第十二話
目的地の山までは森の中を進んでいかないと行けない。第二の街に行くための分岐の道で森を選んでしまったので少し面白くはない。
「あの分岐で森の方が人気がなかったのはこういうことだったのか。次の街に行くために通らなければ行けない道が森ならだれも選ばないよね。」
あの時に、面白そうだからと思って選んだけど失敗だったみたい。
どうせ、この道でもゴブリンが出てくるだけなんだろうなと思うとやる気がいまいち出ない。
「この森人気がないのかな。ここに入って五分ぐらい経つけど誰にも出会っていないし。森の中に入っていっているのかな。」
今は山に続いていそうな人や馬車などが十分に通ることが出来そうな広さのある道を歩いている。森の中にも十分に入ることが出来るらしいが、今の目標は次の街に行くことと山道まで行くことなので、入ることはしない。
山の上まで行くことが出来れば森がどんな感じで広がっているのかがわかるため、みすみす森の中にはいって迷子にはなりたいくない。
「メニューからミニマップを出せるみたいだけど、範囲があんまり広くはないらしいから使い勝手が悪いってフレイヤに聞いたな。でも、今は使ってみようかな、今日は色々と試す予定だし。」
メニュー画面からマップタブを探そうと思ったけど、前の方から何か叫んでいる声が聞こえてくる。
誰かモンスターと戦っているのかな?
こちらは止まっているのにも関わらず声はどんどんと大きくなってくる。
「前にプレイヤーがいるぞ、このままだとあいつのターゲットになるぞ。どうする。」
「そんなことは気にするな。構っている暇なんてない、俺たちがあいつの餌食になってしまうぞ。そのまま突っ切れ。」
「それも時間の問題だ。あいつにタゲをなしりつけた方がいいんじゃないか。」
3人組の野人のような見た目をした男連中がこちらに向かって走ってきた。その連中から少し離れたところから大の男より一回り大きな体をしている軟体生物?ような見た目をしている。
「あれって、スライムだよね。どう倒せばいいのかって考える暇なんてないじゃん。これって不味いよね。逃げよ。」
前にいる連中は明らかに私に向かって害になるようなことをしてこようとしている。
スライムとは戦ってみたいけど邪魔はされたくないので、これは森の中に逃げ込んだ方が姿を隠せそうだ。
「こっちの方向に山があったからそっちに行こっと。」
すぐさま山のある方向の森に向かって走っていく。男たちはいきなりターゲットにしたプレイヤーが森に消えていき、進路を変えざるをえない。
「意外とこの森、草木が生い茂ってるから身を隠せそう。」
とりあえず、森の奥にどんどんと入っていくと登ることが出来そうな木を見つけたので急いで登っていきそのあたりの枝を手繰り寄せて姿を隠す。
「これで、焦っている人からは見つけづらくなるね。昔、幼馴染の男の子がやっていた方法だけど、こんな時に役立つなんてね。」
身を隠して少しだけ待つと男3人組とスライムがやってきた。
「あのプレイヤーどこに消えやがった。こんな足場の悪いところまで追うんじゃなかった。」
「リーダー、逃げ続けても背後とられちゃうよ、どうするよ。」
「もう、戦うしかないじゃないか、くそ。誰だよ幽霊みたいに消えたやつにタゲにしようっていったやつは。」
「「お前だよ。」」
バカトリオとはこのことだろう。
ま、せっかく目の前で戦ってくれるのならスライムの攻撃パターンでも参考に見せてもらおう。
「スライムは中にある核が弱点だ。それ以外は再生することを忘れんなよ、てめら。」
「「了解、リーダー。」」
男たちはあれくれのわりにモンスターとの先頭になれており、すぐさまスライムの進路を塞ぐ。
持っている武器も今自分が持っているものよりも性能がよさそうで、少し羨ましい。
「俺がスライムの攻撃を受け持つからお前らは側面から攻撃を仕掛けてくれ。」
「従来通りなら、核を破壊すれば大ダメージだよな。俺の槍のリーチならいけるぜ。」
「ハンス、粘液が薄い時だけ狙えよ、威力が削がれる。」
なるほどね。スライムというモンスターには核となる弱点が存在していてそれを破壊することで楽になると。破壊ってことは1発だけだと破壊まではいかないのかな?
