずレベルがあって、レベルが高くないとより良いアイテムが作れなかったり失敗する確率が上がったりなどするんです。」
「なるほどね。こういうゲームって何かモノを作ったりするよりもモンスターと戦うことを望むプレイヤーが多いからそのスキルレベルを上げるよりも買った方が時間を節約出来てその分いろいろ出来るからね。」
店員さんは、それを聞いて頷きながら先程いたところに置いていたポーションを持ってくる。
「ということで、お姉さんはそのスキルを獲得もしていないしこれから獲得しても実用レベルまでレベルを上げるまで時間もないならこっちになるね。」
持ってきたポーションを受け取って、頭の中のメモにいつかそのスキルを獲得することを書き込んでおく。
ここで、いつも購入するより多めにポーションとハイポーションを買うことにする。
「毎度あり。今後ともご贔屓に。」
小学生にしか見えない店員さんに笑顔でお見送りされながら店を後にする。
次に向かう先はこの街の奥の方の街の裏の顔がありそうな場所。
この街は大きな岩山に隣接して建てられており、近場には少し大きめの川が流れている。この街のメインになる商店街などが多く設置されている岩山から離れていて川が近い場所。
その逆の場所は色々と建物が密集していて入り組んでいる。何やら怪しそうな人達がいたり、秘密の通路や場所が隠されていそうで興味が惹かれる。
「思ったよりも見た目がごつい男と女が多いぐらいで怪しそうなところはないね。みんな見た目や格好が職人って感じで悪そうな人はいない。もっと奥なのかな。」
今はまだ街の中央に位置しているので、もっと奥まで行けば岩山までたどり着くことが出来る。せっかく散策をしているのでもっと奥まで行ってみよう。
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