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第8話 シャロリアと相合傘

「さ〜て。終わったし、帰ろっと」


 私はエリム

今日も授業が終わったのでいつも通り下校しようとした。


 最近は友達のジェシカと一緒に帰る機会が多かったが、今日はジェシカが別の友達と遊びに行くみたいなので1人だ。


「あれ?雨振ってる」


 窓の外を見ると雨が降っていた。

今日は、メイドのイリスから学校に行く前に傘を渡されていたのでそれを使えば雨に当たらずに帰れるので傘を差して帰ろうとした。


 そこで


「どうしましょう…」


 このフロンティア学園に通うお姫様、シャロリアが外を見ながら困っていた。


「どうしたの?」

「あぁ…実は傘を持って来ていなくて…どうしましょう…」


 どうやらシャロリアは傘を持ってきていないらしい。

傘を差さずに、この雨の中を歩くとずぶ濡れになってしまう。


「私。傘持って来てるよ。もし良かったら一緒に差して帰らない?」


 シャロリアにはずぶ濡れになってほしくなかったので、2人で傘を差して帰る案を出した。


「でも…」


「私。シャロリアには濡れてほしくないから。寧ろお願い」


「分かりました…では…お願いします」


 私とシャロリアは、同じ傘を2人で差しながら帰ることになった。


「なんだか…相合傘みたいですね…」


「あぁまぁ…そうだね?」


 誰かと一緒にこうして傘を差して歩く経験は今まで殆どなかったので、割と新鮮だ。


「ほらあそこにもにも…」


「ほんとだ」


 カップルらしき2人が相合傘をしている。

らしきと言うかかなり密着しているのでカップルだろう。


「私もいつかはああいった恋人と相合傘をしてみたいですね…」


「あーなんか分かるー。物語っぽくていいよね」


 少女漫画って例えを使うところだったが、この異世界の住民にその例えを使ったとしても、恐らくは理解してもらえない気がしたので物語と例えた。

というか、この世界に漫画自体はあるの?


「少女漫画みたいですよね」


 いや、あるんだ。


「そうだね」


「こうしてくっついてみて…」


 シャロリアが私に密着してくる。

側から見れば百合カップル同然だろう。


「シャ、シャロリア?」


「…嫌でしたか?」


 シャロリアが潤いの瞳でこちらの方を、見つめてくる。


「別に…?いいよ。くっついてても」


「ありがとうございます…では。家に着くまでもう少しこのままで…」


 この辺りは、学園の生徒はあまり通る道ではないので付き合ってるとか噂になることはないだろうし、仮にそういう噂になったとしてもシャロリア相手なら私はいいかな。

寧ろ、お姫様と付き合ってるなんて噂が広まったら、普通じゃ味わえないのでちょっと優越感に浸れる。


「あぅ…」


 シャロリアのお腹が鳴る。

なんか可愛い音だ。


「食べてく?外食」


「いいんですか…?では…」


 私とシャロリアは適当に食べれそうな店を歩いて探した。

で、すぐに見つかった。


「ここは…?」


「ハンバーガー屋さんだよ。美味しいと思う」


 この世界にもハンバーガーってあるんだ…と色々気にはなるけれど、気にせずハンバーガーセットを2つ注文した。


「お待たせしました。ハンバーガーセット2つです」


「ありがとうございます」


 店員さんからハンバーガーセットを2つ受け取り、机の上に置く。


「私…ハンバーガーって食べたことありません…」


「本当?美味しいよ。そのまま、ガブ!と被りついちゃって!」


「は…はい!ガブ!」


 シャロリアが思いっきり、ハンバーガーをかぶりついた。

お姫様がハンバーガーを食べる光景は何気に初めて見たので新鮮だし、ちょっとケチャップ口元についちゃってるのが、また可愛い。


「ガブ!ハム!」


 美味しそうにシャロリアはハンバーガーを食べていく。

あぁ…なんかハンバーガー食べるとこだけずっと見ていたい。


「エリムはいいのですか?」


 口元にケチャップがついたまま、シャロリアはずっと見ている私に聞いてくる。

しまった。見ているのに夢中になってて自分が食べるのを忘れていた。


「あぁうん…食べるよ。勿論ね?」


 食べながらシャロリアを方を向く。

味も美味しい。シャロリアも可愛い。


「ふぅ…ご馳走様でした。では…」


 シャロリアが立とうとした。


「ちょっと待って!」


 まだ口にケチャップがついていたので私はそれが気になり


「動かないでね?」


「んん…」


 ハンカチでシャロリアの口元を拭いてあげた。

指で少し触った程度ではあるが、シャロリアの唇、なんか触り心地いい。


「ありがとうございます…ついていたのですね?」


「うん…外出るし、取ってあげた方がいいかなって…」


 これでシャロリアの口元は綺麗になった。


「それでは、行きましょうか」


「そうだね。あ、雨止んでる」


 2人で外に出ると雨は止んでいた。

もう傘は必要ないだろうと思っていた。


 だけれど…


「あの…もう傘は差さないのでしょうか?」


「うん。もう雨止んでるからね?いいんじゃないかな?」


 シャロリアが寂しそうな顔をした。

まずい。泣いてしまうかもしれない。


「でも、まだ傘差してたいし差しながら帰ろっかな?シャロリアはどう?」


「私も…差しながら帰りたいです!」


「よし、じゃあ傘差して帰ろう!」


 シャロリアが私の一言で元気になった。

晴れだけど傘を差して帰る。

こんな日も、偶にはありかな?


 そうして、傘を差して2人で楽しく帰宅した。

シャロリアの家の前で挨拶をすると楽しそうに手を振って見送ってくれた。


 次の日、晴れだけど傘を差して2人の生徒が歩いていた…と学校で噂が広まったのはまた別の話

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