あとはスライムの体を形成している粘液はこっちの攻撃を防ぐ鎧のようなもの。
「核はあのでっかい球体なんだよな、普通のスライムより大きい分、核も大きいんだよな。」
「さぁ、くるぞ。」
スライムは正面のプレイヤーにターゲットを定めると体を少し凹ませて自身の体の粘液を素早く伸ばしていく。
男はそれをステップを踏んで躱すが、粘液が当たった地面が少し削れる。まともにくらったらとても痛そうだ。
「思ったよりも早いな、スライムは全てにおいて遅い感じなのに。もしかして、ユニークなのか?」
スライムは体のいくつかの場所を先ほどの攻撃と同じように凹ませて攻撃をしていく。体の一部を伸ばしている分だけ核を守っている粘液の量が少なくなっている。
粘液を伸ばして攻撃をするのは自分の弱点を晒すぶん、諸刃の剣なのだろう。
「さすがに、粘液を伸ばすだけの攻撃ではないよね。あの人たちには手の内を曝け出してもらいたいな。」
男たちは攻撃を交わしていき攻撃の機会を伺っている。
すると、スライムは先ほどより多くの箇所で体を凹ませる。
「きたな、『ヘイト・ハンド』、俺だけを見やがれ。」
中央に位置する男がスキルを使うと、3人を狙った粘液の攻撃が中央の男だけを狙った攻撃に切り替わった。それを男が持っていた盾を構えて攻撃を受け切る。よく見ると、男1人だけを狙った粘液同士がぶつかったことで威力が削がれて男のもとに辿り着くときには弱々しいものになっていた。
「今だ!」
男の叫びと同時に左右に散っている男たちは各々の武器を振りかぶって核に向かって攻撃を仕掛ける。
「ん?スライムの核がおかしいな。」
男たちの攻撃が届く前にスライムの核が先ほどまではうっすらと影でしか見えなかったが、今ははっきりと見える。まるでミラーボールのような形をしている。そして、見えた瞬間には真っ黒に見えたのだが、今はスカーレットに色に変わった。
「粘液の色が変わっ、、、」
鉈を使用して攻撃を仕掛けた男は、核の色だけでなく粘液の色が少しだけ透明度が上がり核を男の方だけ無謀にさらしつつ核を移動させて粘液で前方を囲み、発火した。
男は一瞬にして炎に包まれてしまった。そして爆散。
「スライムが炎系のスキルを使うなんて聞いたことないぞ。やっぱりユニークじゃないか。」
「おいおい、一瞬でHPを削り取るなんて攻撃力がおかしいぞ。」
スライムの核はまたも色を変えていく。海のような深い青色に変化させた。
「ハンス、早く距離をとれ!お前がターゲットになってる。」
「は?あいつ冷気を纏いやがった。今度は氷系のスキルを使うのかよ。こんな奴に勝てるわけが、、、」
ハンスという男の武器に粘液を纏わせるとそれを伝って体に辿り着くと触れた部分から凍らせていく。ハンスは振り解こうとしているが、粘液と体が凍っているため固定され剥がせない。
そして、ハンスは爆散してしまう。
「ハンス!くそが、複数の属性をもっているスライムは存在しないし、対策なしで勝てるわけないわ。」
最後に残った男はスライムに背を向けて逃げようとすると、核の色を変えていく。今度は、透明な黄色に。
「なんだよ、今度は体をパチパチと光らせやがって。雷のスキルを使うっていうのか。なんだよクレイジーピエロだぜ。」
男は逃げる姿勢は崩さないが、心ではもうすでに負けを認めている。男を追うように雷は立て続けに起き接近すると、少しの間を開けて男を貫いて爆散させる。
「ええと、求めていたユニークモンスターだけど。これ無理じゃないかな。」
私としてはユニークとは戦いたいがどうすれば勝てるのかがまだ頭の中にない。
けど、この世界のプレイヤーが数多くいる中で出会うことができた人はほんの一握りの現場に出会わせて挑まずにこの場を去る選択肢はない。
「いろいろな属性を切り替えて使うモンスターと戦えるのはチャンスだよね。燃えてきた。」
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